第14話 愛が深まる瞬間

「メロンパン食べる?」


「そうだねぇ。じゃあ貰えるかい。メロンパンは好きだねぇ」


「お弁当、美味しい?翼くん」


「美味しいぞ。スッゲェ。流石は料理上手と言ったところだな.....」


そんな感じで4人揃ってワイワイしながら食べる。

最初はちょっとドン引きだったが.....話してみるとカノンさんは良い人だった。

俺の事に真摯に向き合ってくれている。

相談に乗ってくれている。


「私はこの体型だからいっつも小学生に間違えられてね。大変な思いをしているのだよ。ハッハッハ。歌手人生も満更では無いんだがね」


「そうなんですね」


「そうなんだよなぁ。どうにもカノンっちは小学生に間違えられてしまう。それはそれで何だか厄介だけど文句は言えないからな」


「そうか.....確かにな」


そうだね、と言いながら笑みを浮かべるカノンさん。

俺はその姿を見ながら真帆を見る。

真帆はプチトマトを掴もうと格闘している。

その姿にまた可愛らしく思いながら。


「それにしても.....君は凄いな。翼。痴漢を捕まえるとはねぇ」


「それが真帆との出会いになったんですけど.....でも偶然です。本当に。.....だから感謝されるぐらいの事はして無いです。当たり前の事ですね」


「ふむ。そうかね。.....でも私からしてみれば誰にでも出来る様な事じゃ無い。.....君は本当に真帆に好かれる運命にあったんだねぇ」


「.....」


泉がされたらどうなるか。

それを考えてあの時は動いた気がする。

だから.....本当に感謝される謂れはないと思う。

あくまで『真帆』として見てなかったからなその時は。


「.....翼くん」


「真帆?」


「大丈夫だよ。君の事は理解しているから。.....君の考えも当てれる。私は貴方との出会いは運命って思っているから」


「.....」


優しいよな真帆は。

考えながら微笑みを浮かべる真帆を見る。

そして居ると。

さて、と立ち上がるカノンさん。

それから横のアイナの腕を引っ張る。


「食事も終えたし行くぞ。アイナ」


「え!?何処に!?」


「この場所から去るんだ。2人きりにしないとな」


「あ。そうだね。確かに」


「ちょ!?皆さん!?」


俺は慌てるが真帆は小さく手を振って見送った。

それから俺を赤くなりながら見てくる。

真っ赤になってしまう俺。

そしてそっぽを.....向けなかった。

何故ならまた俺の頬を支えているから。


「.....唐揚げ食べる?」


「.....お、オイ真帆。恥ずかしいってマジに」


「せっかく2人きりになったんだから。ね?翼くん」


「.....分かった。じゃあ食べる.....え!?」


「あーん」


真帆は自らの箸で俺の口に唐揚げを突っ込んだ。

そして俺は赤くなりながら口を動かす。

そうしてから咀嚼した。

俺はこれ以上ないぐらいに真っ赤になる。

オイオイ.....こ、これは.....か、間接キス.....!?


