第35話 告白
かなり捻れている。
何がと言えば今の状況が、だ。
俺はトイレを済ませてから戻って来る。
今の俺の所属している組の合計得点は3位だった。
つまりあまり宜しくない。
告白には程遠い。
絶望的とは言えないが。
「翼くん」
「.....ああ。真帆。どうした?」
「.....カノンさん.....好きな人分かった?」
「.....分からないな。話していたの見たのか?」
「チラッとね。でも忙しかったから」
そうか、と返事しながら上を見ると。
水亀と視線が合った。
それから俺は目線を逸らして真帆を見る。
真帆なら信頼出来るかな、と思う。
「真帆。少しだけ話がある。良いかな」
「え?何のお話?」
「.....それぞれの恋バナだ」
「.....!.....うん。分かった。じゃあここから離れようか」
「そうだな」
そして俺達は人目が付かない屋上にやって来た。
当然だが無断外出である。
その為に猪熊先生に怒られそうだが。
でもこの場所しか無い。
無事に話が出来そうなのは、だ。
☆
「.....カノンさんは水亀が好きらしい。.....そしてアイナは富義が、でも富義はカノンさんが好きなんだ」
「.....そうなんだね。何となく予想はしていたけど」
「そうだな。.....取り敢えずはどうしたものか、と思ってな」
「うん。.....でもこのままじゃダメだよね。きっと」
「恐らくは何処かでほつれが出る。だから何とかしないといけない」
そうだね、と言いながら真帆は真剣な顔で顎に手を添える。
それから考え込んだ。
そして顔を上げる。
富義くんにショック受けて欲しくない、と答えが出た。
それはそうだな、と思う。
「.....アイナは知っているのかな」
「それは.....まあ知っているんじゃないか。富義の恋バナぐらいは。そんな隠し事は苦手だしな。富義は」
「そうなんだね」
「ああ。だからそこも問題だが.....」
富義に水亀にどう伝えるか、だな。
俺は考えながら.....空を見上げる。
そして顎に手を添える。
どうしたものか、と思いながら。
でも、と真帆が言った。
「.....優勝しなかったら告白しないんだよね?」
「.....それはそれで逆に問題だな」
「確かにね。ますます捻れそうだね」
「そうだ。だから.....」
と言っていると。
屋上のドアが開いた。
それから、お前ら此処に居たのか、と猪熊先生が顔を見せる。
俺達はビクッとしたが。
そんな事は気にせずに猪熊先生は話した。
そして、富義が足を捻ってな。それで運ばれた、と言ってくる。
「.....取り敢えず行ってくれるか。先生はちょっと休憩のつもりで此処に来たから」
「.....はい」
「分かりました」
俺達は頷き合いながら.....保健室に向かう。
すると.....アイナの声がした。
俺は!と思いながら真帆と共に隠れる。
そして、富義くん、と声がする。
そんな富義は、有難うな。運んでくれて、と言っている。
「.....う、うん。大丈夫」
「.....お前は優しいな。力持ちだし。そんな事は言ってはならないが」
「そ、そうだね」
そんな声が聞こえてくる。
俺達は耳をすましながら.....声を聞く。
すると、ねえ。富義くん、と言うアイナ。
富義自体は、何だ?、と柔和に返事をしている。
「私が.....その.....」
「.....?」
「えっと.....その.....」
いつの間にか頑張れアイナ!、的な感じになっている真帆。
興奮気味に窓から見ている。
俺はその姿を見ながら耳をすましていると。
富義が、捻挫か。悲しいな、と落ち込む声がした。
「.....そ、そんな事ない!!!!!」
「え?.....何故だ。このままでは.....」
「アンタはよく活躍した!だから.....」
「アイナさん?」
「私は.....だから.....このまま負けてほしいって思う」
「クラスが?.....何故だ?」
この願いは叶わない。
だけど.....私はアンタにまっすぐに言う。
私はアンタが好きだって、と切り出した。
こんな割り込みは絶対にダメだけど、とも。
今言うべきじゃないけど、と。
俺達は!!!!!と思いながら音に耳をすます。
「.....何だ.....って.....」
「.....私は.....アンタが私に勉強を教えて。いつしかアンタに心が向いていた。.....だからアンタが好き」
「.....アイナさん.....」
俺は窓から覗いてみる。
難しい顔をしている。
っていうか俺ら変人だわ、と思うんだが。
考えながら見ていると。
そうか、と返事をした富義。
「俺は.....こんな情けない姿を晒して.....馬鹿だなって思った。.....だけどそうか。こんな近くにまた別目線で見てくれている人が居たんだな」
「.....そ、そう。だから.....」
「何れにせよ.....俺は一人前になりたい。.....だから今は保留でも良いか。.....もし今度の三者面談で.....夢が決まったら君に返事をする」
「え?それって.....」
「考えたい。.....だけど答えは近々出す。じゃないとおかしい」
「.....富義くん.....」
それにしてもさっきから覗いているお前らは何だ、と言ってくる富義。
俺は崩れ落ちた。
バレとったか!!!!!、と思いながら。
そして真帆と共に入室する。
「.....つ、翼っち!?」
「.....おう。アイナ」
「アイナ.....」
「.....恥ずかしいもんだな。全く」
富義は赤くなりながら額に手を添える。
俺はその姿に真帆と顔を見合わせてから、そんな事はねぇよ、と言う。
それから富義を見る。
お前見事だな。やっぱり、と言う。
「.....何が見事か。全く」
「.....お前なら幸せに出来そうだ。全てを」
「俺はまだ返事をした訳じゃない。だから全てを保留だ」
「.....富義くんってキザだよね」
「言ってやるな」
お前達は.....全く、と言いながら後頭部を掻く富義。
何というかこんな形でアイナが告白するとはな。
まあ.....これで少しは楽になったか。
俺の感情もそうだが、だ。
後がどうなるか、だな.....。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます