第10話 子は親に似るものだ

「モグモグ.....お兄ちゃんはもうちょっと考えた方が良いよ。モグモグ.....真帆さんの事」


「.....それはどういう.....つーか俺の持って帰って来た真帆特製の40個のピーナッツクッキーを全部食うなし。ふざけんな!」


「これはファンが食べるべき神聖なもの!そしてお兄ちゃんはいっぱい食べたと思うしね。私が食べても問題無し」


「.....」


この野郎、と思って見る。

すると花梨は、私ね。思うんだ、と切り出してくる。

リスの様にピーナッツクッキーを無数に食べながら、であるが。

俺は苦笑いで、何を?、と切り出す。

花梨は、真帆さんは恥ずかしがり屋だと思う。だからお兄ちゃんがエスコートしてあげて。お願い、と言いながら口に付いたクッキーの破片を食べる。


「そんな顔で言われてもな.....」


「良いでしょ別に。説得力あるでしょ」


「無いわ!」


「そうかなぁ?」


リビングに日差しが差し込む中。

俺はまた苦笑する。

すると花梨はゴクリと喉を鳴らしてクッキーを飲み込み。

それからニヤッとする。


「.....私はお兄ちゃんと真帆さんはお似合いだと思う」


「そうかな」


「.....うん。だからこそ応援したい」


「そうか」


でもその為に確かにお兄ちゃんの言う通りだけど真帆さんの周りが落ち着かないとね、と言ってくる。

俺は顎に手を添えながら、実は真帆の仲間に出会ったんだ、と切り出す。

花梨は目を丸くする。


「糸繰アイナって知ってるか」


「アイナちゃん?3番目の.....センターだよね」


「.....そうか。その娘に言われたんだ。.....応援しているって」


「.....そうなんだ。じゃあ頑張らないとね」


そうしていると電話が掛かって来た。

それは.....真帆だった。

電話やメルアド交換したりしたのだが。


俺は赤くなってしまう。

すると花梨は、ほらほら。家事は良いから。出てあげなさい、と背中を叩いてくる。

その言葉に、母親かよ、と苦笑いで突っ込みながらも出た。

そしてリビングから出る。


「もしもし」


『も、もしもし。翼.....くん?』


「そうだな。今日は有難うな」


『有難うはこっちのセリフだよ。.....有難うね。.....アイナとも会ったんだよね?』


「.....うん。アイナと会った。それで.....話をした」


『どんな事を話したのか.....教えてくれる?』


「全て俺達に関わる事だった。そして.....軋轢が生まれている事を聞いた』


ああ.....やっぱりなんだね、と言う真帆。

予言はしていたのだろうな。

俺は考えながら、どうするんだ?ここから先は、と聞く。

すると真帆は、私ね。センターを譲ろうと思う。アイナに、と切り出した。

でもそれはマネージャーとかと相談しないと出来ないけどね、とも。


『あくまで管理者は支配人、社長とかだしね』


「.....難しいもんだな。お前の業界は」


『アイドルは大変だよ?.....それに.....自由奔放で居られる訳じゃ無いから』


「.....成り上がるのも大変だしな」


『.....いざ辞めるって言ってそんな簡単に辞めさせてくれる業界じゃ無いしね。ここまで人気が出るとね。ホイホイ金を稼げる存在だしね』


「.....」


悩む俺。

でも私。目標が出来たんだ、と言ってくる。

俺は?を浮かべて、それは?、と聞くと。


私は.....貴方と幸せに暮らしたいから、と言ってくる。

いやいやこの野郎.....。

相変わらず恥ずかしいセリフばっかり。

考えながら壁を背にして崩れ落ちる。


『私は翼くんと一緒になりたい。好きだから。.....だからこそ、ね?』


「.....道は遠そうだけどな」


『近くにするよ。.....私は.....頑張る。恋の為なら』


「.....なあ。何でお前はそんなに頑張れるんだ?」


『.....やっぱりお父さんの存在かな。お父さんとお母さんも出会いが同じだった。こんな感じでアイドルで.....お父さんが追い掛け。それで付き合って.....結婚して私を産んだの。.....私は憧れている。そんな世界に』


「.....それは.....凄い話だな」


『子は親に似るってこういうのかなって思った』


クスクスと笑う真帆。

俺は恥ずかしくなりながらも、そうか、と返事をする。

そして、お母さんは結婚は許されないアイドル規則の場所でアイドルをしていた。だけどそんな全てを捨ててからお父さんを愛して婚約した。.....だから私のお母さんは憧れの存在なの、と話した。

マジかよ、と思う。


『.....だから翼くんを一途に思っています』


「.....俺はお前をまだ愛せないけど.....良いのか?それでも.....」


『.....良いの。大丈夫。私の恋の沼にはもうハマってる』


「怖いな!?」


『あはっ』


そして真帆は、じゃあね。今からお仕事だから、と言ってくる。

俺はその言葉に、頑張れ、と言いながらそのままスマホを切った。

それからテレビを点けている妹を見る。

丁度ワイドショーの番組のライブが始まった所で.....しかも。

星の鏡の5人が出ていた。


「重大発表だって」


「.....何を発表するんだろうな?」


「分からないねぇ」


「.....ショートケーキのホール食うなよ.....よく食うなお前!」


もそもそとホールケーキを食っていた。

太るぞコイツ。

考えながらも殴られそうなので口出しはしないが。


思いつつ目の前の画面を見ると。

『ところで重大発表がございますとの事ですが』、的な感じに明るい元気な男性のMCがニコッとしながら星の鏡を見る。

そして頷いて真帆はマイクを持った。


『私、真帆はアイドル活動をこの場を持って引退します』


突然の、まさかの言葉だった。

固まったスタジオ。

それから次の瞬間、ギェぇエェぇぇ!!!!!、とスタジオに居るファンの絶叫の声がしてくる。


そしてそれを見てから息を吸い込む真帆。

それから赤くなって、私は普通の学生になりたいので引退します。でも芸能界には残ります。アイドル活動は引退をすると今日決めました、と公表した。


『私は.....学業に専念するつもりです!』


「.....マホマホぉ.....真帆さんぅ.....」


花梨はハンカチの端を噛みながら食べつつ号泣する。

俺は苦笑いを浮かべてその行動を見る。

マジに何なのコイツ。この前会ったのにな、と思うが。

しかしこうやって公表するとは、と驚きを隠せない。

そしてこの後センターにはアイナがくる事が公表されたりした。

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