第189話 意外だった
翌日からはスケジュール通りに午前中を修行に、午後からは翻訳の仕事で一人で王宮に通うと言う生活が始まった。王宮へは専用の馬車で送り迎えをしてくれるので厳密に言えば一人ではないんだけど。近いから歩いて行っても全く問題ない気もするんだけど、流石に王族に連なる者が保護している人物に対しての対応ではないから、これだけはさせて欲しいと言われては断るのも申し訳ないので素直に受け入れた。
翻訳作業は正直ずっと同じ単調な作業だから気分的に飽きるんだけど、そんな時は率先してお茶の準備をして休憩を挟むようにしている。するとあら不思議。効率も上がるようになったので結果オーライだろう。うん、やっぱり適度な休憩は必要だよね。
そして思っていたより時間が掛かる事に気がついたのは翻訳を始めて少ししてからだった。この世界、一応書籍があるわけだから印刷に近い技術はあるらしいんだけど当然パソコンが有る訳ではなく、基本原本は自筆なんだよね。だから翻訳するのも全部自筆だから綺麗に書かないと読む人が困るだろうからひたすら綺麗に綺麗に書くように気をつけてるから余計に時間が掛かるんだよ。
確かに今まで読んでた本も自筆だったから気がつかない私がダメダメなんだけどね。
....それにしても、言語が自動翻訳されるのはわかるとして、この世界の文字も普通に書けるのが何度見ても不思議だよね....
理屈はわからないけれどそうなるように女神様がしてくれたんだろうけど、これ日本語で書いてもこちらの世界の人にはこちらの言語に勝手に翻訳されて見えてるみたいだから余計に不思議に思うんだよね。
以前私が書いた文字がどう見えるのか師匠やマリッサさんに見て貰ったら普通に読んでたから、2人の目にはこちらの言語で見えてたって事なんだよね。私は日本語で書いたのに。
まぁ、仕事としての翻訳だからちゃんとこちらの世界の文字で書いてるんだけど。資料として残る物を流石に日本語で書く訳にはいかないよ。
そして仕事をしながら他の人をチラリと観察してみれば意外と真面目に仕事をしている事に吃驚した。ウェズンさんやアスケラさんは見た目も性格も真面目そうだから仕事もそつなくこなすんだろうなぁと勝手に想像してたんだけど、それよりも明らかにサボってばかりのファイさんがその2人よりもかなり早いペースで翻訳していくのを見て、人は見かけによらないと言うのを身をもって実感したのは私的に新しい出来事だった。何故あの仕事内容でそのスピードの翻訳が出来るのか不思議でならない。
....でもファイさん、そんな有能さを見せてるから何度提出しても異動願いが受理されないんじゃないのかなぁ?本気で職場を異動したいならその有能さは出しちゃいけないよね?完全に逆効果では?
そう内心思ったのは口には出さなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます