白玉の昊 序章 ①
珠邑ミト
序章
序文
序文 白い玉様
じゃり、じゃり、と
長く急な石段を、娘は独り
気が、滅入る。
夜明け前は、深夜よりもいっそう闇が深く暗くなる。
あまりに暗いから、石段の終わる先にあるはずの
溜息が出た。
海と山に
ふいに、ざん、と樹々が騒いだ。枝葉が
祠には、
白い玉様は村の守り神だ。村の後背を護る山は中央付近が一番高くなっていて、その中腹にある祠で白い玉様は祀られている。そこで村の五穀豊穣と、漁の安全を見守って下さっているのだ。
白い玉様に村をお守りいただく代わりに、村人は毎日お供え物を持って白い玉様にお参りをする。これは責務だ。何があろうと一日も欠かしてはならない。村には百
それは、酷く気の滅入る、恐ろしい責務だった。
恐ろしいから、参拝する者の顔はいつも
――参拝に失敗すれば、白い玉様に命と体を
迷信ではない。三十年前にも娘が一人行き方知れずとなっている。その時の事を知る者も減ったが、そも、玉様に
石段を上り切り、祠の前に立つ。息を吸う。
三拝。それから三拍手。すると、ちりん――と鈴が鳴る。鈴音は開扉を赦された証だ。観音開きの格子戸に手をかける。その時に
再び、深く息を吸い込んだ。
「白い玉様、白い玉様、白い玉様。本日のお参りを申し上げます」
村は、そうして密やかな犠牲を押し殺して、穏やかな日々に守られてきたのだ。
五百年もの長い間。
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