第6話 (アイドル)だからこそ

「学校は楽しい?」


「そうだな。まあ昔は無視とかのいじめもあったしな。今が充実している。.....俺を認めてくれている感は満載だな」


「うん。翼くんが言うなら間違い無いね。この学校は良い学校だ」


真帆を案内する。

人が大勢.....写真を撮る。

そして、何だあの男、とか言っている。


それの繰り返しだ。

あくまで言うが俺は真帆と今は付き合っている訳じゃない。

思いながら苦笑いを浮かべる。

すると真帆が、ゴメンね。私のせいで.....言われているよね、と謝ってきた。

職員室の前を通る。


「.....気にするな。.....俺は写真に写っても所詮はモブだしな」


「そんな事無いよ。私にとってはヒーローだから」


「.....そんな大袈裟な物じゃないさ。でも有難うな」


「うん。だって痴漢を捕まえるって勇気が要るよ。絶対に。君はその中で私を助けた。.....それは事実だからね」


「まあそうだな.....」


確かにな。

あれは勇気の有る行動だった。

俺らしからぬ勇気の行動だ。

だから珍しかったと思う。

まさか救った相手が1000年に一度の美少女と呼ばれるアイドルとは思わなかったけどな。


「私はアイドルだから誰も助けてくれないんだ」


「.....それはどういう意味だ?」


「アイドルなら強いでしょ、って感じでなっているから。.....テレビ慣れもしているから、とかも。.....でも違う。私は一般人と何も変わらないよ。神扱いされているみたいだけどね。だから痴漢にあっても.....救ってくれないんだろうって思った。自分で何とかなるって思われているみたいだから。.....その中で君は違った」


君は私を救ってくれた。

心から救ってくれた。

だから君が好きです、と笑顔を浮かべる真帆。

俺はその言葉に赤面しながら頬を掻く。

困ったもんだな、と思いながら。


「.....私が何もかもから引退したら付き合ってほしい。本当に」


「そこまで俺が好きなのか.....」


「私は.....君に惚れたから」


「.....そうか」


でも確かに君の言う通りだけど。

周りを片付けてからだね、と言ってくる。

俺はその言葉に、ああ、と返事をする。

そして音楽室に着いた。

丁度ここが音楽室な、と言う。


「有難う。.....ちなみにこの学校は屋上って行ける?」


「屋上か?ああ。まあ.....自由に解放されているから」


「じゃあ屋上に行ってみたい」


「そうか。空でも見たいのか?」


そんな会話をしながら屋上にやって来た。

それから空を見上げて笑みを浮かべる真帆。

あの空に.....私のお父さんが見守っている感じがするの、と言ってくる。

俺は!と思いながら空を見る。


「.....私のお父さんね。.....前立腺がんで亡くなったんだ」


「.....そうなのか.....」


「これは誰にも言ってない。.....癌で亡くなったってのは。.....それからこれも誰にも言ってない。.....私も病弱だった」


「.....え?」


「喘息があった。.....外に出るまでが大変だったの」


俺は驚きながら真帆を見る。

真帆は、お薬必須だった。過呼吸もあった。人前に出るのが嫌いだった、と語ってきながらベンチに腰掛ける。

俺は、意外だな、と答えながら横のベンチに腰掛けた。


「.....私ね。ストレスでそうなったの。.....喘息も過呼吸も。今は治った。全てはアイドルのお陰なんだ。でももう良いの」


「何が良いんだ?」


「私は好きな人を見つけた。だからもうアイドルを辞めようかなって本当に思ってる」


「.....お前は小っ恥ずかしい事ばかり.....」


「本当だよ?だって君が好きだから」


一途な思いを打つけてくる様に俺をジッと見てくる真帆。

俺はその姿に慌てて横を見た。

すると、クスクス、と真帆が笑う。

それから涙を拭く様にして俺を見てきた。


「.....可愛いね。君って」


「可愛いってかお前の様な可愛い女の子に好きって言われる気持ちを考えてくれ。あまりに恥ずかしい」


聞いた途端に、ふぇ?、と目をパチクリする真帆。

俺は、お前はマジに可愛いんだから、と赤面で告げると。

真帆は口元に手を添えてから慌てて顔を隠す様にする。

自覚を持ってくれ。お前は可愛いから困るんだ、と話を続けた。


「は、恥ずかしぃよ.....」


「.....何度でも言うぞ俺は。.....お前は最高に可愛い」


「も、もぉ。ばか.....」


言いながら真帆は顔を覆ってしまう。

そして膝に顔を埋める。

俺はその姿に耳まで真っ赤になっている真帆を見つつ。

立ち上がってから、真帆。実はな。俺も小学校が苦手だった。不登校だったんだ、と言う。

言葉に真帆は顔を上げてくる。


「.....え.....」


「.....さっきのイジメでね。.....だからお前の外に出たくなかった気持ちは分かる。まあお前が高みに居るからあまり分からない部分もあるけどな」


「.....翼くん.....」


俺はイジメを受けてから。

人生が変わった気がするのだ。

それは.....人に対する心の傾聴の意味で、だ。

考えながら俺は伸びをする。

そろそろ帰るか、と聞いてみた。


「翼くん」


「.....何だ」


「大好きだよ」


「.....お前わざとやってるな?」


「アハハ」


真帆は笑顔を浮かべながら俺を見てくる。

そして俺達は教室に戻る。

それから授業をまた受けた。

そうしてから.....放課後になっていく。

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