第34話 カノンの昔からの想い
アイナは富義が好きらしい。
んで.....富義はカノンさんが好きらしい。
水亀もそうだが。
俺は困惑しながらトイレに行っていると.....目の前に水亀が居た。
水亀は俺を見るなりビクッと反応する。
それから萎縮した。
「.....ああ。そんなに警戒しなくても何もしない」
「.....そ、そう」
水亀はそそくさと去ろうとする。
俺はその後ろ姿にハッとして聞いた。
なあ。水亀、と言いながら。
それから水亀を見る。
「.....お前がカノンさんを好きになったのは何がきっかけなんだ」
「僕が.....好きになったきっかけ.....」
「.....そうだな。.....いや機会があったら応援したい。お前の事も」
「.....!」
「ああ。言っちゃ悪い.....のか知らないが俺は元陰キャなんだ。だからお前の気持ちが分かる部分もあるんだ」
「そ、そうなんだ」
今回お前がこうやって言葉にした根性。
それは賞賛に値する、と俺は告げる。
すると水亀は親近感が湧いたのか俺に向いてきた。
髪の毛が長いが.....その瞳はしっかりしている。
それから俺を見てくる。
「.....僕は.....カノンさんとは駅で出会った。その時に自殺を考えていた様な僕に必死に優しく声を掛けてくれた。その時から運命を感じたんだ」
「.....水亀.....」
「.....僕は.....カノンさんが好きだ。.....だからこの告白は絶対に負けたく無いって思う」
「.....」
「特にハーレムになっている君に負けたくない」
「ハーレムじゃねぇって。それは誤解だ」
俺は苦笑いを浮かべながらジト目の水亀を見る。
その水亀に俺は、まあ良いけど、と切り出す。
それから水亀に向く。
水亀は?を浮かべて俺を見てくる。
「俺はお前の事も応援している。.....富義に勝ってほしいのは当たり前だけど。だけど.....俺はお前の事も嫌いじゃないから」
「そう.....」
「ああ。だから頑張ってくれよな」
「.....君は確かに何か.....違う感じがする。他の人と違って」
「元陰キャだからじゃないか?それって」
「いや。それもそうだけど.....言い難い感じ。.....何か違う。出会って良かったと感じる」
俺は?を浮かべながら水亀を見る。
水亀は、じゃあ、と言いながら静かに去って行く。
俺はその姿を見ながら.....居ると。
ふむ、と声がした。
そして.....女子トイレから.....カノンさんが顔を見せる。
「か、カノンさん!!!!?聞いてたんですか!?」
「.....そうだな。.....あの少年は私の事を好いているんだな」
「そうですね。.....まあもう隠せないので言うとそんな感じです」
「そうなんだね」
言いながら顎に手を添えるカノンさん。
それから、私の想い人は実は彼だ。彼が好きなんだ、と言う。
俺は!!!!?と思いながらカノンさんを見る。
だからこそ困っている、と言ってくる。
彼は確かに物静かだが正義深いんだ、と笑みを浮かべる。
「そうなんですね.....」
「何処で好きになったんですか?」
「私が彼を好きになった.....のは。運命だ。.....これは絶対のね」
「.....絶対の運命?」
「私は実は彼とは大昔からの知り合いの関係でもある。.....彼は覚えてない様だが私は昔から彼が好きだ」
「.....ファ!?」
かれこれ12年以上前の話だが。
迷子になっていた私を手を繋いで救ってくれたのが彼だった。
それを知ったのは後から両親に聞かされたのだよ、と言ってくる。
俺は愕然としながら、そうなんですね、と話す。
するとカノンさんは俺に向いて、彼がもし告白してくるなら受け入れるつもりだった。.....だが今はその状態では無い、と言う。
「想いに.....応えるというのは難しいな。本当に」
「.....そうですね.....俺もそうでした。初めは」
「そうなのか。.....じゃあ先輩だな。君は」
「俺は先輩と呼ばれる程のもんじゃ無いです」
「だが君は叶わぬ恋の事について詳しいのだろう。だったら.....少しだけ相談に乗ってくれないか。.....私はどうしたら良いと思う」
顎に手を添える。
俺は正直。
一気に2人に恋をされたなどとは聞いた事が無いし。
しかも.....この様な状況になっているのが.....何というか。
どうしたものか、と思う。
だけど.....きっと。
俺は思いながら少しだけ頬を朱に染めているカノンさんを見る。
「カノンさん。きっと富義に話した方が良いです」
「.....そうか。.....だよな」
「.....それも自分の口から先ずは伝えてあげて下さい。あれでも貴方にかなり必死になっているので」
「.....うむ。やはり君に相談して良かったと思う。.....そうだな。私は.....まずは富義くんと相談してから.....色々と何とかしよう」
こういうのは素人でゴメンね、と言ってくるカノンさん。
俺は首を振りながら、俺は貴方の事なら.....真帆でもそうですけど何でも相談に乗ります。お世話になっていますしね、と柔和になりながら答える。
するとカノンさんは、君が私の彼氏だったら.....世界は変わっただろう。.....面白い方向にね、と揶揄ってくる。
俺はその言葉に、いやいや、と言いながらカノンさんを見る。
「.....でもそうですね。貴方の彼氏だったら面白い目線が見えたかもしれないです」
「.....そうだろう?.....私も頑張ろうかね」
「そうですね」
俺は頷きながら笑みを浮かべる。
そんな感じで俺はカノンさんと別れてトイレに行った。
っていうか衝撃的だな。
まさかこんな事になっているとは。
思いながら、それで駅で声を掛けたんだな、と納得した。
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