第12話 想定外

 頭髪の薄い(またはハゲている)男性は絶倫である。

などと良く言われるが、本当にそうなのだろうか。

確かに、眩しいほどの頭部の持ち主は「強そう...」と感じるのだが、因果関係の医学的根拠には乏しいらしい。


 海外出張の際、街中を行き交う男たちの頭部を観察することが癖になっている。

ヨーロッパ各国の男達は若い風貌でも頭部が薄い割合が多く、ドイツやスペインなど半数に近い男どもはハゲている感じがする。

それに比べ、アジア各国の男達はハゲの割合が少ないように思う。

それを裏付けるようなデーターがあった。

【ハゲの多い国ランキング】

1位 チェコ

2位 スペイン

3位 ドイツ

4位 フランス

 いずれの国も男どもの40%以上はハゲか薄毛との事である。

なるほど、チェコ以外は行ったことのある国々で、納得できるランキングだと思う。

ちなみに逆のランキングもあった。

【ハゲの少ない国ランキング】

1位 中国

2位 韓国

3位 台湾

4位 マレーシア

これも、頷けるランキングである。

人種による違いなのか、アジア各国はハゲの少ない地域である。

日本人はと言うと、このデータでは8位でハゲ率は25%前後とのことである。

したがって、日本では薄毛やハゲはマイノリティなので、気にする男どもが多いのであろう。


 最近、TVで生まれたばかりのヒヨコが出てくる育毛剤のCMが流れているが、ヒヨコ=フサフサが、そのまま人の頭皮=フサフサに繋がるのだろうか。

イメージ戦略に基づいたCMなのだろうが、悩める男どもの心に入り込むには有効な手段なのだろう。


「常務 ほれあの発毛剤 本当に効果あるんだべがね?」

バーコード状態に近い総務部長がニヤニヤして話しかけてきた。

「どうだべね~ 多少は きぐんねが」

「つかて みっかなぁ」

「いまさら 頭 気にする 歳じゃないべした」

「いやいや 有るものが無いのは 気になるんだずぅ」

「ひよこのCMのあれだべ? 黄色い毛が生えてくっかもなぁ アハハ」

気にしている本人を前にして軽口を言ってしまった。これはマズイ。

「フランスじゃ ツルツルハゲの方が セクシーだからモテるんだじぇ」

「本当 だがや?」

フォローするつもりで、ハゲはセクシーなどと言ってしまったが、翌日、総務部長が

少ない頭髪を剃り上げツルツルにしてくるとは想定外であった。

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