第5話 友達を作るのが苦手
教室が凍った。
それは氷河期に戻って始まった様に、だ。
そしてまあその。
俺はぶち殺される標的に定められた。
横の席になった真帆を見る。
「教室を敵に回すとは恐ろしい事をするな。お前」
「いや。好き好んでやっている訳じゃねぇよ」
「この教室は面白いね。翼くん」
「余裕ぶっているのは良いが.....マジにヤバいぞ」
スキャンダルだろアイツ、何様?殺すよ?、マジにないわ〜、とか教室のあちこちから声がしてくる。
それを聞きながら俺は苦笑いを浮かべる。
そうしていると真帆が、そうだ。次の時間だけど.....終わったら翼くんに学校内を案内して欲しいかも、と真帆は俺を見てきた。
期待の眼差しで、である。
「.....いや.....それはマズイだろ。だってお前.....人気アイドルだぞ。良いのか俺が側に居ても」
「.....翼くんだからね」
「.....いやいや。赤くなるなよ。頼む。俺の居場所が無くなるから」
「やれやれ。ラブラブだな」
「お前も見てないで助けてくれ」
「助ける?何処を?」
正直に言って良いか。
俺も相当にお前が羨ましい。
だからこの状況で助ける意味が分からない、と怒りながら言う富義。
この野郎.....。
俺は額に手を添えながら首を振った。
「でも良いじゃないか。せっかくお前を好きだと言ってくれる女子が居るんだから。精一杯接してあげた方が良い」
「.....まあそうだな。.....お前の意見は正しいと思うけど」
「そうだろう。真帆さんを悲しませるな。.....そこだけは譲れない」
「.....富義.....」
だけどまあ。
羨ましいのはそのままだ、と言う富義。
死ねとも思ってしまう、とも。
俺は、オイ。せっかく良い話だったのに台無しだろ、とツッコミを入れる。
すると真帆はクスクス笑いながら俺を見ていた。
「.....真帆。そういえば.....友達は作らないのか」
「.....苦手なの。そういうの」
だから身近な人から接していこうかなって、と、エヘヘ、と恥じらいながら俺達に笑みを浮かべて言う真帆。
俺はその言葉に、そうか、と言いながら苦笑する。
富義も、徐々に慣れていけば良いと思うぞ、と笑みを浮かべた。
「そもそもにそんなに友人など作っても信頼関係が結べるかどうかも分からないからな。1人2人で頑張って行くのが賢明だろう」
「富義くんの言う通りだと思う」
「まあ確かにな。.....俺も友人作るのはもう富義以外必要無いしな。作った所でうまい関係を築けるかと言えばそれは無いからな」
だから富義くんと翼くんに.....知り合いになってほしい、と言ってくる真帆。
俺はその姿を見ながら、やれやれ。ピュアだ、と思う。
富義も、良い子だな、と納得している様に見える。
「.....おっと。チャイムが鳴るか。そろそろ戻ろう」
「だな。じゃあまた後でな」
「そうだな。また後で」
そんな感じで会話をしながら俺は富義と別れた。
それから俺は自分の席に腰掛ける。
そして教科書を用意しようとした時だった。
翼くん、と声が。
「一緒に教科書見て良い?」
「ああ。教科書持ってないんだな。分かった」
「うん。有難う」
それから机を寄せてくる真帆。
そして腕と腕が接触した。
バラバラと色々な物が落ちる。
俺達は!と思いながらそのまま引き離す。
あ、あはは。驚かせたね、と真帆が恥じらいながら赤面する。
「いや。俺も悪かった。引き離して。.....教科書とか落ちたな」
「拾おっか」
「そうだな」
そして俺は床に散らばった教科書とノートを拾って.....シャーペンを、とそこまできてまた真帆と手が当たる。
真帆は真っ赤になりながら手を引っ込める。
それから胸に手を添えた。
「.....だ、大丈夫か?」
「.....心臓がドキドキだね。やっぱり」
「そうやって恥じらうと俺も恥ずかしいんだが」
「私だって恥ずかしいよ。だって好きな人だからね.....」
「.....」
俺は赤くなって頬を掻く。
そして.....そのままゆっくり立ち上がってから真帆を立ち上がらせる。
突然の事だった真帆は目をパチクリしながらも意を決する様に手を掴んだ。
そして赤くなりながら笑顔で、有難う、と微笑んだ。
それから俺達は椅子に腰掛ける。
「ねえ。......翼くんって優しいよね」
「.....まあ優しいとは言われる。その優しさに気を付けろ、とかな」
「そうなんだね。私.....優しい人が好きだよ」
「そいつは有難い.....けど直に言われるとやはり恥ずかしいな」
「うん。じゃあ言葉責めだ」
「.....オイオイ」
そんな会話をしたら先生がようやっとやって来た。
それから俺達に挨拶をする。
英語の授業が始まる。
でも億劫だけど何だか今日は幸せな感じだ。
横に真帆が居るからだろうけど。
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