第164話 模擬戦の結果

翌日、師匠の指示通りに模擬戦が修行の一環として組み込まれた。


模擬戦のルールとしては武器の使用、魔法の使用有の相手に致命傷さえ与えなければ何でも有なルールで、エルフの模擬戦としては普通のルールななんだとか。


....いや、エルフ普通に怖いわ!何、そのルール!!


で、簡単に言うと私は負けた。


え?説明が簡単すぎる?


まずアルドラさんと対戦して勝ったらウェズンさんと対戦と言う事で決まった。そしてアルドラさんとの対戦では中盤までは良いところまで接戦してたと自分では思ってるんだけど、経験の無さが後半戦で顕著に出た。


私は専ら魔法で使う。風魔法で私の周囲に結界を張り相手からの攻撃をかわしつつ同じく風魔法と水魔法で攻撃する。けれどアルドラさんは物の見事にそれらをかわしながら攻撃を繰り出す。それは弓だったり魔法だったり体術だったりと多彩だった。これが熟練の技と言うものか.....。


結果、圧倒的な攻撃力で負けた。うん、魔力量や使える魔法がどれだけ強大でもそれを使いこなす本人がポンコツと宝の持ち腐れなんだって改めて実感したわ.....。


模擬戦で負った傷はポーションを飲んで治した。そんな私達を見て師匠がアルドラさんに話し掛けた。


「それで、どうだった?アルドラ」

「....まぁ、兄さんが弟子にした理由は何となく私にも理解出来たわ」


聞かれるだろうと思っていたのだろう。アルドラさんが言いにくそうに言葉を紡ぐ。しかも何となく私を師匠の弟子だと認めたような発言だ。


うーん.....この模擬戦をやってみて何かがわかったって事だよね。まぁ私としてはアルドラさんに認めて貰おうと認めて貰えなくとも師匠の弟子である事には変わらないし、一緒の家に私が住むのが嫌なら街に家を借りれば済む話なんだし全然問題はないんだけどね。私だって自分の事を嫌ってる人と一緒の家に住むのは勘弁して欲しいし....あの屋敷がアルドラさんの実家である以上、私が出て行くのは当然の事だろう。


「師匠、私は別に街に家を借りて一人暮らししますよ?」

「え?は?」


キョトンとした顔をしたのはアルドラさんだった。


「いえ、アルドラさんも私とひとつ屋根の下で住むのは嫌でしょうし....ここは居候の私が出て行くのは当然かと?」

「ん~……まぁ確かに普通はそうなんだがな」

「ちょっ、待ちなさいよっ!!私は一緒に住むのが嫌だなんて一言も言ってないでしょ!?」


アルドラさんが慌てて会話に入ってくる。不本意だと言わんばかりのその表情に私は不思議そうにアルドラさんを見た。


「え?でも」

「別に私は一緒に住むのが嫌だなんて今まで一言も言ってないわよ!いつ私が言った!?」

「....口に出しては言ってないんじゃないかな?」


ウェズンさんがボソッと言うとまるで勝ち誇ったかのようにアルドラさんがそうでしょ!と言いきった。


「まぁ、私から言わせたらまだまだだけど、兄さんが弟子にしたぐらいだから可能性を見出だしたんでしょうね。兄さんの元で修行をすれば私ぐらいにはなれるわよ!....その、私も暇な時は相手をしてやっても良いわよ!」


.....これはあれかな?所謂ツンデレと言うやつでは?


師匠もウェズンさんも肩を震わせて笑いを堪えているのが視界に入る。そうかぁ~....師匠の妹さんはこういう子なのかぁ……


エルフは奥が深いなぁと思う1日だった。








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