第191話 これから
「逆に言うとよく半年も探したな、って感じはするけどな」
師匠が苦笑しながらそう言う。
「....本当ですよね。なんでそこまでして私を探し出したいのか理解不能なんですけど」
そりゃあスタンピードで溢れた魔獣を一掃できるぐらいの力が使える人物が自分達の国に居たら今より更に安心出来るのかも知れないけど、まだ子供ってわかってて政治利用しようなんて健全な大人の、ましてや国の頂点に立つおうぞがする事じゃないと思うんだけど.....それともこの世界ではそれが普通なんだろうか?
「上の奴らの考える事はわからないな。そんな事をする暇があれば一体でも多く魔獣を狩った方が有意義だと思うんだけどな」
「私もそう思います」
本当だよね。王族の我が儘に振り回される騎士の人の苦労が忍ばれる。
「....でも思ってたより早く諦めてくれたのは嬉しいです」
もっと年単位で人の国に行けないかと思ってたから。その点は堪え性のない人の国の王族で良かったなとしか言いようが無いけどね。
「まぁそうだな。俺ももっとしつこいかと思ってたからなぁ.....リン、どうする?」
「何がですか?」
「いやだから、王族がお前を探すのを諦めた訳だからいつでもこのエルフの国を出ても良いようになった訳だろ。このままこの国で修行を続けるか、ミルトンの自分の家に戻るか....お前の好きなように選択出来るようになったって事だ」
言われて気づく。
ああ、そうか。確かに師匠の言うとおりもう自分の家に戻っても問題ないんだ。そもそもが王族からの干渉を防ぐために雲隠れしたんだし....それが無くなった以上、元の国の元の場所に戻っても良いわけで....。
でも.....
「私がこの屋敷に居ても問題がないならまだエルフの国に居たいです。まだまだ修行も途中だし、翻訳の仕事も少ししか進んでないし....」
まぁ、街に一人で住んで良いならそれでも構わないけど。別に師匠の実家の屋敷を拠点にする必要は全くないんだしね。ああ、でもその場合は馬車で送り迎えをしてくれてるエルフさんが大変かもしれない。
「それは問題ない。父さん達もウェズンやアルドラもお前の事を気に入って家族みたいに思ってるからな。特にアルドラなんかは今まで末っ子だったからか、妹が出来たみたいで嬉しいみたいだぞ」
「え!?」
マジですか.....あのツンデレ具合は妹相手のツンデレだったのか.....うん、嬉しいのは嬉しいけどちょっとだけ微妙な感じも.....
複雑な思いもあるけど家族みたいに思って貰えるのは素直に嬉しいかな。
「だから住む家の事を考えているなら心配はいらない。今まで通り家に住めば良い」
「.....それなら修行を続けたいし、翻訳の仕事も最後までキッチリとやりたいです」
蔵書数が多いから何年掛かるかわからないけど、人の国に戻って何かやらなきゃいけない事が有るわけでもなく、それならエルフの国でミッチリと修行した方が将来的には役に立つだろう。幸い、私はまたまだ若いんだしね。
「そうか。じゃあ明日からもっと厳しくするか!」
「.....それとこれとは話が別です!」
師匠の爆弾発言に私は慌てて止めに入った。
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