第47話 四天王

「私の属性に、もっと凄い力が?!」

「そうじゃ、星とはすなわち、この世界そのもの。その力を余すことなく使えば、凄い程度では済まないようなことも可能なのじゃ」

「それで、詳しく言うと、どんな力が?」

「知らん!」

「知らんのかよ! 期待させるだけさせておいて、それはないわー」

「まあ、落ち着け。わらわは知らんが、この国の聖女の一人にいとこがおるのじゃ。そやつも星属性で魔法が得意じゃからの。色々と話も聞けるじゃろ」

「それで、その人はどこに?」

「まあ待て。その前にわらわの頼みを聞いて欲しいのじゃ。直属の配下に四天王がいるのは知っておろう? どうもそやつらが結託して、わらわを追い落とそうとしているようなのじゃ。その手始めとして、魔王討伐に来た勇者を殺すつもりらしい。もし、そのようなことが起きれば、あの国はまた暴れ出すじゃろう。上の連中だけが暴れ出すのであれば鎮圧すれば済む話なのじゃが、そいつらは決して表には出ず、国民を前面に出して暴れるから問題なのじゃ。鎮圧しても、大本が無事じゃから解決にならんのじゃ」

「まあ、ゲスいゲスい。さすがは王国だわ」

「そうじゃろ。だからこそ、奴らには無事に魔王討伐を達成したことにして欲しいのじゃ」

「それで四天王を討伐軍が全滅する前に四天王を倒せと言うことですね!」

「そうじゃ。頼めるかの?」

「わかりました。あそこの貴族連中がどうなろうと知ったことではありませんが、国民が犠牲となる可能性があるのであれば、知らないふりはできません。のじゃろ――魔王様のお願いということであれば、喜んでお受けいたします」

「うむ、助かる。ちなみに、わらわのことを『のじゃロリ』とかいうのは禁止じゃ。そもそもわらわは1200歳じゃぞ!」

「大丈夫です。のじゃロリ魔王様!」

「なんか腑に落ちんが……。とにかく頼んだぞ。無事に討伐軍の前に四天王を倒してきた暁には、かの聖女の居場所を教えてしんぜよう」


こうして波乱に満ちた晩餐が終わり、リーシャたちはヴェルの勧めもあって魔王城に一泊した。そこの待遇は昨晩に宿泊した高級ホテルよりも充実しており、ゆったりとしたひと時を過ごしたのだった。


そして、翌朝。リーシャたちは四天王討伐のために魔王城を後にした。何故か、案内役としてカサンドラが付いてきていたのだが、ヴェルいわく「それだけ重要な任務なのじゃ」とのことなので、ありがたく案内してもらうことにした。


「それでは、案内の方はお任せしてよろしいですか?」

「もちろんですっ、魔王様に命令された以上、全力で対応いたします! むふー!」


出発前にヨーゼフが「カサンドラ様は魔王様が絡まなければ精鋭騎士なんですが、魔王様が絡んだとたん残念騎士になるんですよね。でも、実力は確かですので、安心してください」と言っていた通りであった。まあ、鼻息が多少荒いとはいえ、やる気の現れだと見れば、あながち悪くもないとリーシャは好意的にとらえたので、道中は全部任せることにした。


「それじゃあ、最初はどこにいきます?」

「まずは南側を支配されるガイアルド様ですね。彼は巨人族で最強の力を持っております」

「巨人かぁ、動きが遅くて楽そうだね」

「リーシャ様、侮ってはいけません。彼は神速のガイアルドと呼ばれており、巨体に似合わず音速で動くと言われております」

「なにそれ? チートじゃん」

「それ、お嬢様が言いますかね?」


マリアが茶々を入れているが、正直巨人の腕力で動きまで素早いとなるとリーシャでも苦戦を強いられる可能性が高かった。とはいえ、戦う前から気持ちで負けるわけにもいかないと、意識して気合を入れた。彼女の気合が十分であるのを見て、カサンドラも少し安心したように見えた。


「ちなみに、ガイアルドは国境の砦を守っておりますので、王国との国境へと向かいます」

「あれ? 私たちが来た時には、そんな人見てなかったけど……」

「それは、おそらく王国からの連絡が来る前だったからでしょう。私たちも王国からの連絡を受けて、リーシャ様の元を訪ねたのですから」

「ということは、王国を出たらいきなり四天王との戦いになるの? なにそれ、開始直後に全滅させられるイベントでもやってるわけ?」

「本来なら、軽く手合わせするだけですので、適当なところで降参するはずなのですが。王国の勇者ごときに四天王が倒せるわけがありませんからね」

「事実だけど――言い方!」

「そういうわけなんで、本来なら危険はないのですが、今回は討伐軍を全滅させてしまうかもしれません」

「ま、要するに討伐軍モブどもが全滅する前に、そいつを倒せばいいわけね」

「左様でございます」


そんな話をしながら、リーシャたちが砦にたどり着くと、既に戦闘が開始されていて、砦の付近は死屍累々といった有様であった。一応生きてはいるようだが、戦っている数名以外は戦闘不能になっているようだった。


「あちゃー、もう手遅れみたいね。それじゃあ、帰りましょうか」 

「いやいや、まだ少し生き残っていますよ」

「うーん、でも、顔が割れてるからなぁ。このまま出るとまずくない?」

「御心配には及びません。こういうこともあろうかと、変装セットを用意しておきました」


そういって、カサンドラが取り出したのは、どこぞの関西芸人が付けていそうなキラキラ衣装とキラキラマスクであった。


「これをつけて戦えと? 冗談でしょう?!」

「いえ、これをつければ顔バレはしないかと思います。ちなみに、これは魔王様に着ていただこうと思っていた衣装を参考に作っております」

「へぇ、じゃあ、魔王様はこんな服着たんだ」

「いえ、着ていただこうと差し出したところ、一瞬で灰にされてしまいました。そのあと、私もマンツーマンで折檻を――はぁはぁ」

「もはや、残念騎士というか、どこかで見たことあるような変態騎士じゃん! それに、顔だけ隠せればいいよ。他にマスクみたいなのはないの?」

「あ、マスクは他にも色々と……」


そう言って、カサンドラはマスク(?)を取り出して、リーシャの前に並べていったのだった。


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