3、アイドルの存在を妬む者

脅威

第44話 アイドルを標的にする人物

長野潤という男に出会ってから俺たちはまた一つ学んだ気がした。

俺は思いながらそのまま帰宅の途につく。

するとその帰り道の時に電車の中で真帆が俺に寄り添ってくる。

そして俺を見上げてきた。

まるで擦り寄ってくる様に、だ。


「今日は有難う。長野くんに会ってくれて」


「潤に会うのは運命だったんだろうな。きっと。.....だから大丈夫だ」


「うん。やっぱり優しいね。君は」


「優しいとか.....有難うな。俺はただ思っているだけなんだけど」


「.....長野くんは.....私は.....どうしようかって思っていたから」


どうしようかって思っていたから本当に。

だって私は.....長野くんの元カノだったしね。

別れたのがあんな事だったから、と悲しげな顔をする真帆を抱きしめる。

それから笑顔を浮かべる。


「お前の気持ちとか思いとか全部しっかり受け止めたから。.....泣かないでくれ。.....アイツも泣くなって言ってたろ?潤も」


「.....そうだね。.....もう泣かないよ。.....私は。長野くんとか考えて。でも寂しいって言うか。何だろう。何とも言えない感情がね」


「.....そうだな。泉を失っているから。.....でも今残された俺達が幸せになる事が潤の生き甲斐になると思う。だから幸せになろう」


「そうだね」


そして駅に着いた。

それから降りる。

すると.....とんでもない場面に遭遇した。

丁度、水亀とカノン先輩がデートしている場面。

俺達は顔を見合わせる。


「.....面白そうだけど今は置いておこうかな。.....悪いしね」


「そうだな。でも水亀を追求する様な思いを抱けた」


「最低だね。翼くん。でもそれは確かに」


「お前も納得するなよ」


そして俺達はクスクス笑いながら。

そのまま別れて帰る事にした。

そうしてから家の前に来ると.....車が止まっている。

それはまあ.....見た事のある車だった。


「マネージャーさん」


「!.....あ。すいません.....」


「どうしたんすか」


「いえ。.....その。ご挨拶をと思いまして」


「.....成程ですね」


でも家に誰もいらっしゃら無かったから帰ろうかと思っていた所でした、と言ってくるマネージャーさん。

俺は?を浮かべてマネージャーさんを見る。

するとマネージャーさんは、初仕事のご挨拶です、と言ってくる。


「.....ああ.....もしかして裏方のですか?」


「今度ですが大きなライブを行います。今度ですが.....その裏方でのお仕事の件で。それ以外にも.....最近ですが嫌な噂を聞きまして」


「嫌な噂ですか?」


「.....男も女も関係無くアイドルに暴行を加える人が居るらしく。.....その関係者もですが。.....首謀者が誰か分かりませんがアイドルにかなり妬みのある人みたいです。.....貴方も気を付けて」


「.....アイドル狩り.....」


「ですね.....そうと言えます。.....でも何となくですがその首謀者は浮き出てきています。.....元アイドルの様ですが」


マジかよ、と思いながらマネージャーさんを見る。

するとマネージャーさんは、はい、と言いながら俺を見てきた。

それからその人物は女性です、と言いながら。

でもそれ以上の事は分かりかねます、とも。


「.....何がしたいのか.....なのですが」


「それは.....また最低ですね。逆恨みにも程がある」


「.....そうですね。多分自分が上手くいかなかったから素行不良に陥っているんだと思います。.....何れにせよお気を付けて」


あ。それはそれなんですが、と何かを取り出すマネージャーさん。

それは.....アイドルの裏方の作業のTシャツとか。

お菓子とかだった。

俺は首を傾げる。

そしてマネージャーさんを見る。


「お菓子はお礼です。.....昨今の件の」


「.....ああ。そういうの良いのにです」


「でも受け取って下さい。私もお世話になりましたので」


「.....そうですか」


そして受け取る。

それからマネージャーさんは、では。仕事があるので失礼します、と頭を下げてきながら笑みを浮かべた。

俺は、はい、と答えながらそのまま車に乗って去って行くマネージャーさんを見送ってから。

そのまま顎に手を添える。


「.....正直。当て嵌まる奴は居るが」


そんな事を呟きながら。

渡と一緒に居た女.....だが。

ソイツが....元凶の様な気がする。

だけどこんな横暴な手段に出るとは、と思う。

思いながら居ると電話が掛かってきた。


「.....カノン先輩?」


俺は荷物を置きながら電話に出る。

すると.....カノンさんが泣きながら、すまない翼くん、と声が.....。

ゾッとした。

何か嫌な気配を感じて、だ。

そして話してみる。


『襲われた。.....アキラが.....アキラが。路地で何か男性に腹を殴られた。いきなり』


「.....今何処ですか。直ぐ行きます」


『〇〇病院だよ.....何でアキラが.....こんな目に.....』


「.....クソッタレ!!!!!」


俺は吐き捨てながら荷物を置き去りにしてそのまま走って病院に向かう。

聞いた直後だってのにこんないきなり!

カノン先輩の大切な彼氏を襲撃するなんざ汚い真似を!

俺は思いながらそのまま走ってから総合病院に向かった。

この街で唯一の大きな病院に。

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