第23話 栗谷泉が最後に遺したもの

「翼くんは.....どういう感じで巡り会ったの?.....泉さんに」


「.....俺が泉と出会ったのは.....4歳の時だよ」


「そうなんだね.....2年ぐらいしか居られなかったって事だよね。一緒に」


「.....結論から言えばそうなるな」


俺は真帆と屋上でサボっているのがバレない様に配管に座って隠れながらそう笑顔で会話する。

お互いに手を繋いで、だ。

そして真剣な顔になる真帆。

俺に向いてきた。


「.....私ね。.....翼くんを絶対に幸せにしてみせる。.....それから絶対に後悔させない人生を送ろう。一緒に」


「ああ。お前の何時迄も一緒だっていうその想いは.....俺の胸にある。.....有難うな」


「うん。絶対に後悔させないし.....私が居る事が.....少しだけでも泉さんが安心する事になると思うから」


「.....真帆.....」


「翼くん。私は君と一緒だよ。何時迄も。お爺さんとお婆さんになって死ぬ時も一緒だから」


「.....そしたら泉に報告したいな。俺は」


うん。そうしてくれると嬉しいかも、と言う真帆。

俺は笑顔を浮かべるその姿を見ながら笑みを浮かべた。

そして.....手を繋いだまま空を見上げる。

今日の空はさっきまで曇り空だったけど.....良い空だ。

今は晴れ渡っている。


「泉さんとの出会いは.....本当に運命的だったんだね」


「.....そうだな。2年しか一緒に居なかったけど。俺は泉が最終的に好きだった。泉も結局は俺が好きだった。.....相思相愛になった。だけど泉は心臓麻痺で死んだ。これは.....本当にショックだった.....」


「.....!.....翼くん.....」


「.....あれ?涙が.....」


俺の目の前が歪んでいる。

そして涙が頬を伝った。

そうか.....俺は.....会いたいんだな。

仮にも泉に。

もう一度.....会いたいんだ。


「大丈夫だから.....翼くん」


「.....俺.....馬鹿だな。彼女居るのに。情けない姿を.....」


「.....うん。彼女が居るから何?.....泣かないの?.....そんなのおかしいよ。翼くん」


「.....え?」


「私が居るからこそ泣いてほしい。号泣してほしい。この胸が.....全部受け止めるから」


「.....お前は.....相変わらずだな。真帆。有難う」


涙を真帆から渡されたハンカチで拭う俺。

そして笑みを浮かべていると屋上のドアが開いた。

それから、この辺りに居るか?、とか声がしてくる。

やべぇ。先生が探しに来た.....!?


「ま、マズイね。隠れないと」


「そ、そうだな。よし。配管の間に隠れるか」


そして俺は真帆を押し倒す感じで.....隠れた。

すると生徒指導室の先生が、居ないですね、とか言いながら周りを見渡す。

俺達は息を潜める様にしながら様子を伺う。

すると真帆が、ねえ。翼くん、と言ってくる。

何だ?


「.....ちょっと近付いて」


「.....え?」


それから真帆は俺の唇に唇を押し当てる。

そして笑みを浮かべる。

えへへ。こういうのドキドキする、と言いながら。

おいコラ!?

こ、コイツという奴は!?


「真帆!キスしている場合か!」


「でも何だかドキドキする。翼くんの顔が近いし」


「.....そうだけどな.....やり過ぎだ」


「アハハ。御免なさい」


それから俺達は様子を伺うが。

生徒指導室の先生は諦めた様に捜索を断念した。

そして、此処は違う様です、と去って行く。

俺はその姿を見ながらマホを起き上がらせた。


「.....あー。ドキドキした」


「そうだな。お前がキスをするからもっとドキドキしたわ」


「.....えへへ。良いじゃん。恋人同士だしね」


「先生が居る前ですな!?」


「アッハッハ」


そしてまた配管に腰掛ける。

それから俺は真帆を見てみる。

真帆は埃を払いながら、翼くん、と言ってくる。

俺は、どうした?、と聞く。

私また行きたい、と言い出した。


「.....泉さんのお家に。そして今度こそ.....泉さんのお墓参りしたいな」


「.....!.....そうだな。この前は疲れてたもんな。分かった」


「何なら泉さんの足跡を辿りたいかも」


「.....!」


「何処かその。2年間で一緒に遊んだ場所とか.....無い?」


「公園で遊んだ事が.....あ.....る?」


そう言えば泉は.....何か埋めていた気がする。

確か入院する前の事だけど。

そしてそれは入院とかのドタバタで俺は忘れていた。

泉が変な動きをしていたがそれを教えてくれなかったのだ。


「.....そうだ。泉は何か埋めていた感じだ。公園に」


「え?それって今まで何で忘れていたの?」


「.....いや。ずっと何か.....忘れていたな。.....堀りに行かないと」


「.....!.....そうだね。あ。その作業.....一緒にやって良い?」


「え?良いけど泥まみれになるぞ」


「.....翼くんの彼女だよ?気にしないもん」


そうか、と思いながら俺は真帆を見る。

そして俺達は放課後に.....公園に行って、埋めた?、と思われる泉の物を掘り返しに向かう事にした。

もしかしたら見間違いかも知れないけど。

でも何か.....気になる。

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