第19話 唯一の光
「私は貴方にもう真帆を会わせたくない」
そんな事をいきなり自宅に来た少女に言われた。
俺は?を浮かべながら少女を見る。
花梨も不愉快そうに少女を見ていた。
目の前には黒髪のボブ。
それから凛とした感じの顔立ちの少女が居る。
この子の名前は緑陽ルナというらしいが。
緑陽ってどっかで聞いた様な?
「緑陽に関係する何かなの。.....ルナちゃん」
「私は緑陽大輔(りょくようだいすけ)の娘です。緑陽プロダクションの社長です」
「.....お前.....成程.....」
俺は衝撃を受けながらルナを見る。
ルナは眉を顰めながら俺を見てきた。
不愉快そうな顔をしている。
花梨に負けず劣らずに。
「貴方は危険すぎるんです。私達の関係を滅茶苦茶にする」
「滅茶苦茶とはどういう意味だ」
「.....お父さんは.....真帆さんに離れてほしく無いんです」
「.....要は金目当てとかか?親父さんが関係しているんだな?」
「.....うぐ.....そ、そうです」
何だコイツ怪しいな。
俺は首を傾げながら追及する。
もし、だが、と言いながら。
そして思いっきりルナを睨む。
「俺はお前に反論したい事が山程有るんだが。.....真帆を今直ぐに渡せ。じゃないとお前の事を言うぞアイナとかに」
「.....うぐ.....」
ルナは.....顔を歪めながらあたふたした感じで俺を見てくる。
俺はずっとキツく睨みを効かせる。
すると背後から声がした。
ルナ、と。
「真帆さん?」
花梨が言う。
門の所に真帆が立っていた。
そしてコチラをしっかりと見据えている。
俺は首を傾げて真帆を見る。
ルナは、真帆.....、と声を出す。
「ルナ。もう止めなさい。私は貴方のおもちゃじゃ無いんだから」
「.....おもちゃ?」
「.....花梨ちゃん。.....私の事をルナは大切に思っているの。.....母親みたいにね。だから唯一の大切を取られたく無いんだ。.....それで私を事務所に閉じ込めたの」
「そういう事か。お前は金目当てとかじゃなくてただ単に真帆を取られたくなかったんだな.....」
そしてその言葉にウルウルと目を濡らしてわんわんと号泣し始めたルナ。
俺は!?と思いながら。
それから真帆と花梨も!?と驚愕する。
その姿を確認しながらルナを見た。
「私は.....真帆が居なくなるのが耐え難いから.....真帆が全てだから取られちゃうから.....!」
このパターンは以前見た気がする。
しかし.....今度は違う。
真帆が好きなんだなコイツ、と思う。
それから俺はルナを見つめる。
そうしていると真帆がルナを抱き締めた。
「居なくなる訳じゃ無いからルナ。芸能界から引退したとしても.....貴方とは一緒に繋がっているから。翼くんは全部に配慮してくれるから。.....だから大丈夫。私は貴方の事も愛している。心から」
「.....真帆.....」
「まあ.....そういう事だよ。だから真帆を独り占めとかしないから。.....ルナ」
「.....分かった。.....私は.....心配しない」
そしてルナはグスグスと涙を拭いながら号泣するのを止めた。
それから笑みを浮かべて真帆を見る。
そうしてから俺を見てきた。
真剣な顔で、だ。
「山口さん。すいませんでした。.....私は.....御免なさい。偉そうになってしまいました。.....私は.....」
「そうだな。.....でも大丈夫だ。.....お前に由奈が似ているからな」
「.....そうですね。似たもの同士だと思います。.....でも由奈より愚かだったかも知れませんね。.....でもそれでも本当に真帆が好きですから」
「.....」
コイツらの事は何も分からない。
絆が、であるが。
でもそれでも俺はコイツらの事も分かりたいって思う。
心からだが.....。
「翼くん。ゴメンね。本当に迷惑ばかり」
「.....当たり前の事だと思う。.....独占したいのは」
「そうだよね。.....私もそう思う。彼氏が出来たらきっと周りが嫉妬するから」
「そうだな.....俺はお前に彼氏出来たら死ぬ」
「このシスコン」
そんな感じで笑う俺達。
そしてルナもようやっと笑ってくれた。
そうだな.....まあ取り敢えずはこれで良かった気がする。
俺は考えながら顎に手を添える。
「そうだね。真帆。これなら安心かも」
「そうでしょ?.....翼くんは.....本当に良い人だから」
「俺はまあそんなに良い人に見えないけどな。自分自身では」
「良い人だって。お兄ちゃんは」
何でそんな感じになるのよ、と言ってくる花梨。
俺は、何となく自信が持てなくてな、と言いながら苦笑する。
全くもう、と言いながら尻を蹴ってきた。
そして、自信持って、と笑顔になる花梨さん。
「痛いなお前」
「.....まあそれはそうと。.....ルナさん。一緒にご飯食べませんか」
「え.....良いんですか」
「私の腕を見せてあげますよ。ふふー」
「.....とても嬉しいです。コンビニご飯ばっかりだったので.....」
結局アイドル5人全員に振る舞う計算だ。
困ったもんだな、と思いながら花梨に苦笑する。
花梨は笑みを浮かべながらそのままルナと真帆を誘導した。
それからリビングに呼ぶ。
俺はその姿を見ながらルナと真帆を椅子に腰掛けさせて台所に行く花梨を見る。
「よし!腕を振る舞うよ!」
「ん?今日は何を作るんだ?」
「シャリアピンステーキもどき」
「いやちょっと待て。それってこの前と同じじゃね!?」
何?お兄ちゃんは何か不満ですか?シスコンの癖に、と言ってくる花梨。
俺は苦笑いを浮かべながら両手を挙げる。
そして観念してからそのままリビングに戻る。
それから椅子に腰掛けた。
私までお世話になってるけど良いのかな、と言う真帆に向く。
「.....まあお前さんはいつも通りじゃないか」
「まあそうだけど.....」
花梨が、うぉおぉお!!!!!、と目に炎を宿して絶叫する中。
俺は2人と話す。
ルナは一人っ子であり.....そして。
昔から親に無視されている過去を.....明かしてくれた。
それでコンビニご飯なんだな、と思ってしまう。
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