第171話 禁書エリア

師匠の実家の書庫はそれはそれは大きかった。私が日本で生きていた時に住んでいた市にあった図書館並みに広く蔵書数も多い。ただ誰が見ても解りやすいように分類分けをされている訳でもなく、どうやら入り口に近づく程新しい本である事かわかる。つまり、歴代の御当主様御一家が集めた本が部屋の奥から順番に収納されていると言う事だろう。


「.....ならやっぱり奥から見ていくべきだよね!」


そう考えて私は部屋の一番奥へと歩いていく。それにしても部屋の中が広すぎるような気がするんだけど....どう考えても物理的に建物の側と書庫の広さが比例していないんだよね?


「.....これはあれかな?マジックバッグみたいに空間に干渉して広く多く収納出来るように手を入れてる感じ?」


それならばこの蔵書数にも納得がいく。そうでなければとてもじゃないけどこれだけの本を納めるのは無理だろう。そう考えてみると確かに空間魔法の痕跡が彼方此方から伺える。


「....初代の当主が創ったのかな?」


だとすると師匠の先祖でもある初代当主は凄い魔法の使い手だったんだろうなぁ。エルフが魔法を使う事に長けているとかエルフ独自の技術とかも関係してるんだとは思うけど.....


「確かにこんな技術がエルフにあるなら友好関係を維持してエルフと繋がっていたい他国の王族達が思うのも仕方ないよね」


上手く付き合ってエルフの王公貴族達とそれこそ結婚とかの縁でも結ばれよう物なら優遇して貰えると考えたりもするだろう。まぁあからさまなアプローチはしないだろうけど。


....そしてそれはシリウス・フラムスティードと言う一応王族の血筋に生まれた師匠の弟子になった私にも関係してくる事になる。私に近づく事で師匠の、そしてその先のエルフの王族との繋がりを求めようとする馬鹿が沸いてくる可能性はゼロではない。


それもあって自分の事情も相まってせっかく買ったばかりの自宅を離れる事にもなっちゃって....こっちはただのんびりゆったり異世界でのスローライフを楽しみたいだけなのにさぁ!


「.....私のスローライフを邪魔する奴は片っ端から片付けてやりたい....」


やろうと思えば今の自分でも出きるだろうけど魔法のコントロールや威力がヤバすぎて余計に目立つ事になりそうだろうからやらないけどね!



そんな事を考えながら書庫の中を歩いていると部屋の奥に辿り着いた訳でもないのにこれ以上先に進めなくなった。まるで何かしら見えない壁でもあるかのように。


「....ああ、もしかしてこれより先が禁書エリアなのかな?」


手をそっとその見えない壁に添えてみると、掛けてある魔法の種類はメダ様から貰った知識で理解出来るようになっているから何となく私でもわかる。だからこの禁書エリアに入る事は私には可能だろう。


.....わかるけど後々面倒な事になりかねないし、無理に禁書を読む必要もないよね....


幸い禁書以外にも読める本は沢山あるんだしね。自ら問題ごとを起こす必要もないだろう。


そう思い、さっさと禁書エリアから離れる私だった。



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