第190話 半年

早いもので、わたしがエルフの国に来てから半年が過ぎた。修行と仕事を平行しつつ、順調に身に付きつつある修行の成果。何事もなく穏やかにすすむ毎日に、このままエルフの国を生活基盤にしても良いんじゃないかと思ってしまう。


黎明は週に一度は山の方に戻りつつも私と同じようにエルフの国を堪能しているみたいで時々ふらっと姿を消してはいつの間にか戻って来るを繰り返していた。一度どこに行ってるのか聞いてみたが秘密だと言って教えてくれなかったので、もしかしたら人が行ってはいけないような場所に行ってるのかもしれないなと結論を出し、それからは一度も聞いていない。


聖獣にも聖獣の付き合いみたいなのがあるかもしれないしね!



修行の方は基礎訓練を主軸にしていた物が段階を経て今は各種武器の訓練へと移行しつつあった。弓は要塞都市ミルトンにいた頃にギルドマスターだった師匠から直々に手解きを何度か受けていたから特に問題なくマスターした後、次は剣を、と言う事になり現在に至る。


正直他人が剣を振っているのを見ると簡単そうに見えるのに、実際に自分がやるとこれが結構大変だった。


まず、背がまだまだ低い私に合う長さの剣が少ない事。仕方なく冒険者になり立ての初心者用の剣を使って魔獣討伐の訓練なんかをするんだけど攻撃力が明らかに小さいから一回で討伐出来ずに時間が掛かって仕方ない。


まぁ、師匠に言わせればそれが訓練だからって言うんだけど正直魔法で一撃で仕留めたくなるのは性格故かなぁ。



そんな訳で初心者の剣を使ってまずは剣の振り方から対魔獣に対しての動きやら何やらを最初に習い、その後実践形式で剣術も身に付けていった。もう少し身長が伸びたら私に合う剣を用意してくれるそうだ。


私専用の剣とか、楽しみすぎる。



そしていつの間にか定期的に人の国から宮廷魔導師のカノープスさんから師匠の元に連絡が来るようになっていた。本当にいつの間にそんな約束したんだろう?師匠達の事だからきっと魔法でやり取りしたんだろうなぁ。


実際に今現在カノープスさんから来る連絡も魔法で手紙が送られて来るみたいなので、そう言う通信の魔法が2人の間にはあるんだろうと思う。いつか私にも教えて欲しいなぁと思ってる。だって便利そうなんだもん。



「リン、ようやく国はお前の捜索を諦めたみたいだぞ」

「え.....本当ですか?」



その日のカノープスさんからの定期連絡は私を探していた国王が国中をくまなく探しても私が見つからないとの事でとうとう捜索自体を打ちきったとの連絡だった。魔獣対策もある事から、長期間私の捜索の為だけに騎士団をフラフラさせてはおけないとようやく気が付いたのだろう。


.....半年かぁ.....漸く諦めてくれたのは助かったけど、そこまで必死に探す必要ある?


って言うのが私の個人的感想だ。そんな事に騎士団を投入するなら普段から魔獣対策しっかりしとけば良いのにね。






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