第169話 師匠の友人・2
改めてナシラさんを師匠から紹介して貰う。ナシラさんは師匠が冒険者になる前からの知り合いらしく所謂幼馴染みなのだとか。
「え?じゃあもしかしてナシラさんも貴族なんですか?」
師匠の幼馴染みなら小さい頃から家族ぐるみで知り合いだろうし、そうなると必然的に貴族と言う事になるだろう。
え?私の周りそんなのばっかじゃない?平穏な生活をするのが将来的な希望なのにどんどんそれから離れていってる気がするのは私の気のせいだろうか?
「ん?ああ、まぁな。でも貴族としてちゃんと王様の側で働いてるのは親だし俺は次男だから結構好きな事をさせて貰えてるかな?だから身分なんて気にしなくて大丈夫だよ!」
「いや.....そう言う訳には....」
良いのかな?いや、ダメでしょう?
「そもそもシリウスの弟子なら多少態度をでかくしてても誰も文句は言わないから大丈夫大丈夫!」
そう言ってサムズアップするナシラさんに首をブンブンと横に振る。
「.....お前なぁ....何を無茶な事を言ってるんだ....」
呆れた視線をナシラさんに向ける師匠が常識のある人で良かったと心底思ったのは初めてだった。
うん、何だろう。やっぱりエルフと人では一般常識が違うのかも知れない。師匠はずっと人の国の冒険者ギルドでギルドマスターをしてたから人の常識も持ち合わせているのだろうけど。
「でも事実だろ?俺の家は王族に仕えてる貴族だけど実際に仕えてるのは両親と兄さんだけだし。でもシリウスは一応王族だからな!そんなシリウスの弟子なら俺らより偉いって訳だ」
ニッと笑顔で言うがそれは違うと思う。私は全く関係ない。
「まぁようはシリウスの弟子なら誰も手出しはして来ないって事を言いたいだけだ。中には馬鹿な奴も居るかも知れないけどな。特に女関係で」
「え?一番無さそうな所で来るとか?」
まさかの女性関係で?
「いや、無いから!!」
「.....シリウスに思い当たるところが無くても相手はどうだかわからないだろう?勝手に好きになって嫉妬するパターンだな」
あ~……それは有りそうかもしれない。基本的に師匠はハイエルフだけあって美形なんだよね。年齢不詳。街を一緒に歩いていてもチラチラと女性達の視線が師匠に向かっているのにどれだけ気が付いた事やら。師匠はそんな視線にもう慣れているのかシレッとした表情で歩いていたけど。
「常に俺が一緒にいるから大丈夫だし、リンはそもそも強いから何とかするから大丈夫だ」
「.....いや、そうなる前に何とかして欲しいですけど?」
何故私がどうにかする方向になっているのかが不思議過ぎる。いや、どうにかするけどね。
「それで、そんな事だけを言う為だけに俺達を探していた訳じゃないんだろ?」
「ん?いや、大元の話しはしたぞ。それとついでにせっかく国に里帰りしたんだから飲もうって言ってたぞ。出来たら弟子も一緒で」
ええ....マジで師匠をからかう為だけに探してたんだ....ある意味凄いな、ナシラさん.....絶体見習ったら駄目な大人だけど。
「.....飲みに行くのは構わないが....流石に酒場にリンを連れていくのはなぁ....」
「あ、なら私先に屋敷に帰ってますよ。此処から近いですしね」
師匠が困った様子で私を見るのでそう提案したが速攻で不許可になった。
「駄目だ。1人で帰らすぐらいなら屋敷に一緒に帰ってから出直す」
「.....え~……本当に大丈夫ですよ?」
「そんな事をしたら俺が父さんらに叱られるだろう。流石の俺でもこの年齢で親に叱られたくないぞ.....」
「あー確かにおじさん達なら言いそうだな。じゃあ後で来いよ。いつもの店にいるから!」
それだけ言うとナシラさんはさっさと走って行ってしまった。自分の言いたい事だけをさっさと言って消えてしまうとは。
「.....何だか凄い人ですね。ナシラさん」
「あいつは昔からあんなんだ。何を言っても聞かないマイペースな奴だ。だけど困ってる奴が居たら絶体に見捨てない奴でな....だから仲間内からも好かれているんだ」
「へぇ~………」
「.....そう言う訳で済まないな、リン」
「構いませんよ。まだまだ明日からも時間はあるんですから」
師匠も久し振りのエルフの国だから師匠に会いたいと思う人達も沢山居るだろう。
.....最悪私1人で散策に出ても構わないんだしね
それから街の散策は一旦中止になり屋敷に戻った後、師匠は仲間達に会いに再度出掛けて行ったのだった。
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