第19話 朝ちゅん(ソロプレイ)
~ワンパン姫side~
寝る前に今日のデートを思い出して、ため息をつく。
有効打を何発か与えられたのに、やはり古林くんは倒せなかった。
パンツまで見せたのに、これじゃ見られ損だ。
「さすがにパンチラ作戦はやり過ぎたかな? 絶対はしたない女の子だと思われたよね」
今更ながらそんなことを呟き、ひとり凹む。
勝ちたいという気持ちであんなことをしてしまったけど、実を言えば古林くんの反応を見たかったという気持ちも少しだけあった。
真面目で、照れ屋で、付き合って一か月以上経ってるのに手も握ってこない草食系男子の古林くんが私のパンツを見てどんな反応を示すのか、興味があったからだ。
(いやいやいや……なに考えてるのよ、私。そんなの痴女じゃない)
私って思った以上にえっちな子なのかもしれない。
そんな自己嫌悪に陥る。
『そんなことのために下着を見せるなんて……い、一応彼氏である僕としては微妙だから』
不安げに心配する古林くんの顔を思い出してかぁーっと体が熱くなる。
「一応彼氏だって自覚はあるんだ、古林くん」
ひくんっと身体の奥の方で何かが震えて熱くなるのを感じた。
その後、寝ようとしてもなかなか寝付けず、逆にどんどん目が冴えていってしまった。
寝る前に古林くんのことなんて考えるんじゃなかった。
「あー、もうっ……古林くんのバカ」
男子なら、こんな寝れない夜きっと……
ていうか古林くん、まさか今ごろ私のパンツを思い出して……
まさかね……
いや、絶対してる……
古林くんだって男の子なんだから……
布団を頭から被り、ギュッと唇を噛む。
暗闇の中で耳を澄まし、親が寝静まっているのかを確認する。
でも心臓の音がうるさすぎて、全然リビングの音が聞こえなかった。
「古林くん……」
するするっと指を滑らせ、内ももを爪で甘く掻く。
ゾクッと肌が粟立って、熱いものが内側から込み上げる。
目を瞑り、古林くんの照れ笑いを思い出す。
「古林くん、かわいい……」
湿った熱い吐息を漏らし、指を滑らせて内ももを弄ぶ。
スズメが窓の外でチュンチュンと鳴く声で目が覚めた。
「んっ……あっ……えっ、やばっ!」
最近はいつも六時に目覚めていたのに七時十分前に目覚めてしまった。
「あー、もう!」
夜更かしなんかするからだ。
古林くんに文句を言ってやらないと!
いや、絶対にそんなこと言えないか。
慌ててベッドから飛び起きて、着替える。念のため、下着も替えておく。
慌てて髪をブラッシングし、玄関に向かう。
「あれ? 奈月、朝ごはんは?」
お父さんが驚いて玄関へとやってくる。
「ごめん。今日はパス! 寝坊しちゃった」
「一年生の頃は七時ギリギリまで寝てたでしょ。ここ一か月くらい早いよね」
「そ、そりゃまあ、一応女の子だし、身支度には時間かかるから。いってきます!」
「はい。気をつけて」
別に古林くんのためじゃない。
ただなんとなく朝の身支度に時間をかけているだけ。
聞かれてもいないのに反論をしながら駅までの道を急ぐ。
なんとかいつもの電車に間に合い、いつも通り学校に到着する。
古林くんと付き合う前は色んな男子に決闘を申し込まれたり大変だったが、今はそれがないから楽だ。
見えないけれど古林くんに守られている。
そんなことを感じて気分が上がった。
教室につくと、自然と視線は古林くんを探してしまう。
彼はいつも通り教室のはしで親友の伊坂くんと雑談をしていた。
そういえば以前はよく寝癖がついていたけど、最近はきちんと整っている。
私と同じように朝の身支度に時間をかけるようになったのだろうか?
「おっはよ、奈月」
「ひゃあっ!?」
いきなり背後から抱きつかれ、変な声をあげてしまう。
「イ、イレナ。朝から驚かせないで」
「奈月こそ朝から彼氏さんに見惚れちゃって。ワンパン姫も恋をしたら普通の女の子なんだねー」
「そ、そんなんじゃないから」
別に古林くんと付き合ってウキウキしているわけじゃない。
それを説明したくてイレナを連れて教室を出る。
「昨日古林くんと戦った? まだそんなことしてたの?」
「当たり前でしょ。勝てば自由の身なんだから」
「好きなくせに。で、勝ったの?」
イレナが真剣な顔で聞いてくる。
「いや、惜しかったんだけど負けちゃった」
「マジで? やっぱり強いんだね、古林くん」
ホッとした顔をするイレナを見て、負けん気の強さがうずいてしまう。
「でも本当に惜しかったんだよ。キックしてパンツを見せたらガン見してきてさ。それで思い切り蹴っ飛ばせたし!」
「は? 奈月、わざとパンツ見せたわけ!?」
「そ、そりゃまあ。勝つために」
「うっそ。信じらんない! 変態じゃん!」
ドン引きされて恥ずかしくなる。
「えっちな古林くんの弱点をつく作戦だし!」
「だとしてもやりすぎでしょ」
「い、いいの! だいたい古林くんは彼氏なんだし、パンツ見せるくらい普通だし!」
自分でもおかしなこと言ってる自覚はあったけど、言葉は止まらなかった。
「うん。分かった。奈月、普通に古林くんのことが好きなんだね」
「へ? は? なんでそうなるの?」
「今の話、ただのノロケでしょ。まあ世間一般のノロケとはちょっと違うけど」
「絶対違うし!」
「あの奈月がノロケるとはねぇ。恋は恐ろしい」
「だから違うって!」
全力で否定しつつも、少し不安だった。
なにせ私は恋をしたことがない。
いま胸にあるこのモヤモヤっとしてドキドキしてる感覚が恋なのか恋じゃないのか判断がつかないからだ。
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一人で朝ちゅんしてしまう風合瀬さんでした。
さすが肉食系妄想女子です。
どんどん古林くんの魅力にはまっていく姿は微笑ましくて可愛いですね!
ちなみに特筆すべきところはないので割愛してますが、古林くんは十時過ぎには熟睡してました。
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