第9話 胸の痛い話
年末が近づいてくると、本格的な冬将軍到来である。
朝晩には気温もマイナス表示となり、凍結道路に神経を使う通勤が続き、やや疲れ気味になってくる。
こんな日はゆっくり風呂にでも入り、気分を入れ替えようと早めに帰宅することにした。
「あら 何したの? こだえはやぐ帰ってきて 具合でもわれの?」」
めったに早く帰らないので、こんな時間に帰れば体調を崩したのではと勘違いされるのがオチである。
「たまに早ぐかえて ゆっくり風呂さでも 入っかなとおもてよ」
「んだがした んでも風呂沸いでねば」
予想通りではあったが、ややガッカリして風呂のガスに火を付けた。
やっと風呂も沸き、冷えた体を湯船に沈め気分も上々となってきた。
(夕食前に風呂にはいるのは久しぶりだな....)
などと考えながら、ふとシャワーを見ると、栓の閉まりが悪いのだろうかボタボタお湯が出ている。
湯船から手を伸ばし閉めようとしたが届かない。
湯船の縁に体をあずけ、上半身を乗り出し栓を閉めようとした瞬間...天地が逆転し胸に激痛が走った。
「イデデデ....」と言おうとしたが息が出来ない。
「オーーイ!」と言っても声にならない。
痛みをこらえて浴室のドアを叩いた。
「なにやー? 石鹸でも無いのが?」
何も知らずに妻がドアを開けた。
「ありゃ なにしたの? ほだなどごで寝てっど 風邪ひぐべず」
浴室で転んで痛がっている夫を見て、寝ているなんて言うか!
「ウー... 転んで胸いだぐしたみだいだ...」
騒ぎを聞いて娘もやってきた。
「おとーさん ほだなかっこして何しったのや?」
浴室の床に仰向けになり胸を押さえる父を見て「何しったのや?」は無いだろう。
そのうえ股間は丸出し状態、痛さのため縮み上がっている。
妻にならともかく、娘にまで粗チン見られたのではマズイ...しかし、もう遅い....
なんとか胸の痛みをこらえ、バスタオルを巻き付け浴室を出たのだが、娘に粗チンを見せてしまったことが気にかかる。
パジャマに着替え、落ち着いたところで娘に聞いてみた。
「おまえ お父さんの....見たべ...?」
「へへへへ 白髪生えっだっけ ハハハハ」
一瞬の出来事なのに、観察眼の鋭い娘であった。
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