第215話 冒険者活動本格再始動?

カノープスさんがグレイス王国に戻ってから1ヶ月が過ぎた。その間にグレイス王国の情勢は一気に動いたと言っても過言ではないだろう。


まずカノープスさん曰く、『クソ聖女』さんは極刑が決まり日を置かずして刑が執行されたそうだ。刑を執行するにあたって、流石に肩書きが聖女のままでは国としても都合が悪いようで、最初に国中に彼女が『聖女ではなかった』理由を掲げ、更に今までの所業を誇張することなく全て洗いざらいグレイス王国内外へと知らしめた。


これによってグレイス王国は1度は『聖女』と呼ばれた彼女を『正当な理由』で刑に処したと言い訳が立つ事になる。


実際に彼女が行った所業を全部見たらもう庇う必要等一切ないよね?って思うぐらい酷くて、自業自得としか思えなかった。同郷の一人として同情したい気もなくはないけど、流石にあの報告書を見たら同情するだけ無駄だと思ったのだから仕方ないよね。


そして第二王子はまだ彼女の魅了魔法が完全に解けていないので北の塔に幽閉されているとか。正直なところ、魅了が解けても塔から出されて王族として生活が出来るのかは微妙みたいだけど。勿論これはカノープスさん談。


エルフの国に対するグレイス王国の対応としては国王陛下が直接謝罪の意を表して、双方共に何らかの対応を協議したとの事。詳しくは教えて貰えなかったけどまぁ当然だよね。


本来ならこう言ったある意味国の内情に突っ込んだ話しなんてそもそもとして私みたいな単なる一般人?には話される事じゃないだろう。けどまぁ、エルフの国の一応王族に連なる師匠の弟子でもあるし、カノープスさんの弟子?になるのかは微妙なとこだけどそんな私だからこそ師匠もカノープスさんもその周囲の人達も私にはある程度の事情を説明してくれるのだ。



......まぁ正直に言えば、それ、私には関係ないよね?と思わなくもないんだけど.....


それでもまぁ詳しいこの世界の情勢を知ってるのと知らないのとでは私のこの世界での関わり方も変わってくるだろうから有り難いと言えば有り難い。


「......それで、カノープスさんは結局魔導師団は辞めないんですよね?」


エルフの国に居た時は辞めたいなんて本気なのか冗談なのか反応に困るような事を言ってたけど。


「今のグレイス王国には必要な奴だからなぁ.....辞めたいと言っても受理されないだろうな。そもそもとして結構自由気儘にやって部下の魔導師達を困らせてばかり居るんだから何言ってんだって話なんだけどな」


師匠はそう言いながら苦笑を浮かべる。


「.....確かに.....そうですよね」


きっとカノープスさんの部下の人達は毎日が大変な苦労をしていることだろう。


「まぁ、取り敢えずはグレイス王国としても一区切りついただろう。後は国内での問題だから国王陛下を筆頭に何とかするだろう。それが王族が王族である為の義務だからな」

「.....そうですね」



あの国にはそれなりに大事だと思う人達も居るから頑張って欲しいな、とは思う。


「それよりリン、そろそろ本格的に冒険者活動を再開させようかと思ってるんだがどうだ?」

「.....え、それってエルフの国を出るって事ですか?」

「いや。拠点はここにするつもりだが、今も冒険者活動はしてるがあくまでもこの国中で比較的簡単な物を中心に活動してただろ?それを国外に伸ばす。ついでにこの機会にリンのS級クラスへの昇格試験も挑戦してみたらどうかと思ってるんだが....」

「私のS級クラスへの昇格試験!?」


え、S級ってそんな簡単になれる物だっけ?


「ああ。俺個人としては既にリンはS級に匹敵する実力があると思ってるし、S級になれば一国の王族でも縛り付ける事は出来なくなる。冒険者活動を本格的に開始するのと同時に出来れば取っておきたいかな.....勿論お前が嫌なら先にしても構わない」


ふむ。確かに師匠の言うことは利にかなってるし、私に不利益がある訳ではない。逆に今後もし冒険者活動で名声が上がったら場合てどこの国にも縛られる事なく冒険者を続けていくには必須な資格になるだろう。


「.....そうですね。確かに取っておいた方が良いかも知れないですけど....そんな簡単にS級クラスになれるものなんですか?」

「まぁ簡単ではないかな。でも俺とカノープスから鍛えられたお前なら簡単な部類になるんじゃないかな」

「.....S級クラスの昇格試験って何をするんですな?」


確か以前ギルドで簡単に教えて貰ったS級クラスの試験はある魔獣を倒すことだと聞いた。何の魔獣かはその時には教えて貰えなかったし、私も聞かなかったけど.....。




「.....その時々によって種類は変わるんだが....まぁ簡単には言うと竜種の討伐だ」







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