第200話 賢者の教え・2

「そう言えばリンは杖は使わないのか?」

「杖.....ですか?」


カノープスさんはそう言って自分の持っている杖を私の方へと差し出したので手に取ってみると、明らかにそのサイズとは違う軽さしかない杖に素直に驚いてしまった。


「そうだ。リンは基礎もしっかりしているし、コントロールも出来ているから魔法の発動からして素早いが、杖があるのとないのとでは更に素早くする事が出来るようになるから魔導師としては持っていても損にはならない。宮廷魔導師には必需品になっているみたいだが」


どうやらひとつの手順ですら失敗が出来ない宮廷魔導師からしてみれば杖は魔法を使うのに必要な物らしい。きっと騎士達にとっての剣のような物なのだろう。


「.....杖ってやっぱり種類とかあるんですか?」


確かに魔法使いって言うと魔法の杖ってイメージはあるよね。某有名な魔法使いの映画もそうだし、日本のアニメの魔法少女達もそうだもんね。


「そうだな。杖の素材は種類が多いから自分の魔力に合った素材から作る者が殆どだな。因みに俺のこの杖はベースに世界樹の枝を使っていて、この上の部分の玉にさっき話したアダマンタイトを使用してるんだ」

「へぇ………」



世界樹の杖!何か凄いファンタジーの世界ってイメージだよね!!


「リンは俺と同じか、それ以上に魔力が高いからこの杖も使いやすいと思う。持ってみろ」


言われて私はカノープスさんの杖を手にしてみると、確かに凄く手に馴染んで本能的にこの杖なら自分の魔法が今以上に使いこなせる気がした。


「....凄い.....」

「だろう?まぁこの杖自体をやる事は出来ないが、素材なら提供してやる事が出来るからリンが良ければ杖を作るか?」

「良いんですか!?」

「駄目なら最初から提案しないぞ」

「なら私も私専用の杖が欲しいです!」


まるで手に吸い付くような、自分の一部みたいな感じを体験してしまったら欲しくなっても仕方がないだろう。


「あ、素材は買い取りします!幾らぐらいですか?.....払える金額だと良いんですけど....」


何せ世界樹の枝とアダマンタイトでしょ?何かすっごい金額のような気がする.....。


私がそう言えばカノープスさんが苦笑しながら私の頭をポンポンと撫でた。まるで幼い子供を見るようなその視線に内心困惑してしまう。


「お金はいらない。師匠から弟子への贈り物だからな」

「え.....でも」


贈り物の金額の桁が間違ってませんか?


「師に弟子入りしている魔導師には杖は師匠から弟子に贈る物だと決まってるんだよ。リンは言ってみれば俺の弟子のようなものだからな。俺が杖を贈るのが妥当だ。しかも素材は俺が持っている物だから問題ない」


師匠から弟子に。


.....所謂伝統的なモノなのかな。まぁ確かにそれならカノープスさんの言う事も一理あるけど.....金額的に大き過ぎません?いや、金額の問題じゃ無い事は理解できるけどね!?


理解は出来るけど理解はしたくないと言うかね。

まぁでも.....。


「それにシリウスからほ弓と剣を貰ったんだろう?なら俺からも杖を受け取るべきだろ?」


断言しながらニコニコと笑みを浮かべるカノープスさんに苦笑してしまう。うん、師匠らしい事がしたいんですね。


「.....わかりました。有り難く頂きます」


万が一貰った杖を壊してしまった後の事を考えると使う事自体が今から怖いけど、カノープスさんが私を弟子だと認めて弟子に杖を贈りたいのであれば、有り難く頂く事にしましょうか。



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