第217話 戻る準備
S級クラスへの昇級試験の為に要塞都市ミルトンへと一旦戻る事になった私と師匠はその日までにやらなければならない仕事が沢山あって、結局戻ると決めてからゆうに1ヶ月は過ぎていた。
昇級試験の受付自体はエルフの国にある常日頃お世話になっていた冒険者ギルドで申請をして受理されていたので問題はなかった。試験を申請してから半年以内に対象の竜種を討伐して討伐証明の部位を冒険者ギルドに納めれば昇級試験に合格となるそうで、期限に半年とは随分とのんびりした試験なんだなぁ~?って思ってたんだけど、それには理由がちゃんとあって、まず指定された竜種が直ぐに見つかるかどうかわからない上に自国で見つかれば良いけど、他国で見つかった場合はその国に行くにも時間が掛かるかららしい。
確かに1日2日でどうにかなる種類じゃないもんね。
冒険者ギルドに入る冒険者達や商人からのネットワーク頼りに依存するしか現在は方法がないのが竜種含めた特定の討伐対象なのだ。
また、見つけてもそう簡単に討伐させてくれないのが竜種でもあるとか。竜種ともなれば知能がある。なので一度発見されても討伐される前に逃げられるし冒険者の方が力が劣ってる場合は簡単に返り討ちにあってしまう。
その辺も考えて挑まなければならないのがS級クラス。だからこそ、その数は全ての国を合わせてもほんの一握りの人数しか居ないのだ。
「.....何だか本当にS級試験に受かるか心配になってきました」
「今更じゃないか?」
「.....そうなんですけどね」
仕事の引き継ぎやら、やるべき事は全て終わらせて明日にはエルフの国を発つ事になって、本当に今更ながらにS級になる必要があるのかどうかを悩み始めてつい言葉が口から出てしまったのを師匠に聞かれてしまい今に至る訳だけど。
よく晴れた沢山の星が煌めく夜空がよく見える屋敷のテラスで、俗に言う凄くロマンチックな場面なんだろうけどそこに居るのが私と師匠だからロマンチックでも何でもないんだけどさぁ。
「まぁ、カノープスとあのスタンピードを終息させたリンなら問題なくスパーンと竜種の首ぐらい切り落とすのも簡単じゃないか?それよりも見つける方に時間が掛かりそうだけどな」
「.....ああ、確かに。冒険者ギルドからはその後目撃情報もまだ挙がってきてないんですよね?」
S級試験に求められる竜種はワイバーン等とは違い元々目撃情報も少ない。ワイバーン等の上位種にあたる竜種はそれだけ人に見つかりにくいような場所に住み処を作っているからだろうと言われているからだ。だからこそ試験の申込みだけは先行して打診をし、情報があれば教えて貰えるように冒険者ギルドへは申告していたが、どうやら有力な情報は未だ入っていないらしい。
「そうだな。最悪どうしても見つからなかったらカノープスに探知して貰うから問題ないけどな」
「.....カノープスさんの探知能力凄すぎません?」
「まぁ、一応賢者と呼ばれるぐらいだからな」
勿論第三者の手を借りて竜種を見つけ出す事も違反行為ではない。ただ、隠れ住んでいる竜種を見つけ出せるような冒険者が居れば、の話だけどね。
その点、賢者と呼ばれるカノープスさんと現S級冒険者の師匠の力を借りれる私は他の冒険者からしたらズルい位置に居るように見えるんだろうなぁ。
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