第185話 翻訳の仕事・2
翻訳の作業部屋へと入るとそこは機能性重視の造りをしてはいるけれどやはり王城の一部とあって広くそこそこ豪華な一室になっていた。
.....辺境伯家の応接室みたいな感じだなぁ....
私から見たらおおよそ仕事をするような部屋には見えないけど、この世界ではこれが常識であって、逆にこれでもシンプルなのかも知れない。
部屋の中には私達以外に2人の男性が居て作業中だったようで、恐らく翻訳の仕事をしていたのだろう。
この2人がウェズンさんの同僚かな?
「リン、この2人は右からファイとアスケラと言って僕の仕事仲間だ。つまりリンともこれからは同僚になるね。騒がしい2人だけど翻訳の腕だけは確かだから安心してくれて良いよ」
ウェズンさんが爽やかに2人を紹介してくれるけど何気に2人の事をディスってる気がするのは私だけかな?
「おい、ウェズン。翻訳の腕だけはって酷くないか!?」
「そうだよ!翻訳だけじゃなくて全てにおいて確かなのに!!」
「......そう言うところが駄目なんだってば。自画自賛が過ぎる....特にファイ」
「事実じゃないか!僕は顔も頭も良いし仕事だって完璧にこなしてる。仕事は翻訳と言う文系だけど狩りの実力だってある。ほら!僕程完璧なエルフはどこにもいないよ!?」
.....いや、普通に居ると思う。
私は内心そう思いながらチラリと師匠に視線を向けると同じ事を考えていたのかウェズンさんも師匠を見ていた。
だよねぇ!同じ事考えてる人は多いだろう。
「ん?どうしたお前ら」
師匠ご私達の視線に気がついてキョロキョロと私達を見る。
「いえ、イケメンで頭が良くて仕事も出来て強い完璧なエルフって言われたんでつい」
私の知る中では師匠以上に完璧なエルフは居ない.....って、師匠はハイエルフだっけ。
「はぁ?」
「.....僕もそう思いましたがそもそも兄上と比べる事自体が間違ってますよね」
ウェズンさんも師匠に視線を向けたがよくよく考えれば当然の事だと判断し自己完結してた。
.....この弟妹、兄愛が過ぎる.....まぁ家族仲が悪いよりは良いんだろうけど、これ師匠が彼女でも連れてきたら大変な事になりそうだよね....師匠ガンバレ!
思わず師匠に同情めいた視線を向けてしまう。
「はぁ.....いい加減話を戻せ。仕事が余計に進まないだろう?」
「ああ!そうですね。ファイ、アスケラ、此方が翻訳を手伝ってくれる事になったリンだ。僕の兄上の弟子にあたる子で中々優秀なんだよ。ただエルフの国に来るのは今回が初めてだからこの国について知らない事も多々あるだろうから解らないことがあれば教えてあげて欲しい」
「リンです。宜しくお願いします」
「アスケラだ。宜しくリン」
「宜しくね!僕がファイだよ。現在彼女募集中の将来有望性大の物件だよ!」
.....どんな挨拶だよ.....
ひきつりそうになる頬を押さえて笑顔で挨拶をする。そもそも子供相手にする挨拶ではないよね?
人より永く生きる分、その辺りの感覚が人とは違うのかも知れない。
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