第48話 壊れゆく絆(3)〜進んでいく世界〜

由奈が悪さをして警察に自首した。

それで全てが許される訳ではないが。

俺達の住所を悪い奴らに教えてしまったのだ。


その影響もあり俺達の間には無言の空気が流れている。

今俺達は緑陽プロダクションの事務所に居るのだが。

由奈以外の女の子達が集まった。


「由奈くんがやった事はかなり罪深い。.....残念だが解雇処分にしようと思う」


「社長.....」


「今回、本人のやった事はかなり重い。そもそも第三者にアイドルの住所を明らかにしてしまうのは犯罪行為だ。今回は見過ごせない」


「ですね.....」


マネージャーが俯いて反応する。

自分が頑張って育てたアイドルがこのザマだ。

それは落ち込むレベルでは無いだろう。

考えながら俺はマネージャーを見る。

すると真帆が、由奈と話がしたい、と言い出した。


「由奈と話をして.....反省の意向を聞きたい.....!」


「私は反対だな」


真帆が切り出した言葉にカノンさんが厳しい感じで真帆やみんなに告げた。

カノンさんは顔を上げる。

そして周りを見た。

私達はアイドルで仲良し。でもそれでも個人。住所をバラすのは完全に論外。今回は絶対に許されない、と真帆を見る。

常軌を逸している、と。


「真帆。君は甘い。私達が受けた被害に対して君はあくまで由奈を気にかけている様だがそんなに世の中は甘くは出来てない。今回、直ぐに話を聞いて仲良くなるつもりかも知れないけどダメだ。それに私としては真帆。君が心配だ。犯罪に更に巻き込まれる可能性がある」


「カノンさん.....」


「話は聞きたいとは思うがね。だがまだ甘いと思う。まだまだ時間をかけてゆっくり話を聞かないと」


カノンさんは言いながら俺を見てから周りを見ていると。

緑陽大輔も、そうだね、と言った。

まだ今はその段階では無い、とも、だ。

だが彼女の感情が知りたいのは同意だ、と。

すると渡とアイナが切り出した。


「私は入ったばかりで何も分からないですけど.....由奈さん。彼女もきっと何かしら追い詰められていたと思います」


「私もそう思うかな。きっと何かしらあったんだよ。.....私.....とてもバカだから分からないけど!」


「いつか話を聞きたいね」


「私もそう思います!」


それから見つめ合いながら。

眉を顰めてから涙を浮かべ合う。

俺はその姿を見ながら眉をひそめる。


困ったもんだ.....悩みが出てしまうなこれ。

そう考えながら見ていると。

緑陽大輔が切り出した。


「君達には酷い事をしている。.....あくまで彼女は反省してもらわなければなるまい。.....それはそうと犯人は何処に居るのだろうか.....」


「.....それが明らかになったら良いと思うんですけど.....」


「.....困ったものだな。.....このままにしておく訳にはいくまい」


「.....警察から何の連絡も無いので」


マネージャーと緑陽大輔はそう会話する。

俺はその姿を見ながら居ると。

真帆が、社長。.....きっと.....犯人は短な人です、と切り出した。

俺はその言葉に驚く。

緑陽大輔も!と浮かべた。


「.....短な存在で.....しかも私達を詳しく知っています」


「.....きっとそう!」


「.....そうだね」


すると.....緑陽大輔の側の電話機に電話が。

緑陽大輔は直ぐに出る。

そして驚きの顔を浮かべた。

反応をしながら。


「.....何だろう」


「.....分からんな」


そして電話が終わってから緑陽大輔が立ち上がる。

今日は解散だ、と言いながら。

それからマネージャーと一緒に何かを話し始めた。

君達は帰りたまえ、と言いながら。


「.....社長.....何かあったんですか?」


「.....今は話せない。.....すまないが席を外してくれたまえ」


「.....はい.....」


俺達は席を外さざるを得なかった。

しかし.....アイナが、納得がいかない、と事務所のドアに耳を澄ませる。

するとドアが薄いもんで。

中の声が聞こえた。


『それで.....犯人は分かったんですか?」


『警察からの連絡だね。.....被疑者は渡の知り合いだと思う」


『.....渡さんの.....』


『.....おそらく元アイドルだ。逆恨みだろう』


そんな会話が聞こえた。

予想通りと言える展開に俺達は顔を見合わせる。

すると渡が涙を浮かべているのに気が付いた。

最悪を覚悟していた様だが。

涙が溢れる様だ。


「.....こんな事は言いたく無いです。でもその.....仲間だから信じたかったです」


「.....ああ。そうだな」


「.....被疑者が捕まるまで分からないですけど。.....でもこんな真似をした分は返してもらいたいです」


「.....」


渡は言いながら涙を拭う。

それから階段を駆け降りて去って行った。

俺達はその姿を見ながら立ち上がる。

そして階段を降りて行った。


「.....何でこんな真似を.....」


「.....」


真帆は涙を浮かべる。

心理に漬け込んだ.....絶望を俺達に浴びせたかったという事か?

俺は顎に手を添えながら考える。

何がしたいのだアイツは。

あの女は.....。


「.....真帆。何があってもお前だけは守るから。お前らも」


「.....そうだね。私は.....彼を守る」


「.....私は私自身を」


「私も守ります」


「.....」


まだ分からない。

だが.....敵は近付いて来ている。

そんな感じがする。


俺は考えながら歩いていると路地裏から、きゃっ、と声がして直ぐに消えた。

その声は.....渡の声だ。

俺達は?を浮かべて路地裏を見ると。

そこに.....ハンカチが落ちていた。

直後に車が走り去る音が.....。


「.....まさか.....」


「いや。流石にそれは嘘だよ.....ね?」


真帆は青ざめる。

連れ去られた訳じゃあるまいよな?

俺達は見合わせてから。

直ぐにハンカチを拾って顎に手を添える。


「.....気になるな.....」


「.....落としていっただけかもよ?翼っち」


「.....」


だと良いが。

俺は思いながら.....考える。

嫌な予感がするんだが?

このモヤモヤは.....。

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