第170話 書庫

屋敷に戻ってから少しして師匠はナシラさん達との飲み会に向かう為に早々に出て行った。その間は出来れば屋敷に居るようにと言われてしまった為に絶賛暇な訳なんだけど。


....うーん....やることが無い時って本当に暇なんだよねぇ……何かないかなぁ?


黎明も居ないので話し相手もおらず、さてどうしようかと悩む。


そんな私を見かねたのか、師匠の屋敷の侍女のアンナさんが書庫か庭に出てみてはどうかと提案してくれた。


「書庫があるんですか?」

「はい。御当主様を筆頭に皆様読書がお好きなものですから色々な国から取り寄せた本が納められてるんです」


興味津々に尋ねればアンナさんはそう教えてくれた。


「是非見てみたいです!」


もしかしたら人の国は流れていないエルフの国独自の本があるかもしれない。それなら絶体に読んでみたいよね。メダ様のおかげでどの言語でも読めて話せるようになってるからエルフ独自の言語で書かれた書物でも全く問題なく読めるしね!せっかくエルフの国に居るんだし、ここでしか出来ない事は全部やらないと損だわ!


「ではご案内します」

「はい!宜しくお願いします」



アンナさんの案内で書庫に向かい、部屋に入った途端あんぐりと思わず口を開けて部屋中を見上げてしまう。


「え、これが書庫?」


そこはまるで図書館だと言われても可笑しくないぐらいの蔵書の数でよくもこれだけの数の本を集めたなぁと思うぐらいの膨大さだった。


「....よくこれだけ集めたねぇ....?」

「此方にある蔵書は初代フラムスティード様からずっと集められて来た物なのです。ですからこれだけの量になってしまったようで」


アンナさんも苦笑を浮かべながら教えてくれる。流石にこの量の本にアンナさんも思うところがあるのかもしれない。だってこれだけの本を管理するのって大変だよね?


「じゃあ、かなり年代物の本もあるって事ですよね?私が読んではいけない本とかありますか?」

「特に読んではいけない物はないそうですが、ただエルフの王族だけが読める禁書を保管している場所が書庫の奥にありまして王族以外は入れないよう結界が張られてますのでご注意下さい」

「.....エルフの王族だけが読める禁書....」


うわ~……すっごく読みたい。読みたいけど禁書なんだから仕方ないよね.....でも読みたいけど...


「結界が張ってるなら読みたくても読めないと思うので気をつけて奥には行かないようにしますね」


まぁ奥に行くまでにも沢山の本があるんだし、奥まで行く時間はないだろう。


「では夕食のお時間になりましたらお迎えにあがりますので御ゆっくりどうぞ。入り口付近にありますテーブルにお茶の準備をしておきますので宜しければどうぞご利用下さいね」

「はい、ありがとうございます」


アンナさんがそう言って書庫を出ていくのを確かめて私は書棚に近づき本を物色し始めたのだった。




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