第45話 この世界での絆

何もかもがイカれているのでは無いだろうか。

俺は思いながらそのまま走って総合病院に向かう。

それから病室に向かうと水亀が俺を驚きの眼差しで見てきた。

そして、何で君が、と言ってくる。


「.....水亀。大丈夫か。心配だったから来たんだが」


「そんな.....別に大丈夫だよ。.....君は.....心配性だね。.....もしかしてカノンが.....」


「そうだね.....アキラ。私が呼んだよ」


「そうなんだね.....そんなに絶望しなくて良いのに」


「心配だから。私のアキラだから」


そして涙を浮かべるカノンさん。

俺はその姿を見ながら眉を顰める。

すると.....心配げな顔の真帆が扉を開けてやって来た。


それから俺を見てくる。

大丈夫なのかな.....水亀くん、と言ってくる。

俺はその姿を見ながら、ああ、と返事をした。

真帆は水亀を見る。


「.....打撲とか?カノンさん。顔とかは.....見てないんですか?」


「そうだね.....打撲だよ。一応打撲で済んだ。.....そして見てない。暗がりだったから.....」


「.....そうなんですね」


カノンさんは俺達を見ながら悲しげな顔をする。

俺は真剣な顔で水亀を見る。

水亀は、何でこんな事になったのか、と向いてくる。

その姿に答える。

アイドル狩りが起こっているらしい、と。


「アイドル狩りって.....そ、そんな事が?」


「ああ。だから真帆。お前も気を付けないと.....」


「そうだね.....というかそんな変な事を誰がしているの?」


「.....正直当て嵌まる奴はいる。だけどそれが正しいかどうかは分からない。だから何も言えない」


「.....そうなんだ。.....そうだよね.....」


真帆が涙目になりながらカノンさんを見る。

俺はその姿を見ながら.....顎に手を添える。

困ったもんだな、と思う。

本当に困ったもんだな、と。

不安すぎるこの先が。


「私は大丈夫だと思うがね。.....だけど」


「大丈夫なんて無いです。カノンさん」


「.....翼.....」


「.....俺としては大丈夫って言えないです。だから大丈夫なんて言わないで下さい。.....正直.....この事は警察に訴えても良いレベルだと思います」


「そうだね。.....今.....事務所が何かしているみたいだしね」


カノンさんは俺を見ながら真剣な顔をする。

そして、君の言葉を胸に置いておく。今は全然.....そんな気にならないけどね、と俺に向いてくる。

俺は、はい、と頷いた。

それから水亀を見る。


「水亀。.....お前のことも心配だから。だから何とか.....周りに頼ってくれな」


「そうだね。.....有難う。山口。僕の事を心配してくれて」


「.....」


俺はそんな水亀の姿を見ながら唇を噛む。

それから、何故こんな目に遭わなくてはならないのか、と考える。

アイドル狩り.....か。

俺は思いながら真帆を見る。

真帆は悲しげな顔をしながら2人を見ている。


「.....取り敢えずは私が守る。.....アキラは」


「.....そうですか」


「ああ。.....君らも.....気を付けたまえ。.....私は取り乱してしまったが.....」


カノンさんはそう言いながら複雑な顔をする。

俺はその姿を見ながら溜息を吐く。

変な事をする連中も居れば。

こういうまともなアイドルも居る。

どういう天地なのだろうかこれは.....。


「.....ね。翼くん」


「.....どうした」


「.....何でこんな酷い事を出来ると思う?私は怖いというより疑問なんだけど」


「分からないな。何故こんな真似が出来るのか。正直.....一切分からない。.....だけど1つだけ言えるのは.....身を守るしか無い事だ」


「.....だね。.....君を失ったら私死んじゃうから。.....だから.....」


恐怖なのかそれとも何なのか。

泣き始めた真帆。

俺はその姿を見ながら抱き締める。

そして水亀とカノンさんを見る。

今日は帰ります、と言いながらであるが。


「ああ。来てくれて有難うな。今日は。.....帰り道に気をつけたまえ」


「.....ですね。.....有難う御座います」


「.....」


真帆は涙を拭いながら頭を下げる。

それから病院を後にした。

そして真帆を送り届けたのを確認して帰る。

このまま黙っては居られないが。

でもどうしたら良いのか分からない。


しかしこのままでは終わらせない。

絶対に許さない。

誰か知らないけど.....この状態を起こした奴を。

思いながら俺は空を見上げてから。

オレンジ色の夕日を見る。


「.....真帆もそうだが.....許せないよな。絶対に」


俺は考えながら家に帰る。

それから玄関から家に入った。

お兄ちゃん、と聞いてくる花梨が来た。

俺は、どうした、と笑みを浮かべた。

だが花梨は深刻そうな顔をする。


「.....何かあったのかな」


「何もないよ。.....大丈夫だ」


少なくとも花梨には。

絶望を知らせたくない。

その為に荷物の言い訳をしてから。


マネージャーから言われたバイトの事を伝えた。

俺達だけで解決しないと.....だな。

そう決意しながら。

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