第47話 壊れゆく絆(2)〜内通者〜

真帆を、由奈を。

そしてアイナをカノンさんを。

更には渡、ルナを。


誰が狙っているのか知らないが.....こんな真似は止めてほしい。

そんな事を思いながら俺はお風呂を借りては入浴していた.....のだが。

あまりゆっくり出来ない。

何故なら.....真帆が入っているんだよな?この風呂。

冗談じゃない.....その裸体が.....目に映る。


「ぐおおおお!!!!!」


消えろ煩悩!、と思いながら俺は風呂場で悶える。

申し訳なさ過ぎる!

クソッタレが!俺と言う人間は!

と思いながら俺は真帆の事を今は考えない様にしながら頭を洗わせてもらった。



「美味しい」


「.....本当に?良かった.....」


「真帆が一生懸命に作ったの。貴方の為って。何だか夫婦ね。貴方達」


「そうだよ。お母さん。何れにせよ結ばれる運命だから」


恥ずかしいセリフを吐くんじゃない。

俺は真っ赤になりながら真帆を苦笑いで見る。

真帆は笑顔で赤くなりながら頬を掻く。

今日のご飯。

お茶漬け、鰆の西京焼き、お漬物など.....頑張ったな真帆。


「鰆じゃないけどね。.....白身魚で代用。.....ゴメンね」


「謝る意味が分からない。俺がこの家でお世話になっているのに」


「そんな事はないわ。.....翼くん。本当に有難う。今日来てくれて」


「.....最低ですね。こんな事をしている人は」


そうだね、と複雑な顔を浮かべる真帆。

何だか気分が落ち込む感じだ。

こんなヘドロの様な状況は早く脱したい所だが。

だけど脱せないだろうなそんな簡単には。

考えながら俺は味噌汁を見る。

湯気の上がる暖かい味噌汁を.....。


「困ったのもある。でも.....今日は良かった。だって翼くんがこの家に泊まるんだもん。楽しみで仕方がないよ」


「.....真帆.....」


「.....楽しみだね。翼くん。いっぱい夜更かししたい」


「早く寝るのよ。貴方達。やり過ぎは良くないからね」


「うん。お母さん。冗談.....かな?」


真帆はテヘッとウインクする。

俺はその姿を見ながら少しだけ赤面した。

それから笑い合った俺達。

そしてそんなこんなで特に何も無く今に至っている訳だが.....。

俺は赤くなって心臓がバクバクしていた。



「翼くん。起きてる?」


「.....起きてる。.....どうしたんだ?」


「.....私ね。今日翼くんが来てくれてとても嬉しかった。.....お母さんも久々なの。あんなに元気なの」


夜中の事だ。

23時ぐらいだろうか。

そんな言葉を切り出してきた真帆。

わなわな震えている。

俺は背中越しにも感じるその気配に背後を見る。


「有難う。今日来てくれて」


「.....気にすんな.....。だけど.....大丈夫かお前さん」


「.....うん。ちょっと怖いかな」


「.....まあ.....こんな事に陥るとは思ってなかったしな」


「そうだね.....何で人って憎むんだろう。他人を」


「そうだな.....」


泉はこう言っていたな、と答える俺。

それからこっちを見てきた真帆を見る。

真帆は涙目だった。

だから向こうを見ていたんだな。

俺は考えながら天井を見上げてみる。


「泉は.....戦争が嫌いって言ってた」


「壮大だね」


「.....ああ。でもこうも言っていた。.....人って種類が色々居るから。人も生き物もみんな縄張りがある。.....だから争わないといけないよね、って感じでな」


「.....そうだね。だけど.....」


「そう。だから俺は言おうとしたんだ。お前と同じ様にな。すると泉がまた切り出してきたんだ」


「.....それは.....何て?」


「でも争いは何も生まないから。だから人間ってバカだねって」


目をパチクリした真帆。

極論だねアハハ、と笑った。

俺は、だろうな。子供だしな、と答える。


それから寄り添って来る真帆。

そして笑顔になる。

泣き止んだ様だな.....良かった。

考えながら真帆の頭を撫でていると。


「.....ねえ。翼くん。私.....心臓がバクバクいってる」


「.....そりゃ奇遇だな。俺もだ」


「.....恥ずかしいね。いざ恋人なのに」


「.....まあそうだな」


そんな感じで会話をしながら俺達は寄り添い合う。

すると.....真帆が見上げてきた。

潤んだ瞳で.....キス出来そうだ.....が。

と思っていると真帆のスマホの電話が鳴った。

それは.....アイナからだ。


「.....アイナ?この時間に?」


まさか、と俺達は青ざめる。

それから電気を点けて電話をスピーカーにした真帆。

俺も、どうした。アイナ!、と声を掛けると。

アイナは数秒黙ってから。

口を開いた。


『.....由奈が警察署に行ったみたい。この今の事件で。.....自首した』


「「.....はぁ!!!!?」」


俺達は愕然としながらその言葉を聞く。

アイナは涙を拭う様にしながら。

怒り混じりな感じで言葉を震わせる。

由奈ね。.....私達の住所を不良のグループに教えたって。.....私達の。.....だから私達の居場所を知っているんだって。多分そうじゃないかって警察が言っている、と答えた。


「.....」


「真帆.....」


「.....」


真帆は何も語らず.....愕然としていた。

そして膝から崩れ落ちる。

それから号泣し始めた。

何で.....私達の大切な.....信頼している人が、と。

俺は落ちたスマホに問う。


「.....何で知っているんだ」


『.....私と由奈の家って近いんだよね。.....それで.....教えてもらった。由奈に直接電話で。.....脅されていたけど自首するって』


「.....」


由奈は.....何を思っていたのか。

それは全く見当がつかない。

だけど.....俺は由奈の声を思い出す。

私の真帆を取ったな!

その事が.....彼女を焦らせてしまったのだろうか。


『.....ゴメン。翼っち。私もショックで頭が.....。.....また明日ね』


「.....ああ。すまん。アイナ」


それから電話は切れる。

真帆は号泣したまま顔を上げれなかった。

それでか。

何故こんなにも的確に俺達を襲えているのか。

それは.....身近にこういう裏切り者が居たから、か。


その後の話だが。

真帆は過呼吸を起こした。

俺は慌てて袋で呼吸を巡回させたが。

真帆はそれでもずっと泣き続けていた。


芋蔓式に全てが明らかになるだろう。

そう.....思うが。

誰がこんな真似をしているのか。

見当がつかない。

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