第28話 (真帆)という名前の由来のネックレス

「貴方達の幸せそうな姿を見て私も幸せだわ」


「有難う御座います」


「そう言ってもらえて幸せだね。翼くん」


そんな会話をしながら俺達は笑みを浮かべて見合わせる。

今だが挨拶を終えてから俺達は真帆の作ったチョコレートを食べていた。

俺はしっかり味わいながら.....しっかり淹れてくれたお茶を飲ませてもらう。

ここまでしなくて良いのにな、と思う。

その様子を見た真帆は笑顔になる。


「お前が居るし.....もう不安は無いな」


「.....うん.....。有難う。.....今日も有難うね。翼くん」


「.....?.....ああ。成程な。まあ絶対に来ようと思っていたから今日は。そして絶対に会いたいって思っていたしな。恋人の家族に」


「.....本当に有難うね」


そんな感じで話していると。

明子さんが、でも本当に良かった。真帆が良い人を捕まえてきて、と言ってくる。

そして明子さんに手を撫でられた。

俺は!?と思いながら明子さんを見る。

真帆は、もー!!!!!お母さん!!!!!私の彼氏を取ったら嫌だ!、と真帆が頬を思いっきり膨らませる。


「そうね。アハハ。冗談よ」


「.....全く。お母さん.....」


「お、おう。真帆。怒るな。俺はお前しか見てないし.....」


「.....本当に?何か怪しいなぁ.....」


ジト目で俺を見てくる真帆。

俺は慌てて、明子さん.....、と向く。

そんな明子さんは、真帆。御免なさい。私が悪かったわ。からかいすぎた、と言いながら真帆を見る。

真帆は、もー、と言いながらため息を吐く。

それから真帆はチョコを口をへの字にしてパリパリ食べた。


「.....まあ冗談は置いておいて。.....真帆と明子さんって本当に仲が良いですよね。仲が良い秘訣とかあるんですか?」


「私と真帆は.....まあ無いわよ?秘訣なんて。.....でももしかしたら真帆と仲が良いのは.....夫のお陰かもね。繋いでくれているのかもしれない絆を」


「.....そうなのですね」


「はい。.....だから夫が好きです。今でも」


「.....お母さんとお父さんみたいになりたい。いつまでも愛し合っている様な」


真帆が俺を見ながら柔和になる。

まるでチョコでも溶けそうなぐらいだ。

俺は真帆の笑顔を見ながら頬を掻く。

そうしていると明子さんが、ねえ。真帆。そろそろ貴方に渡しても良いかもしれないわ、と言ってくる。

それから何かを取り出した。


「.....これ何?お母さん」


「.....ネックレス。私とお父さんが選んで結婚式の時に着けていたものよ」


「.....え.....」


「私は全て貴方に譲るつもりだったけど。今のタイミングが良いかも知れないわ。貴方の素敵な彼氏も見せてもらったしね」


「.....お母さん.....」


真帆の後ろに立ってから。

そのまま帆の形の模様の真珠のネックレスを真帆に着ける。

ちょっと待て.....これって、と思うが。

真帆が衝撃を受けている。

そして.....涙を浮かべる。


「.....これって.....私の.....名前の形だよね」


「そうだな.....明子さん。どういう事ですか」


「.....私はずっと心に決めていたの。娘の名前は真帆が良いって。.....真実に揺れる帆。これは.....どういう所から取ったのかと言えば.....私のお母さんからヒントを得たわ」


「.....そう.....なんだ.....」


大粒の涙を浮かべながら流す真帆。

それも号泣する感じで、である。

俺は?を浮かべて真帆を見る。

真帆は、私のお婆ちゃんは親戚に借金を肩代わりさせられて逃げられて.....大変だったの。全部返済してから亡くなったけどそれは.....無念だっただろうな.....って、と言ってくる。


「.....そんなお婆ちゃんに恩返しがしたかったのもあった。.....それから.....お母さんの為にお父さんの為にアイドルになった.....そんな事も言えるんだ」


「.....そうだったんだな」


「幸せだなぁ.....私.....本当に幸せだなぁ.....」


涙を拭いながらだが.....でも。

その涙は止まらない。

俺はその姿を見ながら.....悲しげな顔になる。

すると明子さんが、でも、と言ってくる。


「.....貴方という人が出てから。.....気持ちが安定しているわ。真帆の心が。.....貴方は特効薬ね。.....本当に」


「.....そう。.....だから一生側に居てほしい。貴方だけが.....私の全てみたいな感じだしね」


「.....」


真帆と握手して約束した。

俺は.....そう思いながら真帆を見る。

真帆は涙を拭いながら俺に微笑む。

それから頭を撫でた。


「本当に色々あるな。この世界は」


「.....そうだね.....」


「乗り越えていけるわ。貴方達ならね」


明子さんが席に座りながら俺を見てくる。

そして俺はチョコを食べる。

本当に美味すぎるチョコだな.....、と思う。

それから俺は.....笑みを溢した。

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