第25話 ルナの家出

泉は最後に俺にとても大切な物を託した。

何というか.....泉なりの婚約指輪だ。

おもちゃだけど俺にとっちゃあまりに十分過ぎる代物だった。

その.....婚約指輪を花梨にも見せたが。

花梨も涙を流していた。


「.....」


そしてその日の夜の事。

俺は机に突っ伏してから.....空色の便箋を見ながら。

婚約指輪を見ていた。

0917.....か.....。

泉もそれなりに考えていたんだな.....、と。


「泉。俺はお前より頭が良く無いから.....簡単なものにしてくれても良かったんだぞ。シリンダーの番号。.....ハハハ」


俺は涙を浮かべながら涙を拭う。

それから.....窓から空を見上げてみる。

そこには満月の月が浮かび上がっていた。

そうして見ていると。

インターフォンが鳴った。


「?.....19時だぞ。誰だ?」


丁度この窓からは外が見渡せる。

下の方とか、だ。

俺は見渡してみると.....そこにルナが立っている。

見開きながら俺は階段を降りると既にもう花梨が対応していた。


「ルナちゃん?どうしたの?」


「.....こんばんは。.....その。お願いがあって来ました」


「.....お願いって何だ?ルナ」


「.....私をこの家に匿ってくれませんか」


「うん.....は!?!?!」


ルナは涙を浮かべながら、お父さんが家とかに帰って来て.....それも半年ぶりぐらいに。それは大喧嘩になりました。私.....わがままなんですけど.....家に帰りたく無いです、と言ってくる。

いやしかし.....そうは言っても.....。

1週間だけで良いです、泊めて下さい、と言ってくるルナ。


「でも親御さんの許可は.....」


「.....そうだね。ルナさん。無理だと思う。.....貴方のお父さんの許可も貰わないと」


真面目な話だ。

未成年を泊める訳にもいかないだろ。

年頃の女の子が居るとはいえ、だ。

俺達はそう言っていると。

ルナは涙を浮かべた。


「.....許可は貰いました。出て行け、だそうなので」


「.....!.....マジか.....信じられない父親だな.....」


「私は何で.....こんな目に遭っているんでしょう?私は.....楽しみたいだけなのに。アイドル活動を.....真帆と一緒に。仲間と一緒に」


号泣するルナ。

俺はその姿を見ながら眉を顰める。

そして花梨を見る。

でもお兄ちゃん。許可を貰っているそうだし.....、と見てくる。

俺は、後は俺らの家族だよな.....、と思う。


「.....ルナ。お前の事情は分かった。取り敢えず何とかする」


「.....はい.....有難う御座います.....」


「.....」


ルナは深々と頭を下げる。

そして俺は早速と母さんと父さんに問い合わせる。

すると許可が降りた。


放牧的な感じの親父とお袋で本当に助かったな.....。

俺は考えながらルナにその事を言ってから。

そのまま1週間限定の.....共同生活が始まった。

ルナは早速とお世話になる様な準備をする。

洗濯の準備とか家事の準備とかを。



「私.....何というか料理はポンコツですけど.....洗濯とかは出来ます」


「そうなんだな」


「はい。お手伝いさせてもらいます」


ルナは言いながら腕まくりをする。

それからその細い腕を見ると打撲傷があった。


かなり深い傷だ。

何だこれは、と思いながら見ていると。

ルナが傷を見てから苦笑した。


「.....あ。これレッスン中の傷です」


「.....それって本当か?嘘だよな?」


「お兄ちゃん.....」


「.....まあ嘘ですね。.....簡単に言えばお父さんから殴られました」


「それはつまりアイドルとして上手く練習しないからとかか」


「そうですね。.....私はアイドルの中でも落ちこぼれなので.....」


そして涙を浮かべるルナを花梨が抱き締めた。

それから頭を撫でる。

俺はその姿を見ながら居ると電話が掛かってきた。

それは.....真帆だ。

俺は?を浮かべて電話に出てみる。


「もしもし?」


『.....翼くん。ルナちゃん.....そこに居る?』


「.....そうだな。ビンゴだ」


『ルナちゃんの事.....宜しく。社長が激怒っていうか怒っているから。このままじゃまた.....ルナちゃんに暴力振るうと思う』


「.....最早、父親とは思えんな.....」


『私達も相当に悩んでいるよ。.....ルナが可哀想って』


「.....」


父親のやるべき事では無いと思うが。

成長期が乱れたらどうする気なのだろうか。

俺は考えながら.....唇を噛む。

そうしていると、私も明日行くから。メンバーが代わり代わりにお世話する予定だよ、と言ってくる。


『確執って大変だね.....本当に』


「.....そうだな。......俺としては腹立たしいの一言しか無いが」


『私みたいに恵まれている人間関係もあっても.....こういうのもある。.....酷いよね』


「俺も恵まれていると思う。.....だけどルナは.....違うもんな」


『.....だね』


そしてルナ達を見ると。

洗濯物を畳みながら笑みを浮かべていた。

俺はその姿に一安心しながら、真帆。俺がいつか.....社長さんと話す機会があるかな、と言ってみる。

すると真帆は驚愕していた。


『.....え?それってどういう.....』


「このままでは終わらせられない。お前の仲間が苦しんでいるんだからな」


『そこまで.....翼くん。.....しないで良いよ?私達が.....』


「まあルナは俺の仲間だからな」


『.....!.....相変わらずだね。.....翼くんは』


そして真帆は、分かった。いつか.....話す機会を設けたりするね、と話してくる。

俺は、頼む、と言いつつ挨拶して電話を切る。

それから.....2人を見る。

2人は丁度畳み終えた所だった。


「.....お兄ちゃん。真帆さんはなんて?」


「俺が社長さんと会いたいって言ったら.....いつかは会えるとしてくれた。そんな感じの会話だったんだが」


「.....!.....翼さん.....」


「このままでは許せないしな。.....泉ならきっとこうするだろうから」


「もー.....全くもう.....本当にお兄ちゃんは変わらずだよね。優しいのも.....人の為に動くのもね。うん。やり過ぎだと思うけど」


「.....俺が泉から影響受けたからな」


俺はそう答える。

苦笑いを浮かべながら俺を見てくる花梨。

俺はその姿を見ながら苦笑する。

いつか。


もしいつか緑陽社長に会えたら。

文句をぶち撒けてやる。

そう考えながら俺は.....決意した。

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