第22話 結婚式の練習.....とサボり

「え?アイナちゃんの誕生日.....祝うのカノンさんの家になったの?」


「そうだな。.....何か俺まで呼ばれているけどな」


「そうなんだ.....でもそれも良いかもね。.....緑陽さんの所は.....駄目だろうし」


真帆は言いながら静かに沈黙する。

俺達は屋上で真帆の作ってきたお弁当を食べている。

俺はその姿を見ながら、大丈夫か、と尋ねる。

すると真帆は、何だかね。.....緑陽さんもマネージャーも良い人だったら良いんだけど.....なかなか上手くいかないよね、と言う。


「俺としては.....マネージャーのせいじゃ無いと思う。多分.....マネージャーの上が何か言っているんじゃ無いかな」


「.....そうだね。マネージャーも色々あるから」


「.....だろ?.....だったら多分.....上からの指示なんだろうな。あの性格とか」


「うん。きっと.....そうだよね」


そんな感じで会話する。

そしてマネージャーの事とかを話した。

途中で真帆は、取り敢えずマネージャーの事は置いて、と笑みを浮かべる。

それから、有難うね、と言ってくる。

俺は?を浮かべて真帆を見た。


「.....何がだ?」


「私の思いも。みんなの思いも尊重してくれて嬉しいんだ」


「.....尊重.....か。.....そう思ってくれて嬉しいよ。俺はやってきて良かったなって思う」


「私は.....貴方に対して本当に感謝しかない。貴方に出逢ってからの日々は.....本当にキラキラ光っているよ。楽しい日々を有難うね」


「お前.....」


あの日.....君が私を助けた時から。

世界が広がった様な感じがしたからね。

と笑顔を浮かべながら真帆は俺を見てくる。

俺はその姿を見ながら少しだけ恥じらう。

それから真帆を見る。


「.....そういえば今日のお弁当はどう?」


「そうだな。美味しい。とっても美味しいよ」


「.....そっか。良かった。とっても嬉しいな」


「そう言えば何というかお前の腕が段々と上がっていっている気がするんだが」


「そうだねぇ。ずっと練習しているから。愛故に.....愛情でね」


「.....!.....成程.....いやまあ恥ずかしいけどな」


俺は真っ赤になりながら真帆を見る。

真帆は柔和になりながら俺の手を握ってくる。

そして笑顔を浮かべた。

肩に寄り添ってくる。


「.....こんなに変わるもんなんだね。君に出逢っただけで世界は」


「俺もお前に出逢ってから何もかもが変わったよ。.....だって.....お前は泉もみんなを大切にしてくれる。愛してくれる。それがどれだけ幸せな事かだよな」


「当たり前だよね。彼女としては.....何もかもを大切にして共有したいから。だから貴方を愛しているし周りも愛するよ」


「.....そうか」


それから俺は真帆の頭を撫でる。

すると.....真帆は甘える様に擦り寄って来た。

これは何か相当に恥ずかし.....い、と思っていると。

真帆が俺を見上げてきた。

それからジッと見据えてくる。


「.....その。今度の結婚式の為の練習.....しよっか」


「.....な、何の練習かな?」


「.....キス」


「ばぁ!?」


「良い雰囲気だしね。今日は晴れている。.....どうかな」


「.....うぐ.....そ、そうだな.....」


俺は頬を掻きながら真帆を見る。

真帆は俺を見ながら真剣な顔をする。

そしてほんのり赤くなって目を閉じた。

所謂、例の顔である。


その姿にボッと俺は赤面する。

だが逃げたらダメだな、と思い。

俺は肩を掴んだ。

そして周りを見渡してから。

そのまま真帆の唇に自分の唇を合わせた。


「.....」


「.....」


不思議なものだなって思う。

だって.....その。

こんだけ弁当とか食っているのに。

存在しない食材の味がする。


どんな味かってそれは.....桃の味がする。

おかしいだろこれは。

心臓が飛び出そうだ胸から。


「.....えへへ。とても.....とても幸せ」


「.....お前.....お前.....」


「.....あ。そうだ」


「え?」


そして俺の頬を両端から握る。

それからそのまま唇を合わせてくる。

俺は!!!!?と思いながら真帆を見る。

真帆は、お互いの一歩でこういうのをしとかないと。恋人だし、という感じで真帆はたくさんの笑みを浮かべる。


「.....恥ずかしいな。本当に」


「私だって恥ずかしいよ流石に。.....でもとても.....柔らかいね。君の唇は」


「.....それ俺のセリフだけどな」


「男の子が言うの?普通」


「分からんけど!?」


そんな感じで俺達は顔を見合わせる。

そしてクスクスと笑ってから。

そのまま見合った。

そして手を合わせ合う。


「.....何て幸せなんだろうね。私は本当に」


「お前が経験してきた苦い思いを.....俺も分かち合えればと思う。.....今度お前の母親に会うからな」


「.....チョコレートもね」


「.....もっともっと想い出を作っていこう。築いていこうな」


「そうだね。うん」


そして俺達は笑みを浮かべ合った。

するとキーンコーンカーンコーンと聞こえ.....あぁぇ!?

俺は大慌てで弁当箱を片付ける。


それから時計を見ると時間だ。

何てこった!?、と思ったのだが真帆が落ち着いている。

ん?!


「.....ねえ。翼くん」


「.....な、何だ?そんなに迫って」


「い、今から私と.....サボらない?」


「へ!?」


赤くなりながら俺を潤んだ瞳で見上げてくる真帆。

ダメ?、と言いながら.....だが。

俺は唇を噛んでから、う、うむ、と返事をしてしまった。


そして屋上でサボりが.....始まってしまったのであるが.....。

デートみたいな.....良いのかこれ?

しまったな俺.....真帆の甘い言葉に誘惑されてしまった。

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