第39話 プール掃除してくれや

「これでまあ.....私は本当に引退しても良いかもねって思う」


「正直驚愕だぞ。.....まさか渡が星の鏡に入るなんて」


「.....そだね。アハハ」


そんな会話をしながら俺達は屋上で掃除をしていた。

何時もお世話になっているので枯葉ぐらいは拾っておきたいと思っていたのだ。

丁度良い機会かもしれない。

今日は午前中の授業のみで掃除していたのだ。

丁度.....話もしたかったしな。


「.....でも渡さんは良い人っぽいから。.....大丈夫だよきっと。彼女も反省しているしね」


「その様だな。.....まあこれから先も任せても良いかもな。今の渡なら」


笑みを浮かべながら会話をする。

ゴミ袋に枯葉を集めながら.....ゴミを集めながら。

それから拭いた紙とか入れながら。

すると、ねえ。翼くん、と聞いてくる。


「私は将来.....何になりたいんだと思う?」


「.....それは三者面談が近付いているから?」


「そうだね。私.....将来.....アイドルもそうだけど手に職をつけたいんだ。でも.....それでも何をしたら良いか分からないから」


「.....そうだな.....」


私は優しいから何か介護職とか事務員とか向いているかもね、と笑顔になる真帆。

俺は、まあそれも良いけど.....生半可じゃ無いだろそれ、と答える。

そして、真帆。大変だぞ。介護職は、と答える。

真帆は、うん。知ってる、と答える。


「.....私のおばあちゃんを見て思ったから」


「.....そうか」


「.....でも大変だからこそ見出せそうなものもある。.....それはお爺ちゃんとお婆ちゃんに触れ合う事で見つかるかもしれないから」


「そうなのか」


「うん。何もかもに挑んでみたい。.....君が隣に居るから」


「良い志だな」


そうだね、と答えながらはにかむ真帆。

それから汗をハンカチで拭く。

そして、良い仕事したね、と言ってくる。

俺は、確かにな、と返事をしながらピッカピカになった屋上を見渡す。

すると、ウィース、と声がした。


「.....綺麗になりすぎじゃないか?ここまでしなくても良かったんだが」


「まあやりたいだけやりたかったんです。猪熊先生」


「そうだねぇ。翼くん」


「そうか。良い志だが.....まあやり過ぎるなよ」


猪熊先生は苦笑しながら無精髭を撫でながら俺達を見る。

そして、んじゃ。遅くならないうちに帰れよ、と去って行く猪熊先生。

その途中で、あ、と声を出した。

それから俺達を見てくる。


「お前らって掃除好き?」


「.....それってどういう意味ですか?」


「いや。もし良かったらファミレスで色々と奢るからさ。プール掃除もしてくれよ」


「猪熊先生が面倒いだけでしょう.....」


「そんな事言うな。山口。.....彼女と一緒にプールで遊ぶ権限もやるから」


「.....仕方が無いな.....どうする?真帆」


じゃあ翼くんと一緒にお掃除します、と笑みを浮かべながら猪熊先生を見る真帆。

そう言うとは思ったが。

掃除好きだなぁ.....、と思う。

猪熊先生は、マジか!?ジョークで言ったんだが!、と目を輝かせる。


「なら頼むぞ!お前ら!」


「その代わりですが.....みんなを呼んで良いですか」


「みんな?.....ああ。構わないぞ。幾らでも呼んでくれ。その分早く終わるだろうしな」


「アンタ本当に教師か?」


まあそう言うな山口、と言いながら、アッハッハ!、と爆笑する猪熊先生。

俺は顔を引き攣らせながら、まあ仕方がないな、と思う。

でも楽しくなりそうだなそれはそれで。

思いながら少しだけ楽しみになってきた。


「プール掃除かぁ。楽しみ」


「.....そうだな。お前は本当に掃除好きだな」


「家事全般が好きだからねぇ」


「.....そうか」


そして俺達は7月のプール開放に合わせて。

プールすらも掃除をする事になった。

全くな、と思うが。

まあしゃあないか、と考えてしまう。

ここまで行ったらもう断れないだろうし。



その前に一大イベントがある。

それは.....俺と真帆の結婚式での撮影会。

それからアイナの誕生日など、だ。

6月はジューンブライド。

つまり.....この月に纏めてしてしまいたい、と弓弦さんからの強い要望もあり。

俺達は電車に揺られていた。


「.....やっぱり緊張するね。アハハ」


「そうだな.....今日は俺の学校だけが午後が休みだから.....」


校長による教職員の教習の為にお俺の学校だけが休み。

つまり.....午後に教会に向かっていた。

俺達は寄り添う感じで手を握る。

良い日だなって思う。


「.....私はとても幸せ者だね」


「.....俺もな」


そんな会話をしながら外を見る。

そこには海が広がっていた。

そしてトンネルに入ったりしてから.....海辺駅という場所に着く。

それから俺達は降り立つ。


ここら辺に来るのは久々だと思う。

子供の頃以来か。

何というかアニメグッズの買い求めでここら辺をよく通ったが。

この駅で降りるのは久々だ。

通り過ぎていただけで.....本当に久々だな。


「アイナの誕プレも買おうかな」


「それは確かにな。買おうか」


それから俺は笑みを浮かべる真帆の手を握り。

そのまま歩き出す。

何処で誕プレ買おうか、とかそんなの考えながら、だが。

嬉しい気分でいっぱいだった。

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