第201話 杖
「じゃあ杖の材料はこれだ」
では早速と言うようにカノープスさんは庭から屋敷に戻るとサロンへと向かい、テーブルの上に世界樹の枝とアダマンタイトを取り出した。サロンへと向かう途中に師匠と会ったので杖の話をしたら一緒に行く事になり、後でお茶を持ってくるように執事さんへと頼んでいた。
「へぇ、カノープスと同じ素材の杖を造る事にしたんだな」
「ああ。リンの魔力は俺並みかそれ以上有りそうだし、使う魔法も特級クラスの魔法を使うだろうから一番親和性の高い物を最初から使った方が良いだろうからな」
「確かにな」
師匠も素材を見ただけでカノープスさんの杖と同じ物ってわかるんだ。まぁ、わかるよね。
「じゃあサクッとリン、杖を造ってみるか」
「は?」
「は?じゃなくて、杖を造るのはお前だからな」
え?私が造るの!?どうやって!??
私がはてなマークを飛ばしながら素材とカノープスさんと師匠を見比べていると、師匠が説明をしてくれた。え、そこはカノープスさんが説明するとこじゃないの?
「この国の魔法使い達が使っている杖は基本的には自分で造るか、専用の店で売っている物になるんだけどな、店で売っている杖は初心者から中級クラスの魔法使いが使う物で一人前になった魔法使いが使う杖は自分で自分に一番合った物を造っているんだ。だから杖専用の店には素材も沢山の種類が揃えられてるんだ」
「......へぇ……自分で自分の杖を」
「自分の魔力で造るから使いやすいそうだ」
「師匠は杖は持ってないんですか?」
「俺は基本的に武器特化だからな。魔法も勿論使うがメインじゃないからな。それに.....」
師匠が腰に差していた剣を取り出して柄の部分を私に見せる。丁度剣の刃と柄の間ぐらいに翠の宝石が嵌め込んである。
「この石が剣に魔力を馴染ませやすくしてくれるから俺にとっては剣が杖の代わりみたいな物かな」
「へぇ~……」
そっか。それで魔剣みたいな事が出来るのかぁ。でもそんな事が出来るのって、師匠だからの可能性が高い気がするけど。
「じゃあ説明が済んだところで杖造りを再開しようか」
.....カノープスさんは一切説明に加わってなかったけどね?
「あの、そもそもどうやって造るんですか?」
「やり方は簡単だよ。各々の素材に手を翳してごらん」
私はカノープスさんに言われた通りに世界樹の枝とアダマンタイトに両手を使って掌を翳す。
「そしたら魔力を流しながらどんな杖が欲しいか頭の中で想像するんだ。こんな形の杖が欲しいとか、形が思い浮かばなければどんな魔法に杖を使いたいかでも良い」
.....どんな.....?その言い方一番困るかも。うーん。カノープスさんと同じ様な杖じゃ代わり映えしないし、かと言って某日本の魔法少女シリーズみたいな可愛らしい杖じゃこの世界には合わないしねぇ.....。そう考えると意外と理想の杖って難しいかもしれない。
「.....あの、一晩考えてから明日また造るのは駄目ですか?急に言われてもどんな杖が欲しいかイメージが決まらないと言うか....どうせ造るなら一番納得出来る杖を造りたいと言うか」
両手を一旦素材から外してカノープスさんに視線を戻してそう言ってみれば、意外と簡単に了承してくれた。
「杖に拘る魔法使いは多いから、リンの主張はなんら間違いではないよ。逆にそれだけ真剣に杖の事を考えてるって事だから悪いことじゃないしな」
「はい。頑張って考えてみます!」
取り敢えず1日猶予が出来た訳だけど、杖のデザインかぁ……私はどんな杖が欲しいんだろう?他人の杖ならこう簡単にデザインが湧きそうだけど、自分の物となると難しいなぁ.....。
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