第54話 星に願いを
リーシャは気づいたら真っ暗な空間の中にいた。そして、目の前には、あの女神が立っていた。
「呼ばれたようなので、こちらに来ていただきました。御加減はいかがですか?」
「さ・い・あ・くです! 一人で四天王と延々戦わされてるの知ってますよね? これが大いなる運命っていうやつですか?!」
「ふふん。この程度のことが大いなる運命なわけないじゃないですか! 所詮、ちょっと強いトカゲ一匹ですよ?」
「四天王をトカゲ呼ばわりとか……。それはそうと、前に契約した力なんだけど、あれ以来、全く使えなくなったのよ?! どういうこと?」
「え……? どういうこと、と言われましても。一回しか使えない力だからに決まっているじゃないですか!」
「え、なにそれ……。詐欺?! クーリングオフを要求する!」
「いえいえ、契約内容は大いなる運命を受け入れる代わりに、あの状況を打破する力を与えるということですよ。実際にリーシャさんは、その力であの状況を打破した。契約内容に問題はありません。それに、クーリングオフはそもそも契約上できませんが、あの力を使って状況を打破してしまった時点で、私の契約履行は完了しておりますので、クーリングオフはできませんよ」
女神は当然のように契約内容の説明をしたが、リーシャとしても、契約内容の認識に相違が無かったため、何も言えなくなってしまった。
「ですが! 契約にはアフターフォローも入ってるって言いましたよね。今回はアフターフォローとして、この状況を打破する力を与えましょう!」
「一回だけですよね?」
「当然です。また必要になりましたら、お呼びいただければ全力でサポートいたします。まあ、死にかけるくらいには自分を追い詰めないと呼べませんし、すぐにつながらないかもしれませんけどね。まあ、つながるだけマシだと思ってください」
「どこのサポート窓口だよ! まあ、いいわ。サポートお願いするわ」
「はい、毎度ありがとうございます。それでは行きますね。あ、ちなみにですが、魔法の威力は私の力が反映されていますので、通常よりも威力が高くなっております。自力で使えるようになっても、ここまでの威力は出ないと思いますが、そこは諦めてくださいね」
「どうでもいい情報ありがとう。自分で使えるようになっても、サポートが不要になることはない、って言いたいのね」
「もちろんです。大事な
女神は以前と同じように手のひらの上に星を出すとリーシャに投げつけた。そして、その衝撃によって視界が暗転する。
再び、リーシャが意識を取り戻すと、目の前にドラグニルがいた。そして、おもむろにリーシャは魔法を唱え始める。
「――
すると、上空に巨大な隕石とその周囲を取り囲む小さい多数の隕石が現れ、ドラグニルに向かって落下し始めた。
「何だこれは?! クソッ! ――
そう言って、ドラグニルは6本の頭を全て隕石へと向けてブレスを吐いた。吐かれた6本のブレスはオーロラのように混ざり合いながら万色をきらめかせ隕石へと向かう。隕石に命中したブレスはまばゆい光を放って爆発した。しかし、その隕石は彼のブレスなどなかったかのように彼に向かって落ち続けていた。
「クソッ! クソがぁぁぁ!」
そう叫んだ彼の頭に無数の小隕石が当たる。小隕石は小さく爆発しながら、彼の頭を道連れに塵となって消える。そして、彼の6本の頭は瞬く間に潰されてしまった。もはや、後は死を待つのみとなった彼に、駄目押しとばかりに巨大な隕石が彼の身体を押しつぶした。
その後は、彼がどうなったかは分からないが、元の場所に戻れたので、おそらく倒せたのだろう。リーシャが戻ってきたことに気付いたカサンドラ、ミラベル、マリアが駆け寄ってきた。
「いきなり、消えたから心配したぞ! もしかして、ドラグニルの力か?!」
「ふん、アンタが簡単に死ぬとは思っていなかったけどね。まあ――おかえり……」
「お嬢様。心配しておりました。よくぞご無事で!」
ドラグニルは強かったが、それ以上に見た目が竜種だったためであろう。彼女たちが過剰に心配させてしまったようである。そんな感動に浸っていたリーシャたちに水を差す者がいた。
「おい、お前ら! この勇者である俺を足蹴にしておいて――謝罪と賠償を要求する!」
「出ました、偽勇者お得意のシャザイトバイショウ!」
「おい! 馬鹿にしてるのか?! ふざけるな!」
「いえいえ、むしろ謝罪と賠償が必要なのは、あなた方ではございませんか?」
「何を馬鹿なことを……」
そう言ったユーティア殿下の背後から、多数のドワーフたちが襲い掛かってきた。
「おいこら! やめろ! 俺は勇者だぞ! こんなことしてタダで済むと思っているのか?!」
「俺たちの街をこんなにしておいて、勇者とか関係ないわ! きっちり落とし前を着けさせてもらうから覚悟しろ!」
「ふざけるな! 俺様は勇者だぞ! こんなことして許され――ぐはっ!」
「きっちり、やらかした分は償ってもらうからな。おい、連れていけ!」
「なんだと、そこの奴らも一緒だ! おい、お前なんとか……」
そんなことをリーシャに叫びながら、ユーティア殿下は多数のドワーフたちに連れていかれてしまった。アイリスも同じように連れていかれたが、大人しかったのでだいぶ丁寧に対応されていたようである。
「ご迷惑をおかけいたしました。お客様。あなた様が関係ないことは、街の人たちに確認済みですので、ご安心ください。それでは、まだ夜も遅い時間でございますので、宿の方でお休みください。御迷惑をおかけしましたお詫びに、宿泊代を1泊分補填させていただきます」
そう言って、残っていたドワーフたちも去っていった。結局、ドラグニルがこちらに来てくれたおかげで、予定よりも早く用事が済んでしまったため、リーシャたちは1週間ほど、ゆっくりとミーケの街で過ごすのだった。
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