第42話 とある出会い(3)〜長野潤の思いと1年の約束〜

「僕は体調不良が本当に多かったから.....当時は何も考えれなかった。だから僕は真帆.....を。考えた末に彼女を元鞘に戻してあげたんだ」


「.....真帆と話し合った結果か」


「そうだね。.....僕は先は長く無いだろう。だから僕が真帆に懇願してこういう感じにしたんだ」


でもその懇願した所で必ず別れられるとは限らない。

優しい真帆の事だから僕に付いて来る。

だから僕は心から納得してもらう為に.....約束したんだ。


僕が1年間調子が悪くなく居れたら付き合ったままで居よう、って。


でも僕の症状はどんどん悪化していった。

だから僕は.....、とそこまで言ってから真帆を見る潤。

そして、僕は1年で立ち上がれないぐらいまで悪化した。.....だから真帆にお願いして.....別れてもらったんだ、と切り出す。


「.....当然だけど僕達は連絡は取り合っていたけど.....小学生だったからね」


「.....成程な。.....真帆そんな事があったんだな」


「嫌だった.....でも親の都合もあって別れざるを得ないタイミングだった。.....だから良いきっかけだって彼が言ったの」


「.....それで7年も月日が経ったんだな」


「.....だね」


勿論だけど彼の事を忘れた事は無い、と真帆は言う。

そして涙を浮かべる。

でもどっちを優先したら良いのかって悩んで、とも。


俺はその姿を見ながら潤を見る。

潤。俺は良いのか。このまま付き合って、と言う。

コーヒーの湯気を見ながら。


「僕はこんな不健康なんだ。.....そして君は僕以上に真帆を大切に思ってくれている。.....真帆はきっと僕の事は忘れられないと思うけど。.....彼の幸せを一番に願ってあげてほしいな」


「.....長野.....君.....」


「僕は今はもう幸せだ。.....こうなってしまったけど幸せを願わずにはいられないんだ」


それに、と切り出す潤。

そして俺を見てくる。

俺は?を浮かべて潤を見た。

翼は僕の分身の様に思えるしね、と言ってくる。


「君も.....何か痛い思いをしているんじゃ無いかな。.....これまでで」


「.....よく分かったな。潤」


「.....君も大変だね」


ストローで飲み物を飲みながら。

俺を見てくる潤。

その姿を見ながら、俺の幼馴染が亡くなってな、と切り出す。

すると潤は、そうか、と俺を見てくる。


「.....そうなんだな」


「.....だから恋愛に臆病だったんだ」


「.....そうか。.....それでまた恋が出来たのは.....真帆のお陰なんだね」


「そうなんだ。.....だからお前に申し訳ないなって思う部分もある」


「言ったろ。翼。君は僕の分身だって」


僕も大切な人を失ったから。

知っている部分もある。

妹なんだけどね、と言う潤。

俺は!と思いながら潤を見る。

遺伝性疾患.....僕が受け継いでしまったんだ、とも。


「妹は.....心臓疾患だ。.....そして僕は脊髄疾患だ。.....失ったものは大きい」


「.....潤.....」


「.....長野君.....それって」


「4年前の話だった。.....突然死だったよ」


何だか朝起きたら妹が冷たくなっていてね。

と涙を浮かべる潤。

だからこそ生きようと思った。

その中で、こうやって生きているって素晴らしいな、って思ったんだ。


「.....僕は不幸じゃない。3年間は幸せな事ばかりだった」


「.....潤」


「.....長野君.....」


僕は妹を失った。

そして君は幼馴染を失った。

君と僕は似ている気がするんだ。

大切な人を失う痛みを知っている、と潤は言う。

だからこそ君は.....彼女を大切に出来るさ、と笑みを浮かべた。


「僕が言える立場じゃ無いとは思う。.....でも本当にそう思える」


「.....ああ。有難うな。潤。.....何となく自信が持てた」


「.....長野君。有難う」


「.....さて。そうなるとケーキでも食べようか。.....みんな。奢るよ」


言いながら明るくしようとする潤。

俺はその姿を見ながら、潤。お前は.....その。何でそんなに明るく居れるんだ?、と聞いてみると。

潤は、僕は常に明るくないと死ぬ体質だからね、と笑顔を浮かべた。

それから俺を見てくる。


「.....時たまには泣きそうにはなるよ。.....でも僕は生きていて.....とても楽しい。こういう事があるからね」


「.....そうか」


「本当に長野君は昔から変わってないね」


「.....君もね」


まあそれにしてもここまで有名なアイドルになるなんてね、と笑みを浮かべる潤。

それから、僕の元カノだけど誇らしいよ、と潤は真帆を見る。

真帆は、そんな事ないよ、と答えた。

これは周りが支えてくれたお陰だから、とも。


「私の実力なんてとっくの昔に死んでいるから」


「.....そう言うけどね。.....真帆。君は昔から頑張り屋だったのを知っている。僕はね。.....自信を持って真帆」


「.....有難う。長野君」


「さてさて。ケーキを持ってくる。.....ちょっと待っていてね。2人とも」


それから潤はカウンターに車椅子を動かして行きながらそのまま親父さんと何かを話してから。

ケーキを持って来てくれた。

自慢のケーキだと言うケーキを。

レモネード風のケーキだった。

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