第216話 昇級試験と竜種

S級クラスへの昇級試験が竜種の討伐とは。



「.....冒険者ギルドはS級の冒険者を量産するつもりがないと判断しても良いんでしょうか?師匠」


昇級試験と言う事は当然単独での討伐になる。竜種の魔獣を単独で倒せって結構無理ゲーなのでは?それともこの世界ではそれが当たり前にある事なんだろうか?


今、この瞬間、自分の常識が覆されたような気がしたわ。


「.....そう言う意図は冒険者ギルドにはないけどな、実際問題としてそれぐらい出来なければS級は名乗れないって事だな。S級になれば冒険者ギルドだけでなく、色んな国からもそれなりの恩恵を受けれるようになる。けれどその権利の為には受けた依頼は必ず成功させなければいけない。S級を名乗るにはそれだけの実力が必要になるって訳だよ」

「.....つまり、師匠やカノープスさんは単独で竜種を討伐出来るって事ですよね?」

「そうだな。流石にエンシェントドラゴンクラスとかは1人で討伐したいとは思わないけどなぁ」


.....その言い方だと討伐したいとは思わないけど出来ない事はないって事ですよね?


師匠もカノープスさんも物凄く強いんだろうなぁとは常々修行してても思ってたけど多分私が想像する以上に強いんだろうなぁと思う。まぁ、その本気の実力を見る機会がないのが現状なんだけど、それって言い換えれば現状が平和って事なんだから良い事だよね。


「それにしても、試験にするぐらい竜種ってあちこちに直ぐに居るモノなんですか?」

「.....そうだなぁ.....一番数が多いのはやっぱりワイバーンだな。あれなら比較的単独でも倒しやすいし数もそれなりに居るから直ぐに試験も開始出来るかな?」


ワイバーンかぁー....。確かにワイバーンなら以前のスタンピードの時にも何体か飛んでたのを見たなぁ。


「エルフの国にも居るんですか?」

「いや、この国には居ないから取り敢えずはグレイス王国へ1度戻る事になる。」


.....グレイス王国と言うことは。


「要塞都市ミルトンへ戻るんですか?」

「そうだ。あそこなら王都からは離れて居るから万が一何かしら問題が出てもまたエルフの国には直ぐに戻れるしな。何よりリンもそろそろ自分の家が気になるだろう?」

「あー……」


確かにそれは気になるかも。

時々黎明が山に行く際に様子を見て来て貰って問題はないと定期的に確認はしてたけど、実際に自分の目で見るのとは違うかもしれないし。


「.....ミルトンの街もそれなりに変わってますかね?」

「そうだなぁ……基本的にミルトンは流れの人の出入りは多いが実際に住んでいる人は余り変わらないんだ。でも俺達が街を出た後に結婚して子供が生まれた家族も居るだろうから小さい子供は増えてるかもしれないな」

「ああ!確かにそれはあるかもですね!」


自分が歳を取った分、あの街に住んでいた人達も同じだけの年月を重ねているんだから当たり前の事なんだろう。


でもその街の変化を、この目で見られなかったのは寂しい事だなと、ほんの少しだけ思ったのだった。


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