第99話 召喚儀式
ユーノとミレイユは優秀で、その日のうちに結果を出して王宮へと戻ってきた。
一方、私の方はというと、その間に城の図書館で神の召喚に関しての調査を行っていた。
神の召喚などたやすく行うものでもないことから、王宮の図書館であっても数冊しか見つからなかったが、召喚に関しての生贄の選定、儀式の日数、儀式の進捗状況の確認方法、召喚した神を制御する方法、召喚した神を送り返す方法など、状況ごとの対応方法を把握することができた。
その後、メイド経由でアイリスとのお茶会を打診した。
これには、アイリスも快くOKをしてくれ、その日のうちにお茶会という名の報告会を行うことができた。
報告会はお茶会にしなくても良かったのだが、使節としての活動をアピールすることも兼ねて、お茶会の形式をとることにした。
「アイリス様にはご機嫌麗しゅう」
「ご苦労様です。リーシャ様」
形ばかりのあいさつをした私たちは、さっそくお茶会という名の報告会を始める。
報告とはいってもほとんど進展はないのだが、先ほど図書館で調べたことの中の一つ、召喚された神を送り返す方法について、先に共有しておいた方が良いと判断したためである。
その内容とは、送り返す際に聖女が協力することによって、その成功率が上がるということである。
最悪のパターンとして召喚が行われてしまった場合を考えると、アイリスの協力を得られるようにしておくに越したことはない。
何より、彼女は聖女であり、この国の女王であるとはいえ、形ばかりで実際には王宮に閉じ込められているようなものだ。
しかし、召喚が行われるのは王宮ではなく、教会の地下の可能性が高いことからも、アイリスが王宮からすぐに抜け出せるように準備をしておく必要があった。
「今日の二人の情報次第になるけど、決行はこの国から出る前日の晩にするわ。私たちは神の召喚を阻止したら、そのまま魔王国に向かうわ」
「わかりました。それで、当日は私も教会へと向かえばよろしいのですよね?」
「そうね、一応、手引きするためにミレイユを付けておくから、彼女についてきてくれれば大丈夫よ」
アイリスは王宮を脱出することに不安を感じているようだったが、ミレイユに案内させると伝えたことで、安堵したのか胸を撫で下ろしていた。
「アイリスの方も、当日までの調整をお願いするわね。前日の晩には王宮から消えることになるけど、うまく事情を説明しておいてくれると助かるわ」
「わかりました。当日は魔王国の方から帰国を早めるように言われたと、伝えておきます」
「助かるわ。使節は国と国との決めごとだからね。一応、依頼は神聖王国だけど、所属は魔王国になるから、魔王国から連絡があったとしておけば問題はないはずよ」
「わかりました」
そうして、私とアイリスはお茶会という名の報告会を終わらせたのだが、この時、アイリスが何かを企んでいることに、私は気づいていなかった。
そのことが、あとになってとんでもない結果となることなど、この時の私は想像すらできていなかった。
このお茶会の後、二人の話により、儀式が行われているのが、アイリスの話した通り教会の地下にある秘密の部屋であることを確信したのであった。。
決行当日、私は一人教会の地下へと続く秘密の通路の近くに隠れていた。
ユーノは教会の外の監視をしており、教会に入る者がいた場合は、連絡をする手はずになっていた。
また、ミレイユは予定通り、アイリスを王宮から連れ出し、教会へと連れてきているところである。
今のところ、王都内の警備の状況に変化はないようなので、私たちの動きがばれている、ということは無さそうであった。
だが、話は通してあるとはいえ、使節である私たちだけでなく聖女までが消えたとなれば、すぐに厳戒態勢が敷かれるだろう。
あまりゆっくり潜入している余裕はなかった。
そんなことを考えていると、外を見張っているユーノから連絡が入った。
どうやら、黒いローブを着た男が教会に入った、とのことであった。
しばらくして、その男は秘密の部屋の扉を開けると、中に入ろうとした。
私はとっさに魔法で男と反対側に巨大な石を作った。
その石は重力に従い大きな音を立てて地面に落ちる、そのタイミングで石を魔法で消し去る。
男は音に驚いて振り返るも、既に石は消えており何もない。
音がそれなりの大きさだったせいもあり、秘密の扉を開けたまま、私の隠れている場所とは反対側に歩き出していた。
音のした方に注意が向いていたため、背後に迫る私に気づくことなく、私の持ったナイフで喉笛を掻き切られ血を吹き出しながら地面に倒れ伏した。
私は男のローブを剥ぎ取ると、羽織って秘密の通路を進んでいった。
地下の通路は一本道になっており、その先にはしっかりとした木製の扉があった。
私は扉を開け、部屋の中に入る。
中は既に儀式の準備が整っており、中央に大きな魔法陣が描かれていて、その周りには蠟燭が何本も立てられていた。
そして中央には見知った顔――ユーティア殿下がゆらゆらと立っており、魔法陣を取り囲むようにローブを着た男たちが立っていた。
「遅い、いつまで待たせるつもりだ! 今日で儀式も終わりだ。さっさと始めるぞ!」
私は間に合ったことに安堵しつつ、呪文を唱えた。
「――
部屋の中にいる全員が重力という名の楔によって磔にされた。
私とユーティア殿下を除いて。
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