第14話 突入
新車を購入したとの事で、所長が見せびらかしにやってきた。
「俺も歳だがらよ 自動運転出来るクルマ買ったんだず」
「おぉぉ すごいなぁ 自動で何するいのや?」
「うん 高速道路だど 設定したスピードで 車線見ながらハンドルも自動なんだ」
「ほ~ 便利になったずね~」
「前さ車あっど ブレーキも掛かるし ハンドルさ手おいてるだけで OK!」
多少、運転に自信がなくなってきた所長だが、新車の性能に満足している様子である。
最近の自動車には、万が一の事態に自動でブレーキが掛かるシステムが装着されている車種も増えてきた。自動運転システム搭載車も一部ではあるがレベル3(条件付き運転自動化)のものが販売されている。
しかし、大半の車種はレベル1~2であり、まだまだ自動運転には程遠いのが実情であり、過信すると思わぬ事態に発展することがあるので注意が必要である。
数日後、浮かない顔で所長がやって来た。
「所長 なにしたのや? 元気ないんねが?」
「車が... 車が...」
「え~っ 事故ったんだが?」
「いや 事故んねんだげど 自動運転なて 嫌いだ!」
どうやら、自動運転システム動作中にトラブルが起きたようである。
要領を得ない説明が長々と続いたが、要約すると次のような話であった。
東北中央自動車道が新しく開通したので新車で走ってみることにした。
高速道路なので自動運転システムを動作させ、80Km/hに設定し快適に走っていたが、無料開放区間が終了し料金所が近づいてきた。
自動運転システムが動作しているので安心して料金所のゲートに入った。
80Km/hのまま料金所に突入したのでゲートが開かないまま突破してしまった。
ゲートのバーが左ドアミラーを破壊した。
「自動運転システムだから 料金所で減速すっど思ってだべした」
「はぁ!?自動運転システムで 料金所なの認識すねべした!」
「うん... ディーラーからもそう言わっだのよ...」
「修理代 高いっけべ?」
「ドアミラー交換と傷修理で40万円くらい...」
「あちゃー」
大事故にならなかっただけでも良かったじゃないか、と慰めてみたが、当分の間、所長の愚痴を聞く羽目になりそうである。
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