第163話 師匠の弟妹

エルフの国の冒険者ギルドのギルドマスターのファイさんを師匠から紹介して貰い挨拶を含めた雑談を終わらせた後は、エルフの国に来るまでに狩った魔獣の買い取りをお願いする。エルフの国に入る前に最後に寄ったバレッタの街である程度の魔獣は買い取って貰ったが無限収納にはまだまだ狩った魔獣は残っている。いくら無限収納に入れている魔獣が腐らないとは言っても入れっぱなしは気分的に嫌だった。


....どうせなら素材やお肉に解体して貰ってた方がいざという時に使い勝手が良いしね....


流石に大型の魔獣を解体するスキルは私にはないし、あっても出来れば遠慮したいから解体して貰える時にしておきたいと言う気持ちもあるのが正直なところかな。




買い取り作業は解体する魔獣が多いから明日の引き渡しになった。まぁ私と師匠が狩った魔獣で山盛りになってたから仕方ないよね。



そして帰りに市場を散策してから屋敷に戻るとその人達が居た。



「兄上!!」

「兄さん!!」


執事に案内をされサロンへと向かい扉を開けた途端二つの声が部屋に響いた。男性と女性の声だ。声のした方を見れば、確かに金髪で短髪と長髪の男女がソファから立ち上がり此方を見ていた。


兄上と兄さん.....と、言う事はこの人達が師匠の弟と妹さんって事かな?


「ウェズン、アルドラ帰ってたのか」

「「はいっ!!」」


2人仲良く笑顔で元気に返事をするのを見てると本当に師匠の事が好きなんだなぁと納得する。ふと、妹さんの方かな?私の方をジッと見る厳しい視線を感じる。


....うん、これはあれかな?大好きなお兄さんに近寄る知らない人間に対する牽制的な?


「ああ、お前らは会うのは初めてだな。この子は俺の弟子になったリンだ。まだ小さいが中々優秀な子だ。父さん達も気に入ったみたいだから、出来ればお前達にも仲良くして欲しい。暫く一緒に住む事になるんだしな。リン、俺の弟のウェズンと妹のアルドラだ」

「リンです。宜しくお願いします」


師匠が2人に私を、私に2人を紹介してくれたので取り敢えず波風を立てないよう下手に出ておくに限る。


「ウェズンだ。宜しく」

「アルドラよ.....それにしても兄さんが弟子を取るとは思ってなかったわ。しかもこんな小さな人の子だなんて」


....妹ちゃんはあからさまにディスって来るなぁ....それだけ素直な性格してるんだろうけど....


私は内心で苦笑をこぼす。きっと大好きなお兄さんを取られたみたいな感じなんだろうなぁ。


「....確かにリンは人の子だしまだまだ小さいがその才能はエルフにも劣らない。なんせ、賢者であるカノープスが弟子にしたがってるぐらいの人材だからな!」


まるで鼻が高いとばかりに師匠が自慢気に言うのに私は思わず苦笑を浮かべる。


「カノープスさんが!?それは凄いな兄上!よくそんな人材を見つけたもんだ」


素直に感心してくれる弟のウェズンさんはきっと性格が真っ直ぐなんだろうな。後は師匠のやる事に間違いはないとでも思ってそうだけど。


「カノープスさんが?....本当に?そんな風には見えないんだけど.....」


妹さんのアルドラさんはマジマジとさっきよりは幾分かその視線を和らげつつも信じられないような表情を隠す事なく私を見ている。


....うん、妹さんの方は用心深い性格かな?弟妹で外交に行ってるのはその辺のバランスも考えてなのかもしれない....


「....まぁ、信じられないなら修行でも見学したらわかる。どうせお前達も暫くは休みなんだろう?修行の一環でリンの相手をして貰えれば此方も助かるしな」

「....え!?対人戦!?」


まさかそんな物までするとは思ってなかった私は慌てて師匠を仰ぎ見る。


「冒険者ランクを上げるには毎回護衛任務が必須になってくる。今は人の国に行かないが将来的にランクアップ試験の為に行って護衛任務をやる必要が出てくるからな....護衛任務で一番重要なのは盗賊団が出た時の対人戦になる。殺すのを躊躇しては依頼人を守りきれないからな....その為にも対人戦の訓練は必須になる」

「......」


....確かに冒険者ランクを上げる事が私の身を守る為にも必須になる以上、避けては通れない道だよね....


「.....はい。そうですね!」


それがこの世界で生きていく為に必要な事ならやるしか私には選択肢がないのだから仕方ない。


「わかったわ兄さん、でもやるからには本気を出すけど良いの?」

「勿論。そうじゃないと意味がないからな」


会話の内容からどうやら弟のウェズンさんよりも、妹のアルドラさんの方が戦闘力は強いのかもしれない。まさかの師匠からの提案で、翌日私はアルドラさんとウェズンさんと模擬戦をする羽目になったのだ。





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