第12話 花梨の涙

まあよく食っているぜよ、って感じだと思う。

オムライスを花梨が張り切って5個作ったらアイナは3個食ったしな.....。

1個500グラムだぞお前。

ノリに乗り過ぎってか食い過ぎだろ。


健康にしても信じられない。

俺は苦笑いを浮かべながら皿を洗ってくれたりした2人はこの後に色々と用事があると去って行く。


それを玄関で見送ってから。

玄関を閉じてから花梨を見た。

嬉しそうな顔を。


「.....花梨。どうしたんだ?そんな笑みを浮かべて」


「.....とても嬉しくてね。.....お兄ちゃんに彼女が出来そうなのが」


「もしかして泉の事も思ってか?」


「.....それは当たり前でしょ。.....大切な人だったんだから。.....それと同じ様に.....いいや。それ以上にお兄ちゃんを大切にしてくれる人に出逢えたのが.....奇跡だって思ってね」


「.....まあ確かにな」


そんな感じで話していると花梨は涙を浮かべて泣き始めた。

でもそのようやっと泉お姉ちゃんに.....良い報告が出来そうだね。絶対に喜ぶ、とグスグスと目に拳を当てて泣きながら。

俺はその姿に涙が浮かぶ。

そしてつい抱き締めてしまった。


「.....大丈夫。花梨。泣くな。お願いだから。俺まで泣いてしまう」


「でも本当に良かった。でも悲しい。.....お兄ちゃん.....」


「.....お前って心の底から優しいよな。.....本当に」


「優しいけどね。.....お姉ちゃんには勝てないよ」


「いや。お前はもう立派なお姉ちゃんだよ」


そんな感じで花梨と会話をしながら俺は花梨の頭を撫でる。

それからリビングに戻って来た。

でも.....みんな優しいね、と花梨は笑みを浮かべる。

俺はその言葉に、そうだな、と柔和になる。


「由奈の事もそうだが誤解まみれだ。だけど.....話してみるとアイナと同じ様に考えて良い奴だってのに気がついた」


「.....それは確かにね。.....みんな本当に心から真帆さんの事を心配しているよね」


「そうだな。真帆にとっては最高の仲間だと思う」


「.....確かにね」


涙を拭いながら笑顔になる花梨。

俺はその姿に笑みを浮かべた。

そしてまた花梨の頭を撫でてやる。

それから寄せた。


「.....お兄ちゃん。真帆さんの事。大切にしてあげてね」


「.....ああ。約束は約束だからな」


「そうだね」


そうしているとスマホにメッセージが入った。

それは真帆からだ。

由奈ちゃんが行ったんだってね、と深刻そうな感じの文面だった。

俺は、大丈夫だ。和解したよ、と文章を刻む。

それから天井を見上げる。


(ゴメンね。本当に本当に.....何だか迷惑ばかり.....)


(存分にお前とかの話が出来た。俺の話もそうだけどと思いながら)


(そうなのかな。そう言ってくれて有難いかも)


(ああ。だから真帆。心配するな)


俺は花梨を見る。

花梨もメッセージをジッと見ていた。

そしてハッとしてから、お兄ちゃん。これ良い機会だよね!?!?!デートに誘ったら!?、と目を輝かせてくる。

俺は!!!!?と思いながら真っ赤になる。

いやいや嘘だろお前!?


「嘘なもんですかい!.....お兄ちゃん。こういうのは男性のエスコートが大切だよ」


「.....いや.....うーん」


「じゃあスマホ貸して下さい。ホーレ」


「あ!おいコラ!」


俺は逃げる花梨を慌てながら追い掛ける。

そして1分してからスマホを取り返したが。

既に送信済みだった。

真帆は文章が乱れている。

つまりかなり.....動揺している。


(で、で、でーとって本、当に!!!!?)


(あ.....うん。その。デートだ)


(い、いきなり.....で、で、デート.....服どうしよう.....)


今週の土曜日にって、と悩む様なメッセージ。

全く花梨の野郎め!?なんて事を!

今週の土曜日って.....!?

俺は横の花梨をジト目で見る。

腰に手を当てて偉そうにしている花梨。


「お兄ちゃんも服を買って計画を立てなさい」


「.....お前な.....何を偉そうにしてんだ.....」


「こうしないとお兄ちゃんはずっとお兄ちゃんだから」


「何言ってんだお前さんは!!!!?」


俺は唖然としながら額に手を添える。

そして俺達はいきなりだがデートをする羽目になってしまった。

今週の土曜日であるが。

もう直ぐ7月に入ろうとしているこの頃。


「お兄ちゃん。学校の制服も変わる。青春も変わる。だから大切だよ」


「何言ってんのマジに!!!!?」


「とにかく良いから!服を買いなされ」


「.....はぁ.....」


「因みにだけど服のセンス悪いと買い直しだから。お年玉いっぱいだったしお小遣いいっぱい有るでしょ」


「.....はぁ..........」


いやこの野郎、と思うが。

まあ確かにこうしないといけないよな。

無理矢理でもしないと.....真帆は彼女に近い存在だしな。


まあでも良い機会だ。

この機会を機に.....告白しよう。

考えながら俺は赤くなるのを、とか。

笑みをが浮かぶのとかを我慢しながら。

何とか.....色々と耐えた。

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