第4話 転校して来ました

マネージャーが気に食わないが。

それでも取り敢えずはこの場所に真帆を何時迄も置いて置く訳にもいかない。

俺は真帆を見る。

真帆は俺の部屋の漫画を読みながら花梨と話していた。

その真帆に聞く。


「帰るのか?真帆はあそこに」


「そうだね。所属場所はあそこだから帰らざるを得ないかもです」


「.....そうなんだな」


「でも帰ったら.....イジメられるんでしょ?」


「.....そうだけどあそこしか居場所が無いしね。それに残りの仲間とは仲が良いから。.....帰らないと」


その様に言いながら真帆は俺を見てくる。

翼くん。今日は楽しかった、と赤くなりながら言う。

それから、私帰ります、と話す。

俺は頷いた。

そして花梨も頷く。


「.....じゃあせめてものお土産を持って行って」


「お土産?」


「クッキーを焼いたからです。.....それを持って帰って下さい」


いつの間に焼いていたのやら。

俺は苦笑しながら花梨を見ながら真帆を見送る。

そして玄関までやって来た。

それからクッキーを渡した花梨。


「有難う。花梨さん」


「.....私は特別扱いしたく無いんで」


「.....え?それはどういう.....」


「真帆さんにはまた会いたいです」


「.....!」


花梨は強く言いながら顔を上げる。

俺はその姿を見ながら目を丸くした。

そして花梨は真帆の手を握る。

バカ兄貴ですけど.....大切にして欲しいです、と。

その言葉に俺は赤面した。


「.....花梨さん.....」


「アイドルであっても。私は真帆さんとお友達になれると思っています。普通に馴染めるって信じてます。.....だから頑張って下さい」


「.....うん。有難う。花梨さん」


「じゃあまたな」


「はい。翼くん。あ。でも花梨さんも。.....直ぐにまた会えますよ」


「え?」


私自身がこの近くの学校に転校しますから、と笑顔で言う真帆。

俺は唖然とした。

花梨も驚いている。

俺は、良いのかそれで?!、と聞くと。

だって好きな人の側に居たいですから、と真帆は柔和になる。


「この近くって何処の高校だ?」


「天柱高校です」


「俺の高校じゃねぇか!!!!!」


「はい。狙いました」


「やっぱりか!」


愕然としながら真帆を見る俺。

すると真帆は笑みを浮かべて、じゃあまた明日です、と笑顔で手を振った。

それから頭を下げて去って行く。


俺は溜息を吐きながら、やれやれ、と思う。

花梨は、良いなぁ、とか言っているが。

有名アイドルだぞ。

どうなっても知らんぞマジに。


「有名アイドルが転校してくるってヤバくないか?」


「私は中学生だから分からないけど」


「.....分からないよなぁ」


そんな感じで俺達は会話をする。

そしてドアを閉めてから、うーぬ、と悩む。

因みにこの日のニュースだが。

マホマホに恋人が出来た!?、という感じの話題になっていた。

やっぱりか.....。



「オイ知ってるか!?今日ってマホマホが転校して来るって」


「は!?!?!あの超有名アイドルか!?!?!ウッソだろ!?」


「マジかよ!!!!?」


俺はそんな会話を聞きながら。

胃を痛くしていた。

県立天柱高等学校.....生徒数400人。

そんな学校だが。

マジなこの町の唯一の田舎の学校である。


「よお。どうした。冴えない顔して」


「何だ富義」


「何だ富義、じゃない。喜んだらどうだ。日本一有名なアイドルだぞ。転校して来るぞ。お前にもチャンスがあるかもだぞ。恋の」


「確かに.....そうだが.....」


富義駿河(とみよしするが)。

黒縁の四角形のメガネにそばかすの様な友人。

ガリ勉野郎だ。

真面目系の、であるが。

俺の数少ない本格的な友人である。


「喜べないんだ。すまないが」


「.....何故に?お前がアイドル嫌いなのは分かるが。女だぞ?」


「.....」


そのアイドルに心から好かれているって言えるか?

この状況では言えんわ。

まあその。


相手もそれなりに配慮してくるとは思うんだけど。

だけど他のクラスに当たって欲しい。

何故ならこのクラスに当たると、と思っていると。


キーンコーンカーンコーンと音がした。

そして猪熊先生。

つまり担任の先生が入って来る。


「お前ら!早速だが席に座れ!」


「先生!マホマホがこの学校に直転校して来るってマジすか!?」


「そうだな!しかも喜べ!この教室にな!」


「「「「「まzhヤァっ派ぁー!!!!!(マジにヒャッハー)」」」」」


男どもの言葉が言葉になってない。

うるさ過ぎる。

ってか、え.....?

青ざめながら廊下に出るドアを見る。


そして盛大に溜息を吐いた。

それから猪熊先生が、じゃあ入ってくれ!、と言ってからドアが開いてそのまま途轍もなく美少女のセーラー服の真帆が入って来る。


煌びやかなオーラを纏って、だ。

男もそうだが女の子も興奮し始めた。

きゃー!!!!!めっちゃ可愛い!、すげぇ可愛い!、とかで。


「「「「「うぉおおおおおおおお!!!!!」」」」」


「紹介だ!今日から仲間になるしん.....「翼くん!」」


猪熊先生の言葉を七色の声が途切らせた。

そして駆け寄って来て俺の手を握ってくる.....真帆。

せあ?、と思いながら俺は赤面する.....というか。

かなりゾッとした。


その正反対でコールド。

冷たーい、ってか寒いんだが。

凍り付いたんだが教室が。


「.....ま、真帆。お前何して.....そんな事をしたら.....マズイって.....」


「え?マズくないよ?だって私の好きな人だしこういうのもアリかなって思ったんだけど.....ダメ?」


「.....」


この日。

俺は居場所が無くなったと思った。

この教室に、だ。

何故ならとんでもないスキャンダルだから。


殺す、と言いながら立ち上がり。

続々と男どもが金属バットを手に取った。

そして続々と消化器を手に取った。

そしてどっかから取り出したバールを手に取る。

え!?バールっておま!?お前ら!!!!!

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