第46話 壊れゆく絆(1)〜憧れたからこそだった〜

何かしら.....というか。

この事態が収まる様に祈っているが.....そうはいかないのがこの世の中だ。

花梨に内緒にしようと思っていたのだが夜に事件の被害届を受理した警察が家に来てしまった。

水亀への傷害事件などで捜査中、という感じで、だ。

それで花梨が気付いた。


「.....何でこんなの黙っていたの。お兄ちゃん」


「.....すまん」


俺は警察が俺達に事情聴取をしてからというか。

警察が帰ってからお説教を受けていた。

花梨に。

その花梨はかなり怒っていた。

仲間外れにされたのが気に食わないらしい。


「.....でもお前を巻き添えにするのは気が引けたんだ」


「.....だからってこんな真似は、め!、だよ。お兄ちゃん」


「そうだな。俺が悪かった」


そして謝る俺。

それからお茶を淹れ始める花梨を見る。

花梨は、お茶のコップを握りしめていた。

俺はその姿を見つめる。


「.....何でこんな事をするのかな。人って」


「.....さあな。何がしたいのか全く分からん」


「人って.....馬鹿だよね」


「.....」


花梨は涙を浮かべながらコップをワナワナ振るわせる。

かなり怒っている。

俺はその姿を見ながら、これ以上被害が及ばない様にしないといけない。最悪の場合.....まだ被害が広がるかもしれない。一応.....水亀に聞いたら暴力を振るった奴は捕まった様だが、と答える。

すると花梨は、当たり前だよ、と言った。


「.....こんな事で捕まらなかったらどうするの。野放しだよね」


「そうだな。ごもっともだ。お前の言う通り」


「.....本当に大丈夫なの?真帆さん」


「.....分からない。だけど連絡は取り合っている。何かあったら向かえる様にな」


思いながら顎に手を添える。

そうしているとインターフォンが鳴った。

誰だよ夜に。

俺は考えながらドアを開けると。

緑陽大輔が.....立っていた。


「.....夜分遅くにすまない」


「.....何だアンタ。何か用事.....ってか何でこの住所.....」


「訳は後で話そう。.....君にお願いがあって来た」


「.....?.....何の」


「私はこれでも反省をしているつもりでね。.....だがそれでもまだ足りないと思っている。罪滅ぼしにはね。.....そこでお願いがある。進藤くんの家に泊まってくれないかね」


「.....は!?!?!」


この状態だと進藤くんの事が最も攻撃されやすいかと思ってね。

その、警察にも6人の家の監視はお願いはしている。

中では特に進藤くんの.....家の警護のお願いはしているがもし良かったら君にも一晩だけ念の為のお願いがしたい。

何も起こらないとは思うが。


裏方の初仕事がこれで申し訳ないのだが。

報酬は弾む、と緑陽大輔は頭を下げた。

何か知っている様な口調だな.....。

まあ良いけど。


「.....いや。要らないですよ。そんなの。.....俺の彼女の家なんだから」


「.....進藤くん、ご家族には全て話している。.....君が了解が得れればそれでいける。.....頼めるかな。私には手が届かない範囲だ」


「.....分かりました。.....いつから行ったら良いですか」


「今から、と言って出来るかね」


「分かりました。準備して直ぐに向かいます」


取り敢えずは俺の妹に話してきます。

なので時間を下さい、と言ってから.....花梨を見る。

花梨は頷いていた。


「花梨。すまないけど母さんと父さんに話を通しておいてくれるか」


「.....うん。気を付けて。話しておく」


騒ぎを聞きつけて直ぐにやって来た様だったが。

俺は、準備しますんで、と緑陽大輔を見る。

緑陽大輔は、すまない。車で待っている。連れて行くから、と言葉を発した。

俺はその姿を見ながら、はい、と頷く。



「.....不安だから.....一緒に寝てくれる?」


「.....一緒って.....お前さ.....ん!?」


一緒の布団で一緒に!?

俺は真っ赤になりながら.....真帆を見る。

真帆からは途轍もなく良い香りがしていた。

俺を不安そうに見上げてくる。

何故こんな事になっているのか。


「.....真帆。恥ずかしいぞこれ」


「.....変なところを触らないでね。いくら翼くんでもなんだか恥ずかしいから」


「わ、分かっているけど」


何故こうなってしまったのか。

それは2時間前に遡る.....。

俺が緑陽大輔に一晩だけ相手が家の住所を知っている可能性があるから警戒の為に泊まってくれるか、と言われた時だ。

それから2時間だが.....寝る時になって真帆がそう言い出した。



「それでは。頼んだよ」


「.....ああ。任せろ」


緑陽大輔はそう言いながら去って行った。

そしてそのまま警察に挨拶をしてから。

そのまま玄関から中に入る。

すると.....真帆が母親と一緒に居た。


「.....有難う。今日は来てくれて。.....翼くん」


「.....ああ。.....今日は宜しく」


「.....じゃあ早速だけどお風呂でもどうかしら」


「.....有難う御座います」


この時、俺達はまだ知らなかった。

誰がこの今の絶望を招いていたか.....を。

そして.....彼女を救えなかった絶望を。

俺達は思い知る事になる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る