第214話 閑話 グレイス王国にて・3
「単刀直入に言わせて頂きます。あの聖女は聖女にあらず」
淡々と必要なことだけを必要な言葉だけで紡ぐカノープスに、グレイス王国国王はどうしたものかと言うような表情を浮かべながらチラリと隣に居る宰相へと一瞬だけ視線を向けた。
勿論、その視線に気がつかない宰相とカノープスではない。
「.....だがなぁ、カノープス。1度は聖女と認定した者を罪人として極刑を与えるのは国として他国に対して要らぬ弱みを見せることになるのではないか?」
「その時期はもう過ぎているんですよ、陛下。あの聖女は事もあろうにエルフの国に対して喧嘩を売ったんです。逆に何の処罰も与えなければ他国に対しての示しがつきません」
「.....だがなぁ……」
チッ。
「.....魔導師長....」
舌打ちが聞こえたのか宰相がカノープスを見てコホンと嗜めるように視線を向けるがカノープスは完全にそれを無視した。寧ろ気にする必要などないだろう。これだけ問題を起こしてばかりのクソ聖女を庇う意味がわからない。あんなのはこの国に残しておいても何の役にも立たないだろう。寧ろ、害悪にしかならないのだがその事に王族だけが気がつかない。
.....いや.....王太子殿下だけはあの聖女に元々近づかなかったからもしかして感じる何かがあったのかも知れないが.....
「.....今回の件に関して、第二王子殿下は関係がないのでしょう。実際に報告書を読んでも謹慎中だった王子殿下にあの聖女が接触出来たととれる事項はありませんでした。おそらくあの聖女の独断だと思われます。このまま王子殿下と引き離せばいずれ魅了魔法の洗脳は解けるでしょうから、殿下には引き続き洗脳が解けるまで謹慎をして頂き、あの聖女には極刑でも良いのでは?グレイス王国からの追放でも構いませんが、あれを野に放てば他国に迷惑を掛けますからね」
「......そこまで言うのか.....」
そこまで言わなければ理解しないのは誰だよ、と心の中だけで取り敢えずはおさめておく。正直、この国に対しての思い入れはそれ程有る訳ではないから捨ててしまっても自分的には問題はないけれど、そうすれば残された魔導師団に所属している魔導師達が結果的な後始末をさせられてしまうだろう事は簡単に想像がつく。それは流石に同情してしまう。
結局はそれなりに長い間一緒に働いてきた魔導師達には愛着があるのだ。
「陛下、一番考えなければならないのは聖女の事ではなく、グレイス王国の事です」
「.....宰相までそう考えるのか」
「勿論です。聖女はこのままではこのグレイス王国にとって更なる問題を起こす可能性が高いです。今ならエルフの国に対しての問題行動で処罰も出来ます」
「.......」
じっと考え込んでいる国王陛下に宰相閣下の言葉がことのほか効いたようだ。
「.....わかった」
聖女の名をグレイス王国を発展させていく為の切り札にしようとしていた国王陛下の思惑は、その聖女によって打ち砕かれた。
あのクソ聖女は二度と国の外に出る事は叶わないだろう。
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