第24話 大切な人への最後の手紙
放課後。
俺は、大切な人の大切なものを一緒に探したい、と言う真帆と一緒に管理者さんの方に許可を貰って公園の一部の木々の生えている場所を掘り返していた。
あくまでカンだがここに確か泉は何かを埋めていた気がする。
失った大切な物を探したい、という事でこの公園の管理者さんに許可申請したら管理者さんはおばちゃんだったのだが。
直ぐに、良かよ、と微笑んで返事をしてくれて笑みを浮かべてくれた。
俺はその姿にただひたすらに感謝しか無く。
そのままご丁寧に何とスコップまで貸してくれた管理者さんの方には本当に頭が上がらないのだが。
園芸用のスコップで断片的な記憶を辿りに掘り返す。
そして信じられない事に.....カンが一発で的中して見つけた。
煎餅の缶の様なものが30センチぐらいの深さに埋まっている。
錆だらけで埋もれている。
俺と真帆は顔を見合わせて、これだな、と納得した。
多分違うものとは思えない。
公園にこんなものだしな。
「泉さん.....こんな物を埋めてくれていたんだね」
「アイツの事だ。きっと居なくなっても俺が寂しがらない様にって埋めてくれていたんだろうな.....。俺はそう思うが.....まあ違う意図もあるかもだが」
10年ぐらいの時が経ったが。
それでも変わらずして埋もれていた。
俺は筒の様な缶を軍手を外した泥だらけの手で取り出してから缶を見つめる。
そのままゴクリと唾を飲み込み中を.....開けようとした時。
真帆が手を添えてきた。
そして、一緒に開けて良い?、と尋ねてくる。
俺は!と思いながらも、そうだな、と返事をする。
それから笑みを浮かべ合ってから.....一緒に手を添えてパカリと音を上げて缶を開けて見たのだが。
「.....これ.....」
「?.....何だこれは」
そこに入っていたのは。
シリンダーの付いた小さな水色の5センチぐらいの大きさのボックスだった。
俺は???と首を傾げる。
何だこれは.....というかこの鍵。
シリンダーって.....4桁?
「.....え?中.....鍵が掛かってる?」
「.....4桁?どういう事だ.....ちょっと待ってくれ.....泉。これどうやって.....開けるんだよ.....!?」
マジに悩みながら思っていると筒の中の奥の方に古ぼけたボロい紙が入っている。
俺は!?と思いながら紙を持ってみる。
そして.....風化している紙を開くと。
そこにはこう書かれていた。
(暗号は大切な人の名前の漢字の揃った画数と他の人の画数)
「.....画数.....?」
「.....画数って.....名前の?翼くんなのかな?.....別の画数って.....」
「俺?.....じゃあ他のは.....」
「.....ヒントが欲しいな.....」
顎に手を添えて、うーん、と悩む真帆。
俺の名前の画数?
ちょっと待てそれって『翼』って事か?
そしてもう一つは.....どの人だ?!
うーん、と思いながら俺は悩みつつスマホで直ぐに調べる。
そこには翼の全ての総画数を合計すると17になった。
でも17?.....それじゃ意味が無いよな。
他の人の名前の画数.....か。
「.....うーん.....困った」
「ねえ。翼くん。.....画数の残りは泉さんじゃ無いかな。あと一つ」
「それはどうなんだろう。そんなはっきり残すかな。アイツが大切な痕跡を」
「でもやってみようよ。.....総画数は17だよね?」
「.....ああ。総画数は9だな。泉は。09になると思う」
「じゃあ繋いでみて0917じゃないかな.....多分」
俺は悩む。
そんな単純な計算.....、と思ったが。
そこでハッとする。
09月17日
つまり.....泉が入院した日である。
まさか。
そんな馬鹿な.....。
「.....何やってんだよアイツは.....」
俺はじわっと涙を浮かべて親指でゆっくりシリンダーを動かす。
そして0917と入力した。
見事にビンゴだ。
鍵が思いっきり外れた。
錆びていたが最も簡単に外れてしまう。
「.....真帆。有難う。お前の言葉、正解だったよ」
「私は何もしてないよ。.....ね?翼くん」
「いや。でもお前が側に居たからこういうのが解けた。謎解きがな」
「.....!.....うん」
真帆も涙声になっている。
俺はその声に涙を拭いながら中を開ける。
水色の箱を、だ。
そして中を見ると.....おもちゃの指輪が2つ入っていた。
有名メーカーの婚約指輪型のおもちゃ。
それから紙が。
いや、手紙が入っていた。
さっきのボロ紙とはえらく違う。
雲、青空。
空色の便箋だ。
俺はハッとする。
まさか.....このボックスの色。
そして空色の手紙.....。
「翼と.....泉って事かな。水の色と空の色」
「.....クソ!.....そうか.....涙が止まらない.....」
思いながら便箋を開ける。
そして読んでみる。
そこにはこう書かれていた。
6歳の文章で.....だが。
翼へ、から始まった。
(翼へ。6つになった私達は何をしているでしょうか。まあいつも通りだと思うけどね。私ね。将来、翼と結婚するのが夢だった。でもその夢は叶いそうに無いです。パパママが何時も泣いているから。だから私は前を見て全てを貴方といつか出会うと思うお嫁さんの為に指輪を代わりに置いておきます。私からの最後のプレゼント。貴方は貴方なりの幸せを見つけてね。泉より)
「泉さんって将来を見据えて.....」
何でこんな.....。
涙を流しながら口元に手を添える真帆の声を聞きながら震える俺。
この馬鹿野郎.....もしお前以外を愛して無かったらどうする気だった。
俺は考えながら涙を拭う。
嗚咽が漏れた。
「何だよこれ.....マジに何なんだよ.....」
「.....泉さん.....本当にしっかり者だね。翼くん」
「.....そうだな.....」
最後に泉が遺した手紙を折れ曲がらない様にゆっくり便箋の封筒に直す。
泉.....お前はやっぱり俺を愛していたんだな。
心から.....愛していたんだな。
有難うな。
お前に出会えて心底幸せだわ、俺、と思う。
マジに全てが幸せだ。
「.....ねえ。翼くん」
「何だ?真帆」
「.....もし良かったらだけど.....この指輪。.....私達の結婚式.....というかまあ撮影会だけどね。.....それで使おうよ」
「.....!.....真帆.....」
俺は涙を拭いながら真帆を見る。
真帆は笑みを浮かべて柔和に俺を見ていた。
そして俺はその姿を見ながら頷く。
俺は少しだけ恥じらいながら。
それから俺達は穴を通行人とか利用者の邪魔にならない様に元に戻し。
そうしてから管理人さんに頭を下げて返して挨拶をしてから。
泥だらけになった俺と真帆は帰る。
管理人さんは最後にこう言ってくれた。
『大切なものは見つかったかしら?』
と。
俺達は見つめ合い。
そして頷いて前を見据える。
それから笑みを浮かべた。
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