第21話 アイドルという存在
月曜日になったのだが。
俺は.....俺を呼び出してきたアイナとカノンさんと一緒に屋上に居た。
カノンさんが苦笑しながら、すまなかったな、と言う。
そしてアイナも、その、不愉快だったよね、と話してくる。
俺はハッとする。
「ルナの事だったら.....大丈夫です。.....俺達が守るって決めましたから」
「.....ふむ?.....守るとは?」
「たまにご飯を一緒に食べる事にしました」
「.....!.....そうなんだな。君は本当に優しいな。翼。君のその思いは永遠ものだ」
「そうですね。.....何だか守ってやらないといけないと思っています」
そして俺は校庭の方を見渡す。
その様子にアイナは、貴方をルナは攻撃したのに。.....それでも守ってやるんだ?、と聞いてくる。
俺は、ああ。そうだな、と返事をする。
それから真っ直ぐに2人を見る。
「ルナは寂しいんだと思うから」
「.....そうか。確かにそうだが.....それに同じで君は.....気持ちが分かるんだな。ルナの痛みなどを」
「そうですね。この痛みは違うものかも知れませんが。守ってやりたいんです」
「.....相変わらず優し過ぎると思うけどねぇ」
「そうは思わないけどな」
そして俺達はクスクスと笑う。
それから.....空を見上げる。
曇り空だな、と思う。
間も無く制服も変わるしな.....。
それに体育大会もあるし.....青春を楽しもう。
考えながら俺は笑みを浮かべた。
「そうだ。体育大会.....終わった後の話だけど」
「.....?.....どうした?アイナ」
「実は.....私が誕生日なんだ。それで.....翼っちを招いて緑陽プロダクションの空室でパーティーしたいんだ」
「無茶だろ。俺があんな場所に行けるか!?」
「大丈夫だよ。社長は私が説得するから」
ウインクするアイナ。
しかしなぁ、と思うのだが。
緑陽大輔本人が許すとは思えない。
考えながら居ると流石のカノンさんも、それは無理だな、と言った。
「.....いや。翼が入れないとかの問題じゃない。.....社長はかなり翼を睨んでいるから。.....だからそういう意味で却下だろうな」
「.....うーん。ですかねぇ.....」
「そうだな。だから代わりに私の家に来ないか。君達」
「.....え?カノンさんの家ですか?」
「私の家は少しだけ広いからな。だから来てもらっても問題は無いと思う」
「そうなんですね。.....どうする?アイナ」
じゃあそれで!、と言うアイナ。
俺はそんな.....アイナに聞いてみた。
お前ってカノンさんの家に行った事無いの?、と。
するとアイナは、そうだね、と苦笑い。
そして、アイドルってそんなもんじゃないかな、と言う。
「仕事上の付き合いがあれば。こういう付き合いもある。そんなもんでしょ」
「.....まあ確かにな.....そう言われたらそうかも知れない」
「まあ私達は仮にも.....それ以上の付き合いはあるけどな」
「.....」
俺は顎に手を添える。
そして、そんなもんなんだな、と答える。
アイナは、うん。大体仲が良くない関係のアイドル達が多いかもね。ただそれは私が思っているだけかもだけど、と話す。
「それだけの蹴落とす様な姿を見てきたから」
「.....?」
アイナは伏せ目がちで答える。
俺はその姿を見ながらカノンさんを見る。
カノンさんは、まあ確かにな、と答えながら。
俺を見てくる。
「今まで出会ったアイドル達はみんなそうだったからな。アイナ」
「.....そうなんですね?」
「そうそう。カノンさん。.....だから翼っち。5人全員がマジな家族みたいとか普通はあり得ないからねぇ」
「アイドル業界の事は詳しくは無いが.....そうなんだな」
「.....ああ」
カノンさんは難しい顔をする。
そしてカノンさんは、君はかつて有名だった私達と同じ様な不死鳥(ファイヤーバード)というアイドルグループを知っているかね、と言ってくる。
俺は、3人グループだったんですよね。名前を聞いた事だけは、と答える。
するとカノンさんは、最近、空中分解したがまさにそのチームがそうだった。関係性が仲良く見えて中では仲間同士を蹴落とす様な感じだったんだ、と言ってくる。
「自分だけが成り上がれれば良い。そんな感じの裏が透けたんだ。.....だからまあ.....それが分かってしまった瞬間に空中分解したが」
「.....そうなんですね」
「私達の関係性は至極稀な存在だよ。翼っち」
「.....そうなんだな.....」
俺は難しい顔をする。
そうか.....アイドルってのは難しいんだな。
それこそライバル視が生まれるって事か.....。
俺は考えながら2人を見る。
すると、まあこんな難しい話をしていても仕方が無いな、と答える。
「とにかく。楽しませてもらうよ。君の関係性は。そしてアイナ。誕生日を盛大に祝おうな」
「有難うです」
「.....」
そしてそのまま解散する俺達。
するとカノンさんを手を大きく振って見送ってからアイナが直ぐに俺に向いてきた。
翼っち、と真剣な顔で言いながら。
何だ?
「カノンさんを思いっきり楽しませよう」
「.....?.....どういう意味だ?」
「.....カノンさん.....最近.....仕事のせいかかなり鬱っぽいんだ。.....だから楽しませたい。心から.....お願い」
「.....!.....そうなんだな。.....お前も大概の優しさだな。アイナ。.....分かった。楽しませよう。.....それはいかん」
サンキューベリマッチ、とウインクして言うアイナ。
俺は少しだけ眉を顰めながら、ああ、と答える。
そうなんだな.....鬱っぽいのか.....。
何だか心に引っ掛かりながらもそう答えてから。
そのまま俺達も戻る事にした。
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