第27話 真帆の家
「.....美味しいです.....」
「.....それはそうだろうな。真帆とアイナとアイナの姉が3人で作ったらしいから」
「正直言ってこういう物を.....受け取るのにも抵抗があります」
「.....?.....それはどういう意味だ」
ルナはマドレーヌだった中身を見ながら苦笑する。
俺はその姿を見ながら花梨と共に?を浮かべる。
するとルナは、どうしても.....受け取るのに抵抗があるんです。周りのみんなを心配事で無茶させているんじゃ無いかって、と答える。
「またそんな事を。そんな事は無い」
「我儘ですしね」
「.....」
俺はルナの額を弾いた。
人差し指で。
それからルナを真っ直ぐに見る。
ルナは涙目だった。
そんなルナを。
「お前の為を思って作っているって言った。だけどそれだけじゃ答えに不安定だろうから。.....もっと言うならお前が大切だって言ってた」
「.....え?」
「.....真帆もアイナもお前を大切に思ってんだよ。絶対にな」
きっとコイツは幼い頃からこんな感じだったからこんな感じなのだろうけど。
でも俺は心底の答えを言いたい。
俺は真っ直ぐにルナを見る。
ルナは涙を浮かべていた。
痛みじゃ無い涙を。
「有難う御座います」
「何度言わすんだか。.....大丈夫。お前は.....自信を持て」
「.....はい」
そしてルナと一緒にお菓子を食べてから。
そのまま夜になったので寝る事になる。
因みにルナは花梨の部屋で寝る事になった。
俺はそれを見ながらそのまま自室で寝る。
☆
翌日になった。
俺は真帆と約束していた通り。
真帆に家に来た。
それは真帆の実家だ。
俺は見上げながらインターフォンを鳴らす。
少しだけ古ぼけた家のドアが開いた。
「.....?.....貴方は.....」
目の前に少しだけ嗄れた声の奥さんが出て来た。
多分この人だな.....真帆の母親は。
考えながら頭を深々と下げる。
それから、始めまして。俺.....山口翼と言います、と挨拶すると。
驚きの声が上がった。
「山口.....くん。.....貴方が真帆の恋人の!」
「.....は、はい」
「.....こんな姿で出て来て申し訳無いけど.....私は進藤真帆の母親の進藤明子(しんどうあきこ)と言います。宜しくね」
「全然気にしません」
「.....真帆は今、お菓子を作っているわ。手が付けられないから私に出てって。.....是非入ってちょうだい」
「お邪魔します」
少しだけ元気が無い明子さん。
何か.....病気を抱えているのだろうか、と思いながら家に入ると。
襖が破れたりしていた。
少しだけ.....心配になる様子だ。
「.....御免なさいね。貧乏なのはまだ抜け出せて無いの。何かあったら言ってちょうだいね」
「.....やっぱりアイドルってのは.....」
「.....そうね。私もそうだったけど儲かるとは限らないわ。例えばセンターであっても.....有名であっても。作詞家じゃ無いんだから。.....それに才能が無ければ使い捨てにされる世界.....御免なさい。いきなり」
「いえ。.....勉強したんです。アイドルの事に関して.....世界を」
あら。そうなのね、と言ってくる明子さん。
俺は頷きながら、俺は.....彼女の事をもっと知りたいんです、と答える。
すると明子さんは見開きながら、そう、と笑みを浮かべた。
それから明子さんを見ていると襖が開く。
そして真帆が顔を見せた。
「.....あ。ようこそ!翼くん」
「ああ。真帆。今日は招待有難うな」
「うん。だって.....チョコも渡したいしね」
「そうか。有難うな」
それから真帆を見ていると。
明子さんが、良かったわね。真帆。貴方を大切にしてくれる人が.....現れて、と言いながら俺を見てくる。
真帆は赤くなりながら、大切な人だから、と答える。
「.....有難う。お母さん。外に出てくれて」
「良いのよ。貴方の大切な人にいち早く会いたかったわ」
「.....うん」
「.....仲が良いな。真帆」
「大切な母親だからね」
真帆は笑顔を浮かべながら俺を見てくる。
俺はその笑みを見ながら目線を逸らしてから室内を見る。
すると.....目の前に真帆の父親の写真があり。
そして真帆の母親の写真があった。
若かりし頃の写真の様だが。
「.....あらやだ。恥ずかしいわね」
「確か.....アイドルだったんですよね?明子さんは」
「そうね。.....まあ今から20年近く前の話よ。アハハ」
「.....真帆さんをアイドルにしたのはそれが理由ですか?」
「私が勧めたんじゃないわ。.....小さい頃から真帆がなりたいって言ったの」
「そうなんですね」
そうだね、と笑顔を浮かべる真帆。
それから素晴らしい人に出会った、と赤くなる。
俺はその言葉に赤面しながら見ていると。
真帆は、私は貴方に出逢う為にアイドルをやっていたのかも知れない、と言いながら柔和になった。
「.....いやいや。言い過ぎだろ真帆」
「いや。冗談とかじゃ無いよ。本当にね」
「.....ラブラブね。.....貴方達。.....まるで夫の様だわ」
「.....旦那様の事は少しだけ伺っています」
「あらやだ!!!!!真帆が話したのかしら?」
「うん。逃避行したって事も」
何を話しているの真帆!、と真っ赤になる明子さん。
俺たちは見合ってから笑顔になる。
そして旦那さんの写真を見ていると。
明子さんが、私の夫に挨拶してくれないかしら、と言ってくる。
「.....小さい仏壇だけどね。.....それしか買えなかったから」
「.....はい。是非ともお会いしたいです」
そして俺は仏壇を開けてもらい。
目の前の眼鏡を掛けた柔和な顔の男性を見る。
幼い真帆を抱えて笑顔を浮かべていた。
そうか.....真帆は.....この時から性格の良い少女だったんだな、と思う。
「.....」
「.....翼くん?」
「お前の幼い姿を見れて幸せだ。可愛いな」
「もー。恥ずかしいよ」
「.....ハハッ」
それにしても何処となく夫に似ているわ、と言ってくる明子さん。
俺は?を浮かべて明子さんを見る。
明子さんは、私の夫に似ているのよ。貴方の瞳も、と言ってくる。
俺は赤くなる。
「そうだね。お母さん。確かに」
「黒子の位置とか.....」
「止めて下さい!?」
恥ずかしくなってきた。
俺は大慌てで見ていると。
明子さんがクスクスと笑った。
そして俺達を見てくる。
「.....それにしても.....風の噂で聞いたけどキスしたのかしら?貴方達」
「.....ファ!?」
「お、お母さん!?」
「それはまあ嘘だけど.....あら。したのね」
いやいや引っ掛けかーい!
俺達はその場で崩れる。
それから明子さんを見る。
明子さんは、まあ冗談よ。.....でもやり過ぎない様にね、貴方達はまだ未成年よ。心も身体も大切に、と言ってくる。
「いやちょっと待って!?それは決まっているでしょ!?お母さん」
「なら良いけど。.....じゃあ挨拶しましょうか」
「.....はい」
そして3人並んでから真帆の親父さんの秀明(ひであき)さんに挨拶をする。
それから手を合わせた。
そうして.....俺は静かに祈りを込める。
俺の泉に真帆が祈りを込めてやってくれた様に。
大切に思いながら、だ。
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