第11話 W杯

 サッカー・ワールドカップ・カタール大会が始まった。

カタールとは時差が6時間なので日本での中継は夜半から深夜にかけての放送になる。

試合は日本時間の21日未明から始まり、日本代表チームは23日強豪ドイツを撃破しドーハの悲劇を歓喜に変えた。

続くコスタリカには惜敗したものの、誰もが負けを覚悟したスペインから勝利しグループステージをトップで通過、ベスト16に入り決勝トーナメントに進んだ。

決勝トーナメントの初戦相手はクロアチアである。

試合開始は24時、TVの前で車座になりジョッキを片手に応援が始まった。


「クロアチアがらなの まげんなよ!」

「ちゃっちゃど へれろず!」

「なにしてんのや もっとぶつがてんがんなねべず すびたれだずね~」

「アァ~ だめだぁ みでらんね」

「ほれ~! なにしてんの! シュートだシュートだず!」

ビールを飲みながら、賑やかすぎるような声援が飛び交ううちに前田のシュートで先制点ゲット! 勝利したかのような歓声が家中に響いた。


 日本チームは何度もシュートを繰り返しているがなかなか入らない。

だが、やっとフリーになった一人がシュート!

「うわー! はえたー 同点だ~!!」

「んだんだ ほんきになっどはいるんだがら」

しかし、その後は一進一退の状態。

全員イライラしながらの観戦となった。

選手たちも同じ心境だったのだろう、ラフプレーが目立つようになってきた。

「ありゃ けんかしったどれは」

「んだ くらすけでやれ!」


 同点のままPK戦にもつれ込んだが、日本チームはベスト16の壁を超えることは出来なかった。

町内中に響きわたるような過激な応援も、ドーハまでは届かなかったのだろう...


2時間ほど仮眠し出社したが、頭の中は「ブラボー!」で一杯になり仕事に支障が出そうである。

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