第165話 カノープスさんからの手紙

エルフにも色んな人が居るんだなと実感した翌日、師匠宛にカノープスさんから連絡が来た。


曰く、王都から派遣されてミルトンへと私を探しに来た騎士達は私が既にミルトンを後にした事を知ると近隣の街に手分けをして探したが結局私を見つける事は出来なくて一旦王都へ戻る事になった事、私と師匠がエルフの国へ向かった事は知られていない事等々、色んな情報を教えてくれた。


「.....今更こんな事言うのもなんですけど....こんの情報漏洩してカノープスさんは大丈夫なんですか?」

「....本当に今更だな。だが、まぁカノープスなら大丈夫だろう。彼奴に隠密みたいな事をやらせたらパーフェクトに仕事をやりきるからな。だから出来れば彼奴を敵には回したくないな」


しかも師匠が手にしたカノープスさんからの手紙は読み終わった瞬間に燃えて消えていくと言う証拠隠滅も完璧な仕様だ。


「一切自分に不利になる証拠は残さないからなぁ……まぁ仮にカノープスがリンに協力してたとバレてもあの国の貴族達は何も出来ないからな」


師匠が苦笑しながら私に視線を向ける。


「賢者と言うのは肩書きだけじゃない。彼奴1人で一国を潰す事なんて容易く出来るだけの能力を持っているんだ。そんな奴を敵に回せばどうなるかぐらい馬鹿でも理解出来るだろう?流石に理解出来ない馬鹿が国を動かす立場に居る王公貴族達に居るとは思いたくないし、居たらこの国は既に終わってるよ」

「た、確かに.....」


師匠も意外と口が悪いなぁ。思わず苦笑いしながら私は師匠を見上げる。


まぁ確かに師匠の言っている事は何一つ間違っては居ない。賢者の名を持つカノープスさんがこの国を出ていけば、あっと言う間にこの国は他国からの干渉を受けるだろう事は容易に理解出来る。賢者カノープスを失ってまで私を探す意味など全くないだろうし、国にとって悪手にしかならない。少し考えれば誰にでもわかる事を国が理解していない訳がないのだ。


「....なら最初から干渉してこなければ良いのに....」


思わずそう思ってしまうのは折角手に入れたマイホームから早々に出て行かなければならなくなった理不尽さによる物だから仕方がないと思って欲しい。


「だがこれから思ったよりも早くエルフの国からは出ても大丈夫そうだな....ならもう少し早目に修行の行程を組み替えるか....」

「し、師匠....別にそこまで早くエルフの国を出る必要はないんじゃ....?」


ヤバイ.....このままでは地獄の修行コースになってしまう可能性が高い..... それはちょっと嫌かも....


「そうか?でもお前も早くミルトンの自宅に帰りたいだろう?買ってからまだそんなに住んでないんだし」

「それはそうなんですけど.....せっかくエルフの国に来れた訳だし、ゆっくりじっくり修行をして力を付けるのも大事な事かと!急いでも仕方がないと言うか.....」

「.....ふむ。確かにそれは一理あるか....なら最初に考えていたペースで構わないな?」

「はい!それでお願いします」


それでも極々普通の冒険者がやる修行とエルフの修行の差は大きい。それを私にこなせるかどうかはやってみないとわからない。


「了解。なら、本格的な修行は来週から始めよう。それまではエルフの街を知る事からだな」

「エルフの街を知る....ですか?」

「そうだ。エルフの街の地図を頭に叩き込むんだ。どこに何があって、道はどうなっているのかとか。街がどういう形をしているのか知っておけば何か起きた時、動く際に役に立つ」


....うん、確かに地の利を知っていると有利になる可能性が高い....


「お前はエルフの国に来た事自体が初めてだから特に覚えておいた方がいい。そんな訳で明日から母さん達がお前を連れて買い物に行きたいそうだから付き合ってやってくれな」

「....え?」

「俺はその間にお前の修行内容を考えておくから」

「ち....ちょっ、師匠!?」


それは単に自分が買い物に付き合わされるのが嫌だから私に押し付けただけでは!?



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