第38話 6つの絆

「私は彼女達を5人で1つであると信じています。.....だから当初は貴方に冷たくしました。貴方は自己満足で動いているものと思っていましたが。.....違う様なので私は貴方を見守っていました」


「.....そうなんだな」


「私はこのまま解雇されても構いませんが.....ですがあの子達は.....解雇される必要はありません。.....あの子達の居場所を守りたいんですよね.....」


「.....」


そんな言葉を言いながら車の中で前を見据えるマネージャー。

俺はその姿を見ながら溜息を吐く。

それから俺も同じ様に前を見据える。

フロントガラスの先には通行人とビルが見える。


「取り敢えずはやれるだけの事はしたと思っている。.....だから様子見だと思う」


「.....私が社長に出会ったのは昔の事でした。.....その時はまだ社長も笑顔の絶えない社長だったんです。.....でもそれから色々と世間で噂やニュースが流れる度に精神を病んでしまって.....それからあんな感じで冷たくなって娘さんに当たる様になったんです」


「.....ああ。そうだったのか」


「そうですね」


そうしていると.....ルナが車に近付いて来た。

俺は?を浮かべてドアを開ける。

するとルナが、お父さんが呼んでいます、と言ってくる。

俺は、俺だけか、と答える。

ルナは頷いた。


「.....社長は翼さんだけを求めています」


「.....何がしたいか知らないが.....」


俺は車から降りる。

するとマネージャーが俺に向いてきた。

何かあったら逃げて下さいね、的な感じで。

そこまでは狂ってないとは思いますが、とも。

俺は頷きながら、ルナ。戻るか、と言う。


「はい」


「.....しかし何で俺だけご指名なんだ」


「何かよく分からないです」


「.....そうか」


そして事務所に戻ると.....厳つい顔のままの緑陽大輔が居た。

俺は、何でしょう、と尋ねてみる。

すると、君はルナもそうだが。周りを気に掛けるタイプなのかね、と聞いてくる。

当たり前の言葉に、そうですが?、と答える。

緑陽大輔は、そうか。君も私に似ているんだな、と言った。


「.....似ているとは?」


「.....私も昔はそうだったという事だよ。.....でもいつからかな。狂った感じだ。何か.....舵が」


「.....」


そうしていると事務所のドアが開いた。

それから真帆とアイナと由奈。

そしてカノンさんと.....渡が顔を見せた。

俺は!?と思いながら見る。


「.....社長」


「.....何かね」


「私たちはシュプレヒコールを挙げたいです」


「.....」


「.....あまりにもルナが可哀想です」


「そうだ!」


そんな感じで抗議の声を上げるみんな。

そして、このまま直らないのならいっその事ですが他の事務所で活動します。ルナを引き連れて、と真帆が切り出した。

俺は!と思いながら見てみる。


「.....」


そこまで.....なのか、と言う緑陽大輔。

そして、私が間違っていたんだな、と呟く。

それからルナを見てから全員を見渡す。

そして、そうだな。分かった。変わる努力をする。私は、と窓の外を見ながら話す。

俺は!とまた浮かべる。


「.....パパ.....」


「.....私は.....何かを忘れているんだろう。.....それを思い出すまで時間が掛かるかもしれないが。.....思い出す。必ず」


「社長.....」


「社長」


そんな感じで会話をする緑陽大輔とみんな。

俺は、迷っていた渡を拾ったぐらいだ。アンタなら変われるさ、と笑みを浮かべる。

そして俺は事務所を後にしようとする。

すると、待ちたまえ、と声がした。

俺は?を浮かべて背後を見る。


「良かったらだが。君はアイドルの手伝いなどはしてみたくはないかね」


「.....それはどういう意味ですか」


「.....君なら裏方で仕事をしっかりしてくれそうだ。.....報酬は満額出す。.....破格の条件で。.....どうかね」


「.....え?」


「君はアイドル6人の事を良く分かっている。だからこそマネージャーの様なやってほしい仕事がある」


俺は驚きながら緑陽大輔を見る。

最初は君が嫌いだったが。

君は.....きっと我々と仕事を上手くこなせる、と言う。

みんな、それは賛成ですね、と言う。


「でも社長。壊さないで下さいよ。彼を」


「真帆ちゃんの彼氏ちゃんなんだから」


「そうだね」


「だね」


いやいやちょっと待て。

俺は、まだやるとは言ってないぞ、と言う。

そして俺は緑陽大輔を見る。

マネージャーを復活させる事を条件にしてくれ。そうしたら俺も考える、と言う。

驚く緑陽大輔だったが。

顎に手を添えてから答えた。


「君が言うならそうしよう。彼女も惜しい人材だからな」


「.....そうか。なら考えさせてくれ」


「翼くん。期待してる」


「.....ああ。真帆。分かった」


それから俺は真帆達を見てから。

緑陽大輔を見る。

そんな緑陽大輔は、すまないがこの後に彼女達は仕事があるのでね。君はマネージャーの彼女に送ってもらいなさい、と言ってくる。

俺は頷きながら去ろうとした時。


「.....翼さん」


「.....どうした?ルナ」


「色々と有難う御座いました。.....何もかもがお世話になりっぱなしですね」


「お前の父親に文句が言いたかっただけだ。それ以外は何もしてないしな」


俺は苦笑しながらみんなを残してそのまま車に乗りこむ。

事情を伝えるとマネージャーは涙を浮かべていたのが印象的だった。

その夜の事だったが。

何と新メンバーの加入が決定した。

星の鏡に、だ。


それは.....渡であった。

仰天しながら妹は見ていたが。

俺も驚きだった。

まさかそこまで行くとは思ってなかったから、だ。

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