「間接キスって思ってる?」


「いやだってそうだろ!?間接キスじゃないか!?」


「だって彼女彼氏だから。アハハ」


「.....お前という奴は.....」


「.....あ。そうだ。翼くん」


私ね。髪の毛を束ねたりしたいって思ってるの。

その為に髪留めが要るよね、と言ってくる。

俺は?を浮かべて真帆を見る。

真帆は笑みを浮かべてから、買いに行こう?翼くんに選んでほしい、と言ってきた。


「.....俺が.....お前の髪留めを?」


「.....そうだよ。.....私は普通の女の子になったしね。イメチェンしたい」


「まあそうだけど.....俺が選ぶ必要.....」


「彼氏に選んでほしい。彼氏に選んでもらうのが一番大切だから」


「.....!」


真帆を見る。

そんな真帆は柔和な顔で俺を見ていた。

俺は頬を掻きながら、分かった。じゃあ選ぶよ。そこまで言うなら、と話す。

でも俺はそんなにセンス無いけど.....、と言うと。

センスなんか要らないよ、と話す。


「貴方が選ぶ事に意味があるんだ。君が選ぶのが良い」


「.....そうか」


「だから放課後に私の買い物に付き合ってほしい」


「.....うん。分かった。じゃあ付き合うよ」


そして俺達は放課後に髪留めを買う為にアクセサリーショップに行く事になった。

まさかこれが.....不幸として襲い掛かるとは思わなかったが。

どんな不幸かと言えば.....そうだな。

真帆を目的にした不良に絡まれてしまった。


だが。



その事件があったのは。

放課後に一緒にアクセサリーショップに向かう際の事だった。

俺達の前に2人組の金髪が立ちはだかる。

それから俺を見てくる。

俺は真帆を守る様にしたが.....連れて行かれてしまった。


「つーかお前この子の誰なの?マジに」


「そうそう」


「.....つ、翼くん.....」


真帆は涙目で俺を見てくる。

思った以上に怪力だった。

クソッと思いながら俺は捕まっている真帆を見る。

困ったな、と思う。

警察を呼ぼうにも、と思う。


「良い子だよなぁ。引退とか勿体無いわ」


「そうだよなぁ」


「お前ら。真帆から手を離せ!」


「.....」


そして無言で俺は膝蹴りを喰らった。

結構痛い膝蹴りを、だ。

俺は重厚な蹴りを喰らって地面に倒れる。


その姿に一生懸命に抵抗する真帆が目に入る。

クソッタレ.....痴漢は何とかなったのに、と思うが。

これは.....どうにもならない。


「情けないな.....」


俺は腹の鈍痛で涙目になった。

でも初めてだったが。

目の前の真帆を全力で守りたいと思ってしまった。

何というか.....これが愛なのか、と思う。

すると。


「はい。そこまで」


何かアイナの声がした。

俺は!?と思いながら背後を見る。

背後にアイナが立っていた。

付けて来て正解だったね、と言いながら腰に手を当てる。


「マジか!糸繰アイナじゃね!?」


「ちょうど良い。コイツも捕まえようぜ」


俺は、アイナ!駄目だ逃げろ!、と言うが。

金髪が手を伸ばす。

手遅れか、と思ったのだが。

アイナは笑みを浮かべる。


「こんな輩に負ける程アイドルは弱くないっ!」


そして次の瞬間だが。

金髪の1人を空手で正拳突きとかでフルボッコにした。

それから俺の前に勢い良く倒れる金髪。


俺は!?と思いながら見ていると。

金髪のもう一人が、テメェ!、と激昂して掴みかかろうとする。

俺はその事に咄嗟にアイナの前に出る。

アイナは構えていたが.....驚く。


「ファ!?つ、翼っち!?」


「テメェこそ良い加減にしやがれ!」


それから俺は右の拳で金髪の顔面に思いっきりクリーンヒットさせた。

手の骨が折れそうになったが金髪は油断していたのか。

その一発で思いっきり気絶した。

一連の流れを見ていたアイナが拍手する。


「おー。翼っちやるじゃない」


「ああ.....ちょっと腹が痛いかもだけどな」


「翼くん!!!!!」


真帆が背後から抱きついて来た。

柔らかい感触がして俺を見てくる。

涙を浮かべて、だ。

心配げに、大丈夫.....?、と聞いてきた。

俺は、ああ.....まあな、と苦笑する。


「翼っち。一応、ボコられているし病院に行った方が良いかも」


「.....そうだな。アイナ。金髪をボコってくれてサンキューな」


「うん。それにしても見直したよ。君の事。色々と強いんだねぇ」


「.....奇跡だよ。あくまでな」


アイナが危機状態の時に丁度来たから油断が生まれたんだ。

だから奇跡ってヤツだな。

考えながら俺達は金髪を警察に引き渡し。

そのままアイナと別れて病院に向かう。

ったく.....余計な事をしなくてはいけなくなったな.....。

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