第17話 ベッドでの一緒の睡眠と.....祈りを込めて

翌日になった。

俺は欠伸をしながら起き上がる。

今日は.....そうか。

土曜日か、と思いながら。

それから俺は何時もの様にベッドから降りようと.....?


「!!!!?」


何時ものベッドの筈だが。

横に香り豊かな美少女が居た。

いや!?これは真帆か!?

糸絹の様な髪の毛に.....凄まじい美少女。

俺は赤面しながらビックリ仰天で真帆を見る。


真帆はスースーと小さな寝息を立ててまるでハムスターの様に丸まって私服姿でその場に寝ていた。

何やってんだコイツは!?

心臓が止まるかと思ったのだが。

考えながら俺は真帆の顔を見てみる。


「にしてもそれはそうとして本当に可愛いよな。コイツ」


そんな事を呟きながら俺は真帆の後ろを見る。

そこには薔薇の髪留めがしっかりとあった。

大切そうに髪を結って大切そうに身に付けている。

本当に.....良い娘だよな。

俺なんか.....を。


「.....ん?.....あ。おはよう。翼くん」


「おはよう真帆。ってか何のつもりだよ!?心臓が止まるかと思ったぞ!途轍もない可愛い少女が横に居て!」


「モーニングサービスで.....スゥ.....」


「.....いやいやお前なぁ.....寝ているからな。半分」


アハハ。いや。翼くんが寝ている姿を見たくて来たんだけど。

でも一緒に寝ちゃった.....。

何というか気持ち良くてね。笑っちゃうなぁ、と笑みを浮かべる真帆。

そして髪の毛を触る。

寝癖とか無いかな、と言いながら。


「寝癖とか無さそうだぞ」


「.....そっか。.....あ。翼くん。髪の毛に寝癖あるよ」


「.....?.....ああ。俺はまあ派手に寝るからな」


じゃあ直してあげる、と言いながら俺の背後に回った。

それからそのまま髪の毛に触ってくる。

と同時に。

真帆はギュッと抱きしめてきた。

俺は!?と思いながら、ちょ!、と慌てる。


「エヘヘ。翼くんの匂いだ」


「やめーや。恥ずかしいって!」


「恥ずかしいかな。私は何ともないよ。だって翼くんだから」


「お前な.....」


そして暫く抱きしめてから。

ねえ。翼くん、と言ってくる真帆。

何だ?、と聞くと。

真帆は、泉さんが眠っている場所ってあるのかな、と言う。

俺は!と思う。


「.....こんな私だけどご挨拶だけはしておきたいと思って」


「.....今日来たのはそれか?」


「そうだね。もしお墓があるなら.....行ってみたいなって。ご家族とかに迷惑じゃなかったらの話だけど」


「真帆。それだったら泉の家に連れて行ってやるよ」


「.....え.....良いのかな。こんな部外者.....」


「お前は何を言っているんだ。俺の現在の彼女だろ。何も言われないに決まっている」


寧ろあの家族だから。

幸せを願うだろう。

考えながら俺は真帆を見る。

笑みを浮かべて、だ。

そして俺は、真帆。あの人達はお前を歓迎する。絶対に。だから安心して良い。妹さんと父親と母親の3人家族だ、と頭を撫でながら言う。


「.....じゃあいきなりで申し訳無いけどそれでも.....行きたいな」


「ああ。じゃあ連絡しておくから。.....着替えるから待っていてくれ」


「うん。有難う翼くん」


真帆はその場を後にして。

そして俺は連絡をしてから。

そのまま着替えた。


それから真帆の待っている1階に降りて.....朝食を食べてから。

泉の家に向かう。

3家先だが。

そこが泉の家だ。



「今日はなんて素晴らしい日なんでしょう。.....翼くんに彼女が出来るなんて.....」


「そうだな。弓弦(ゆづる)。.....本当に.....こんな嬉しい日は無いよ」


「しかも有名人だねぇ。ほえぇ」


玄関先でベタベタ触られて目をパチクリする真帆。

やっぱりな。

歓迎してくれた。

俺は苦笑して思いながらその3人を見る。


少しだけシワのある優しい瞳の泉に似た女性。

栗谷弓弦さんと。

頑固な感じに見えて柔和な性格の栗谷源内(げんない)さん。

それから最後に俺を翼お兄ちゃんと呼ぶ美少女妹。

つまり泉の妹の栗谷和歌(わか)。


「.....翼くん。暫く見ないうちに.....彼女まで出来ちゃって。全く幸せ者ね」


「.....世話になっています」


「そうだよ!?翼お兄ちゃん!私という彼女がありながら!」


「冗談でもやめーや」


そんな会話をする俺達。

すると弓弦さんが、ささ。上がって上がって!、と招いてくる。

俺は招かれるがままに真帆に向いて頷いてから一緒に上がる。

それからリビングに招かれた。


「.....素晴らしいご家庭ですね」


「あらまぁ。お上手ね!アッハッハ!」


「はしたないぞ。弓弦。その笑い方は」


「そうだよお母さん!」


仲が良いご家庭でもあるんですね、と言いながら真帆は笑顔になる。

俺はその姿にリラックス感を得ながら安心する。

そして、な?招かれて正解だったろ?、と真帆に言ってみる。

驚きばかりだけどね、と真帆は苦笑した。


「じゃあ早速だけど.....挨拶するか?泉に」


「そうだね。.....弓弦さん。お願い出来ますか」


「良いわよ。.....あの子も喜ぶでしょう。きっと」


そしてリビングの側にある仏壇。

そこを開けてもらうと.....泉の好きな物がずらりと並び。

それから中央に泉の病室で無い写真があった。

真帆は真剣な顔で見ていたが。

数秒してから手を合わせた。


「泉。今日来てくれたぞ。真帆が.....お前に会いたいって言ってから」


そんな事を言いながら俺も手を合わせる。

それから数秒間祈りを込める。

すると.....グスッと鼻声がした。

俺は横を見る。


「.....真帆?」


「.....何でこんなに幼くして.....亡くなるんだろうね。.....悲しい」


「.....真帆ちゃん.....!?」


泣くべき筈では無い真帆が涙を流していた。

そして大粒の涙になっていく。

慌てた弓弦さんが真帆の肩を抱いて。

それから和歌がティッシュを持って来た。


「.....是非お友達になりたかったです。.....生きていたら」


「.....お前.....」


「真帆お姉ちゃん.....」


優しいのね。貴方は、と言いながら弓弦さんがしっかり抱き締める。

俺はその姿に和歌を見る。

和歌も涙を流していた。

そして寄り添う。


「.....大丈夫よ。泉は生きているわ。私達の心の中でね」


「.....!」


そうだ。みんなでちょうど良いわ。パーティーね。お菓子を食べましょう!、と笑顔になる弓弦さん。

俺はいきなりの事に驚く。

そして周りを見る。

真帆以外みんな賛成していた。


「.....あは.....アハハ」


真帆はようやっと笑顔になった。

そしてクスクスと笑う。

俺はその姿を見ながら柔和になった。


それから泉の写真を見る。

本当にお前は誰でも笑顔にするな泉。

そう考えながら。

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